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・非定型うつ病
・進化医学
・社会脳
・ただ乗り遺伝子(フリーライダー)
・疾病利得
・労働法制
・リワーク
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皆さんは、「新型うつ病」という言葉を聞いたことがありますか? うつ病はよく知られていますが、ここ10年くらいで、「新型うつ病」が職場を騒がせています。例えば、「新型うつ病」の彼らは休職中に海外旅行に行こうとします。従来のうつ病とは根本的に何が違うのでしょうか? なぜ医師は休職のための診断書を出すのでしょうか? 果たしてこれは病気なのでしょうか? その正体は? どうすれば良いのでしょうか?
前回(9月号)の記事で、進化医学的な視点で従来型のうつ病の理解を深めました。これを踏まえて、今回、「新型うつ病」について同じように進化医学的な視点で、その理解を深め、アプローチのポイントを探っていきましょう。
今回、取り上げるのは、2012年に放映されたNHKの実録ドラマ「こうして私は追いつめられた」です。15分の短編映像で分かりやすく見せるための割愛や演出はありますが、「新型うつ病」の心理を生々しく描いており、理解の助けになります。なお、このドラマは、「新型うつ病」の検索ワードによるインターネットの動画の視聴が可能です。
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主人公の今井は27歳男性で、IT企業の社員です。若手として張り切っていましたが、上司の前田から、仕事のミスについて「何やってんだよ」「そろそろこれくらいのこと、できるようになってくれよ」とたびたび叱責されるようになります。やがて、今井は、買ってきた食べ物をむさぼり食べながら「眠れない」「落ち着かない」などの症状を自覚するようになります。そして、受診した医療機関で、医師にうつ病と診断され、「今後3か月の休養を必要とする」との診断書が渡されます。これだけで見ると、本人が苦しんでいるという点で、診察時には基本的に従来型のうつ病の症状と量的に同じに見えてしまいます。
しかし、その後に質的な違いがあることに気付きます。それは、休職してから今井が「よーし、気分転換にグアム行っちゃいますか?」とはしゃいでいるように、休職中に海外旅行に行ってしまうことです。つまり、楽しい出来事には元気になれています(気分の反応性)。これは、前回の記事で紹介しました従来型のうつ病(大うつ病性障害)の診断基準の「ほとんど毎日(ほとんど1日中)」という病状の一貫性を満たさなくなっています。
よって、厳密には、今井の病態は非定型うつ病(非定型の特徴を伴ううつ病)が当てはまります(表1)。この診断名が、世の中で「新型うつ病」と呼ばれているようです。なお、「新型うつ病」はあくまでマスコミが作り出した呼び名であり、正式な病名ではないです。詳細は、うつ病学会のホームページのQ&AのQ4.をご参照ください。
ちなみに、その他の元気になれる楽しい出来事(気分の反応性)としてよく耳にするのは、同窓会の幹事、転職活動、引っ越し、熱心な趣味や習い事、マラソン完走などです。
表1 非定型の特徴を伴ううつ病(非定型うつ病)の診断基準(DSM-5)
感情 |
意欲 |
思考 |
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項目 |
◎気分の反応性 |
①過食 ②過眠 ③体の重さ(鉛様の麻痺) |
④拒絶に敏感 |
備考 |
・◎は必須 ・①から④の4項目中2項目以上 ・もともとうつ病(従来型)などの診断基準を満たしている(いた) |
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今井の言動に注目しながら、従来型のうつ病と比べた「新型うつ病」の心理を大きく3つあげてみましょう。
①人(周り)のせいにしやすい―他罰
今井は、「おれこんなにがんばってるのに」「あの言い方はひどい」「前田のやつ、バカにしやがって」「(今、自分が苦しんでいるのは)全部、あいつのせいだ」と心の中でつぶやいています。そして、「おれをうつ病に追い込んだ鬼畜上司・M田!」とブログで悪口を書き込み始めます。
1つ目の心理は、困難(ストレス)を人(周り)のせいにしやすいことです(他責、他罰)。周りを責めることで自分を守る心理です。そのため、責任感が乏しく、迷惑を被っていると感じやすくなり(被害的)、その反撃として攻撃的になります。対照的に、従来型のうつ病の心理は、困難(ストレス)を自分のせいにしやすいことです(自責、自罰)。自分を責めることで周りを守る心理です。そのため、責任感が強くなりすぎて、周りに迷惑をかけていると感じやすくなり(罪責感、罪業妄想)、いたたまれなくなり自殺のリスクを高めます。
また、「新型うつ病」では、うつ病と診断された今井が「ですよね~」と喜んで症状をさらに饒舌に語っているように、うつ病と診断されることを積極的に受け入れ、休みたがります。今井が「ほっとした」「おれは悪くない」と言っているように、うつ病と診断してもらえれば、うまく行かないことは病気のせいにできるからです。悪いのは、病気であり、自分ではない。自分は被害者であり犠牲者であるという発想になります。だからこそ、「うつ病になるくらい苦しんだんだから、もう休んでいいんだ」と言い、休職中に悪びれることもなく海外旅行に行くなどSNSで充実したプライベートを発信します。対照的に、従来型のうつ病は、うつ病と診断されることに抵抗的で(否認)、休みたがらないです。それは、うつ病になってしまったのは自分のせいだと思っているからです。
②周りが自分に合わないと不安がる(「傷付き不安」)―拒絶に敏感
今井は、「何か悩みがあるなら聞かせてください。連絡待ってます」との前田からのメールが来た時、「全然分かってねえのか、前田。あんなにおれをいじめといて」と腹を立てます。そして、ブログの「M田のここが許せないベスト10」への好意的な反響メールを読んで、「みんなおれの味方なんだ」「やっぱりおれは間違ってない」と安心します。今井は、叱責など自分が受け入れてもらえない状況に敏感になり落ち着かなくなっていた一方、賛同など自分を受け入れてもらえる状況で落ち着きを取り戻しています。
2つ目の心理は、周りが自分の期待に合わない、つまり傷付くことへの不安が強いこと、「傷付き不安」です(拒絶に敏感)。これは、非定型うつ病の診断基準の1つでもあります(表1)。この不安からとても打たれ弱くなります(ストレス耐性の脆弱性)。困難に向き合うこと(直面化)が苦しくなります。逆に傷付かない状況では元気になります。だからこそ、職場ではうつでも、自宅では元気で海外旅行に行こうと思えるのです。
さらに、その不安から受け身や逃げ込みの心理が働きます(逃避、回避)。例えば、今井は、自宅に訪ねてきた前田と鉢合わせそうになった時、こそこそしています。前田に不満があるわりに向き合おうとはしていません。最後に復職した時も、「復職したおれをどんなふうに迎えてくれるのだろうか?」と思い、前田に自分からは歩み寄らず、前田が来るのを待っています。ちなみに、この逃げ込み(逃避、回避)の心理が過剰に働いていれば、また傷付くおそれのある職場への復帰には逃げ腰になり、病態が慢性化します。
対照的に、従来型のうつ病は、逆に自分が周りの期待に合わない、つまり「傷付ける(=迷惑をかける)」ことへの不安が強いため、我慢しようとして打たれ強くなります。そして、抱え込みの心理が働き(執着)、休職しても早期の復職を望みます。つまり、「新型うつ病」は打たれ弱いために我慢ができなくて「うつ病」になるのに対して、従来型のうつ病は打たれ強いために我慢しすぎてうつ病になるということです。
③周りに目が向きにくい―共感性欠如
今井は、実家で両親から「食欲もあるし顔色も良いんじゃない?」「お前ほんとに病気なのか?」といぶかしく思われます。すると、「病気だっつってんだろ?」と言い返します。周りの意見を気にしない様子がうかがえます。また、その後、今井のブログは世の中で批判を浴びて炎上します。それを知った前田は「これ以上会社を誹謗中傷すると解雇もあるから」との留守録のメッセージを今井の電話に残します。それを聞いた今井は「なんでおれがこんな目に遭うんだ!?」とパニックになります。今井は、周りからどう思われているのかをまだピンときていないのです。
3つ目の心理は、自分に目が向きすぎて周りに目が向きにくいことです。周りへのアンテナ(他者配慮)をあまり張っていないのです。これは、「周りよりもまず自分が大事」との思いが強いため、結果的に、周りの人たちへの気遣いが乏しくなります(共感性欠如)。その気遣いとは、例えば、休職中に海外旅行に行ったことを同僚が知ったらどう思うか、悪口を書き込んだブログを上司が知ったらどう思うかということです。
また、この心理から「周りが自分に何をしてくれるのか」という発想をしやすくなり、苦手な上司や同僚がいなくなるなどの環境の調整がなされない限り、病状は良くはなりにくくなります。つまり、「なりたい自分」になれないなら、あきらめるという現実には耐えられないので保留という暫定措置をとるため、できる限り休職し続けようとする場合があるわけです。
対照的に、従来型のうつ病は、逆に周りに目が向きすぎて、自分に目が向きにくいです。「自分よりも周りが大事」「自分のことは二の次」との思いが強いため、周りに気を使いすぎて(過剰な他者配慮)、「自分が周りに何をするべきなのか」「なるべき自分」という発想をしやすくなります。休職中は診察での態度もとても協力的です。ただ、焦りから早く復職しようとする場合はよくあります。
表2 「新型うつ病」と従来型のうつ病の違い
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「新型うつ病」 (=非定型うつ病など) |
従来型のうつ病 |
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年齢 |
20、30歳代(青年) |
40歳代以上(中高年) |
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性格 (パーソナリティ) |
自分本位(自己愛) |
真面目で几帳面(執着器質) |
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例 |
責任感 |
乏しい ・人(周り)のせいにしやすい(他罰) ・迷惑を被っていると感じやすい(被害的) |
強すぎる ・自分のせいにしやすい(自責) ・迷惑をかけていると感じやすい(罪責的) |
ストレス耐性 |
弱い ・周りが自分に合わないと不安がる(拒絶に敏感) ・逃げ込み(逃避、回避) |
強すぎる ・自分が周りに合わないと不安がる ・抱え込み(過剰適応) |
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他者配慮 |
乏しい ・周りに目が向きにくい(共感性欠如) ・なりたい自分を目指す |
多すぎる ・周りに目が向きすぎる(過剰な他者配慮) ・なるべき自分を目指す |
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治療反応性 |
良好ではない |
比較的に良好 |
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例 |
診断や休職 |
積極的 |
当初は抵抗的(否認) その後に協力的 |
薬物療法 |
効果は限定的 |
多くは効果あり |
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認知行動療法 |
集団で効果あり |
効果あり |
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予後 |
多くは慢性化 |
多くは軽快 |
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これまで、「新型うつ病」には、人(周り)のせいにしやすい(他罰)、周りが自分に合わなと不安がる(拒絶に敏感)、周りに目が向きにくい(共感性欠如)という大きく3つの心理があることが分かりました。それでは、なぜこのような心理になるのでしょうか? なぜ「新型うつ病」になるのでしょうか? ここから、その原因を、社員(個人)と会社(社会)という2つの側面に分けて探ってみましょう。
①社員(個人)の要因―自己本位な性格(自己愛パーソナリティ)
後半にブログのオフ会で登場する臨床心理士ののぞみんが、「現代型うつ(新型うつ病)を発症する大きな原因は、患者さんの精神的な幼さです」と指摘します。言い換えれば、3つの心理の根っこにあるのは、自己本位な性格(自己愛性パーソナリティ)です。これは、真面目で几帳面な従来型のうつ病の性格(執着器質)とは対照的です。つまり、「新型うつ病」の患者は「オンリー・ワン(唯一の存在)」でありたいという心理が根っこにあります。従来型のうつ病の患者がありたい心理である「ワン・オブ・ゼム(組織の歯車)」では納得しないのです。
人は成長するにつれて、自分が大事という自己本位の心理(自己愛性)から周りが大事という他者配慮の心理(社会性)にシフトしていきます。例えば、「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン(1人はみんなのために、みんなは1人のために)」という言い回しがあります。本来は、相手や状況(環境)に応じて両者のバランスが取れていることが理想的ですが、「新型うつ病」は「ワン」(自己本位)の心理に偏りすぎてしまい、従来型のうつ病は「オール」(他者配慮)の心理に偏りすぎています。どちらにしても、そのバランスが失われています。両者は、うつ病になるという結果は同じなのですが、性格(パーソナリティ)としての原因は真反対であることが分かります。
また、文化によってもこの自己本位と他者配慮の心理のバランスには偏りがあります。日本はもともと他者配慮の強い集団主義の文化であるのに対して、アメリカなどの欧米は自己本位の強い個人主義です。つまり、今、日本では社員(個人)が、集団主義から個人主義化してきているということです。
②会社(社会)の要因―会社本位な社風
前田は一緒に残業をしている他の部下たちに「昔はおれも上司に怒られてへこんで。でもその後、居酒屋に飲みに連れてってもらって。そこで教わったんだよ仕事の意味を。いっしょに客の喜ぶ顔見ようじゃないかって肩叩かれて。それでまた元気になって何とかやって行けたんだ」とこぼします。一方、オフ会でのぞみんは「今の不況では、昔のように十分な社員教育を行えないという悩みもあるんです」「そして会社にも今井さん育てる体制や今井さんへの理解が欠けていた」「そこに断絶が生まれ、お互いが苦しむことになったんです」と続けます。
会社(社会)の要因として、会社本位な社風なってしまったことです。経済の低迷や国際競争の激化により、社員を育て成長を見守る余裕が経費的にも時間的にも職場になくなってきました。即戦力や成果を求めすぎて、社員(個人)よりも会社(社会)の利益に重きを置かざるを得なくなってしまったのです。つまり、社員(個人)だけでなく会社(社会)も、集団主義から個人主義化してきているということです。
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「新型うつ病」になる原因は分かってきましたが、なぜこれほどまでに「新型うつ病」は増えているのでしょうか? 海外の状況と比べつつ、日本ならではの状況を社員(個人)と会社(社会)という2つの側面に分けてまた探ってみましょう。
①社員(個人)の要因―受け身で依存的な育ち方
のぞみんは、「核家族やゆとり教育の世代に育って、大事に育てられてきて、人に怒られたり、ぶつかりあったりする経験が少ないから」と言います。ここから分かることは、葛藤(ストレス)の少ない育て方(生育環境)により、自己本位な育ち方に変わってきたのに、受け身で依存的な育ち方は相変わらず残っている、むしろ増えていることです。この世代は、ちょうど1980年代以降の生まれで、現在の20、30歳代ということになります。逆に、1970年代以前の生まれである現在の40歳代以降に「新型うつ病」は少なく、従来型のうつ病が多いです。
家庭では、核家族化により祖父母がもともと家におらず、父親は単身赴任や出張で不在がちで、さらに一人っ子で兄弟がいなければ、母親との濃密な関係が増えて、過干渉で過保護に育てられます。母親が先回りするので、小さな失敗や挫折という貴重な経験をしにくくなります。学校では、「みんな仲良し」「ゆとり」という教育方針のもと、競い合いやぶつかり合いが好ましくないと教えられます。よって、友達や恋人との関係も、傷付け合わないために細心の注意を払った表面的な「やさしい」付き合いに留まります。例えば、ラインやメールの返事をいかに早くするかばかりを気にするようになります。言いたいこと言い合ってぶつかり合うような深い友情や恋愛感情の関係にはなりにくくなっているのです。
本来、社会では人の価値観はそれぞれ違い、仕事においても恋愛においてもぶつかることは当たり前です。しかし、成人するまでに人間関係でぶつかり合う経験が少ないと、その葛藤を適切に対処する能力が磨かれていかないのです。結果的に、その葛藤(ストレス)を避けるために、逃げ込みの心理が働き、休職という手段を用いて、会社(社会)に依存してしまうのです。
それでは、世界、特にアメリカではどうでしょうか? アメリカでは、会社でうまく行かないことがあれば、自分の能力が発揮できないと思い、あっさり辞めて他の会社に転職します。転職率が高いのもうなずけます。一貫したドライな個人主義です。一方、日本では、会社でうまく行かないことがあっても、その会社にしがみつきます。
けっきょく集団的な帰属意識が根強いため、社員(個人)は、個人主義的な自己本位に変わってきたのに、集団主義的な依存は変わらないままなのです。これが、さきほどのぞみんが指摘した「幼さ」です。一貫しない「ウェット」な個人主義なのです。
ちなみに、この依存的な育ち方として、「新型うつ病」と時期や特徴を同じくして注目されている社会現象が「ひきこもり」や「草食系」です。なかなか働こうとしない心理は、人間関係においてもなかなか働きかけようとしない心理につながっていきます。
②会社(社会)の要因―保護的な労働法制
今井の会社の社長は、前田に「うつ病とか言って単なる『怠け病』じゃないのか。そんなの気合いで何とでもなるんだよ。甘えだ甘え」と吐き捨てます。かつては「気合い」という言葉で、連帯意識を高め、それでも休職してしまう場合、その数少ない社員を手厚く抱え込んでいた時代がありました。当時からの就業規則では「新型うつ病」による休職を想定していません。会社の要因として、現在、「新型うつ病」によって休職する社員が急増しているにもかかわらず、その保護的な労働法制が残っていることです。
それでは、世界、特にアメリカではどうでしょうか? アメリカでは、就職は基本的に社員(個人)と会社の契約です。よって、社員(個人)の能力が発揮されていなければ、契約への債務不履行となり、解雇の理由になります。雇用の流動性が高いのもうなずけます。会社も一貫したドライな個人主義です。一方、日本では、うまく行かない社員がいても、保護的な労働法制によって、もともとの給料の7、8割の傷病手当が1年半から3年くらい支給され、手厚く抱え込まれてしまうのです。特に、手厚くされる公務員や大企業の社員は、復職を先延ばしする傾向があります。
けっきょく、社会の集団的な連帯意識が根強いため、会社は、利益追求する個人主義的な会社本位に変わってきたのに、手厚い集団主義的な労働法制は変わらないままなのです。これは、「新型うつ病」に戸惑い右往左往する社会の「幼さ」と言えます。日本の社会もまた一貫しない「ウェット」な個人主義なのです。
表3 「新型うつ病」の増加の原因、結果、アプローチ
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職員(個人) |
職場(社会) |
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原因 |
変化 |
自己本位(個人主義的) |
会社本位(個人主義的) |
無変化 |
依存的な育ち方(集団主義的) |
休職中の保護的な労働法制(集団主義的) |
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結果 |
逃げ込み |
抱え込み |
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アプローチ |
自己本位の是正 休職中の依存の脱却 |
会社本位の是正 休職中の過保護の脱却 |
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これまで、「なぜ『新型うつ病』になるのか?」という疑問やその増加の原因を解き明かしてきました。それは、「かんばりすぎ脳」「上下関係脳」「つながり脳」「先読み脳」でした。それでは、そもそもなぜ「新型うつ病」は「ある」のでしょうか? その起源について、進化医学的な視点で、無意識的な心理と意識的な心理に2つに分けて探っていきましょう。
①「助けて(休ませて)」という無意識的な心理―「助けて脳」
前回(9月号)の記事では、従来型のうつ病の起源として4つの心理の進化をご紹介しました。その中で、3番目の「つながり脳」(社会脳)に着目してみましょう。社会脳とは、助け合い(協力)を好む心理でもあります(利他性)。例えば、困っている人がいたら、私たちは自然と助けたくなります。これは、そうなるように私たちの心が進化してきたと考えられています。この心理が働く遺伝子をより持っている種の共同体(社会)が、生存率や生殖率を高め、子孫をより多く残してきたからです(包括適応度)。
この社会脳の中でさらに新しく進化した心理が考えられています。それは、周りの「助けたい」という心理を逆手に取った「助けて」という無意識的な心理です。例えば、身の危険を感じるなどの自分では対処できない困難(ストレス)を感じた時、腰や膝が抜けたり(転換性障害)、気を失い記憶がなくなること(解離性障害)があります。この反応は、単独で行動している場合は生存に不利です。しかし、集団で行動している場合、周りに助けてもらえる可能性が高く、生存に有利であることから進化したと考えられています。ここで、私たちは、「助けて」と言葉で伝えれば済むのに、なぜわざわざ体の反応で示さなくてはならないのかと思うでしょう。その理由は、言葉を使うようになったのは喉の構造が進化したごく最近の20万年前だからです。社会脳は300万年前から進化し始めており、その間の280万年間に、私たちの祖先は、言葉ではなく、主に表情、身振り手振り、態度でコミュニケーションをとっていました(サイン言語)。だからこそ、現代でも、言語的コミュニケーションよりも非言語的コミュニケーションの影響力の方が圧倒的に大きいのです(メラビアンの法則)。
つまり、「新型うつ病」の1つ目の起源は、困難(ストレス)を感じた時、うつという反応(抑うつ反応)を周りに見せることで(信号)、周りから援助(互恵的利他行動)を引き出す心理であると言えます(社会的ナビゲーション仮説)。腰抜けや膝抜け、記憶喪失がわざとではないのと同じように、抑うつ反応は、本人が意図せず意識せずに起こります。
現代の日本では、社員(個人)のストレス耐性が弱まってきているにもかかわらず、会社(社会)のストレス負荷は増してきています。この状況で、この抑うつ反応が、先史時代の瀬戸際の捨て身の心理戦略から、高度に社会化した現代を生き抜く新たな心理戦略として引き継がれ広がってきているように思われます。そう考えれば、職場ではうつでも自宅では元気であったり、休職中に元気で復職してまたうつになるという現象も、周りの支援を引き出すための一時的なもので一貫性がない点から納得がいきます。また、うつ病の治療としての薬物療法や休養が、従来型のうつ病に効果があるのに対して、「新型うつ病」にはほとんど効果がない現状も、会社の苦手な上司や同僚というストレス因子が変わらない点から、納得がいきます。
②「どうせならもっと助けて(休ませて)」という意識的な心理―「怠け脳」
今井の会社の社長は「怠け」と言い放っています。休職する前、今井は本人なりに一生懸命で、「怠け」の意図や意識ははっきりとは見受けられません。ところが、休職した後、海外旅行に行けるくらい元気になっているにもかかわらず、なかなか復職しようとしない点では、「怠け」の意図や意識が見受けられます。
「怠け」もまた、社会脳の中でさらに新しく進化し心理戦略と考えられます。それは、助け合い(協力)の心理を出し抜いた「働かなくても良いなら働かない」、今井に当てはめれば「どうせならもっと助けて(休ませて)」という意識的な心理です。先史時代、私たちの祖先は、助け合い(協力)によって得た共同体(集団)の食糧(資源)を平等に分配してきました。ところが、その平等意識に乗じることで、その資源を楽して手に入れようとする心理もまた進化したのです。これを駆り立てるのは、「ただ乗り遺伝子(フリーライダー)」と呼ばれます。みんながお金を払って乗り物に乗っているのに自分だけただで乗ろうとする、言い換えれば、みんなが働いているのに自分だけは休もうとすることです。実際に、社会主義国家であったかつてのソビエト連邦や、国民を厚遇した政策のギリシアでは、働かない人が増えすぎて、国の運営が破綻しました。
つまり、「新型うつ病」の2つ目の起源は、うつによって周りから援助が得られた時に、うつが治らないことを主張することで、その援助の継続を引き出す心理であると言えます(疾病利得)。これは、休めることに味を占めて、自分の権利として就業規則による休職可能な期間を目一杯に休もうとする点で、損得勘定が働いており、意図して意識して起こっていると言えます。「新型うつ病」は、経過の途中で、無意識的な心理から意識的な心理にシフトしていると言えます。
「『新型うつ病』は怠けか病気か?」という議論の難しい点は、この無意識と意識の心理の偏りが、患者によっても、また病期によっても違うため、一概に言えないことです。さらに、本人は「おれは悪くない」という心理が強いため、「怠け」の要素を認めたがらないです。ここで言えることは、「新型うつ病」に「怠け」の要素はあると私たちは理解しつつも、臨床の場面で「怠け」という価値判断を含む言葉を使うことは治療的ではないということです。
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今井がうつ病と診断されて「ですよね~」と喜んでいる様子に、医師は「はい?」とけげんな表情をしています。実際に、ほとんどの医師は、初診の段階で「新型うつ病」を疑ってはいるのですが、なぜ休職のための診断書を作成してしまうのでしょうか? その理由は、大きく3つあります。
①訴えを重くとる―見逃しはだめ
1つ目の理由は、医師は基本的に症状を重くとることです。今井は「おれこんなにがんばってるのに」と思っており、それを医師は聞いています。患者が本人なりにはがんばっている点で(過剰適応)、「新型うつ病」に従来型のうつ病の要素も混じっていることが実際の臨床でよくあります。つまり、少なくとも初診時の診察室の中だけでは一概に「新型」か従来型かとはっきり言い切れないということです。このような病態に対して、「新型うつ病」と決め付けて、訴えを過小評価して休養を指示せずに後に従来型のうつ病の要素で症状が悪化して自殺されるなどの重大な事態を招くと問題があります。逆に、「新型うつ病」と決め付けず、むしろ訴えを過大評価して安全策として休養を指示して、実は後から休養するほどではなかったと分かっても問題はないです。つまり、医療において重要視されるのは、「空振りはありだけど見逃しはだめ」ということです。
②訴えを受け止める―信頼関係が大事
2つ目の理由は、医師は基本的に訴えを受け止めることです(受容)。医師は今井の饒舌な訴えに耳を傾けています。医師は、この受容によって信頼関係(ラポール)を築くことを優先します。これは医師の倫理観でもあります。逆に言えば、上から目線で疑いの目を向けていたら(パターナリズム)、治療が始まらないということです。たとえ「新型うつ病」を見抜いていたとしても、少なくとも訴えを受け止めているふりをして、暴くことはためらいます。
③訴えを覆せない―客観性がない
3つ目の理由は、医師は基本的に訴えを覆せないことです。今井の饒舌な様子(表出)から症状が誇張されていることが推測されます。実際の臨床では、「『うつ』でもう職場に行けない」と言い張ったり、「このままだとどうにかなってしまう」とほのめかす患者も多いです。うつ病の診断や治療方針は、このような診察室での患者の主観的な訴えを根拠としており、それが疑わしいと思っても、それを覆すだけの客観的な事実や検査データが医師側にはないのが現実です。患者は、診断書をもらう時点では海外旅行に行くとは言いません。多くのうつ病の心理検査も、患者の主観が反映されてしまい、客観性には限界があります。このような状況で、もし十分な根拠なく訴えを突っぱねれば、逆に医師の判断に客観性がないことになり、医師によるいやがらせ(ドクターハラスメント)だと受け取られる危険性もあります。
さらに、患者によっては、休養診断書を手に入れるために、医療機関を渡り歩く場合もあります。最初のうちは休職するほどの状態ではないと医師から判断されるのですが、納得が行かず、セカンドオピニオンの名のもとに受診を繰り返すうちに、やがて訴え方が誇張的で誘導的になり、最終的に休職診断書を手に入れることができるのです。
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これまで、「新型うつ病」の理解を深めてきました。治療反応性としては、従来型のうつ病が良好であるのに比べて、「新型うつ病」はもともと良好ではないことが分かります。それでは、どうすれば良いのでしょうか?
「新型うつ病」の原因は主に4つであることを解き明かしてきました。それは、社員(個人)が自己本位(個人主義的)になったこと、社員(個人)が依存的なまま(集団主義的)であること、会社(社会)が会社本位(個人主義的)になったこと、会社(社会)が労働法制によって休職中に保護的なまま(集団主義的)であることです。
ということは、その4つの原因に対して、それぞれ4つのアプローチをすれば良いのです。それは、社員(個人)の自己本位の是正、社員(個人)の休職中の依存の脱却、会社(社会)の会社本位の是正、会社(社会)の休職中の過保護の脱却です。ここから、社員(個人)と会社(社会)という2つの側面に分けて、さらにそれぞれの側面で2つのアプローチのポイントをご紹介します。
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①周りに目を向けさせる―認知行動療法
オフ会でのぞみんは「つらそうですね」と今井に共感します。しかし、間を置いて「M田さんも」と付け加えると、今井は「はっ?」「のぞみん、M田の味方なの?」とびっくりして言います。そして、他の参加者は「なんでM田の気持ちなんて分かるわけ?」と質問してきます。
1つ目のアプローチのポイントは、自己本位の是正と依存の脱却のために、周りの視点に立たせて周りに目を向けさせることです(認知行動療法)。これは、一方的に説教をすることではないです。自分に目が向いてばかりで自分のことでいっぱいになっている本人に、周りがどう思っているかなどを具体的に問いかけ多面的に想像させます。例えば、本人が休職中に海外旅行に行ったことを知った同僚の気持ち、自分が悪口を書き込んだブログを見た上司の気持ち、そして今井を叱っていた時の上司の気持ちなどです。
また、過去・現在・未来の時間軸の視点に立たせて将来に目を向けさせることです(メタ認知)。今この瞬間に目が向いて逃げ込もうとしている本人に、本人に「新型うつ病」の特性の理解を促し、このままだと将来どうなるかなどの見通しを伝えます。例えば、本人の物事のとらえ方(認知)に主な原因があること、原因からして従来型のうつ病ではないこと、薬の効果は限定的であること、休職が長引けば長引くほど対人スキル(社会性)が低まり逆に復職が困難になること、部署移動や転職により職場の環境を変えるだけでは同じ症状がまた出る可能性が高いことなどです。
②周りが自分に合わなくても不安がらなくさせる―集団の復職訓練(リワーク)
オフ会の参加者の男性の1人が「(妻が)『今夜は出かけるんだ。気分転換も大事だよね。いってらっしゃい」って嫌味を言うんだよ」「あいつ(妻)は内心じゃおれのこと働きもせず遊び歩いちゃってと思ってるんだよ」と嘆きます。すると、他の参加者たちは「それって」「単に思い込みなんじゃ・・・」とぼそっと指摘します。このやり取りを見た今井は、自分が独りよがりだったことに気付き、復職を決意するのです。ここから分かることは、自分独りでは気付かなかったことが、集団の中では気付くことができることです。昔から「人の振り見て我が振り直せ」とはよく言ったものです。
2つ目のアプローチのポイントは、自己本位の是正と依存の脱却のために、休職しているうつ病の患者が集まった集団で復職訓練を行うことです(リワーク)。昨今では、このリワークを行う医療機関や企業が増えてきています。「新型うつ病」の患者は、医師や臨床心理士などの医療職(権威)からの個別の指摘に対しては、「傷付き不安」から身構えてしまい、自分の偏った考え方(認知の偏り)を認めようとしなかったり(否認)、反発するケースがあります(抵抗)。ところが、自分と似たメンバーからの指摘であれば、仲間意識による親近感から「傷付き」も最小限になります。こうして、安心感のある集団の中で、小さな「傷付き」体験を積み重ねることで、物事のとらえ方(認知)の偏りが修正され、周りが自分に合わなくても不安がらなくなり、「傷付き不安」を克服して、打たれ弱くはなくなります(人間的成長)。言い換えれば、リワークとは、仲間といっしょに小さく傷付け合うことで、人間関係とは何かを学ぶ大人の学校です。
リワークによって、「自分の周りには相手がいる」「自分はたくさんの中の1人なんだ」という現実をより意識するようになります。すると徐々に、「自分にばかり目が向いていた」「上司や会社のせいにしてばかりだった」「嫌なことから逃げていた」という自分のもともとの考え方(認知)に気付くようになります。そして、「もっと周りにも目を向けよう」「自分にも悪い所があった」「嫌なことでも仕事だからやろう」と考えるようになります。こうして、自分も大事だけど周りも大事と思うようになり、「なりたい自分」と「なるべき自分」のバランスがよりとれるようになっていきます。
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①社員(個人)を育て見守る取り組みを行う―アサーショントレーニング
上司の前田は一緒に残業をしている他の部下たちに「おれだって好きで今井を叱ってたわけじゃないよ」「早く一人前になってもらわなきゃ困るから必死だったんだよ」とこぼします。すると、ある部下が「今井も必死だったんじゃないですか?」「毎日あわただしすぎて、とにかく失敗しないように必死で、そればっかりで分かんなくなっちゃったじゃないですかね」と進言します。思い直した前田は、いよいよ今井が復職した日に「ありがとう。待ってたよ」「これからはもっとコミュニケーションをとって、いっしょに成長していけたらと思っている」と同じ目線で真摯に向き合います。すると、今井も「ありがとうございます」と素直に答えることができるのです。
1つの目のアプローチのポイントは、会社本位の是正のために、そして長期的な会社の利益のためにも、社員(個人)を育て見守る取り組みを行うことです。これは、昔ながらの「気合い」や「精神力」などの抽象的な言葉で一方的に押し付けることではありません。例えば、それは感謝し合うポジティブなコミュニケーションのスキルを会社全体で推し進めることです(アサーショントレーニング)。また、「こうしろ!」「ああしろ!」という指示命令ではなく、「あなたはどうしたい?」「何ができるの?」「私たちは何をしてあげられる?」という問いかけによる双方向のかかわり方です。
さらには、入社研修で新人社員たちに今回紹介しているこのドラマを流して、休職中に海外旅行に行く社員の問題点や上司が一方的に叱責する会社の問題点などについてグループワークをして、コミュニケーションの大切さをお互いの共通認識とすることです。「新型うつ病」のなり方を学ぶことは、「新型うつ病」にならないやり方を学ぶことでもあるからです。
②休職中の傷病手当を最低限の設定に引き下げる―限界設定
上司の前田は、部下たちに「(休職している)今井の担当分は同じチームのみんなに肩代わりしてもらう」と伝えます。すると、部下たちは「そんなあ、おれたちもう今の作業量でいっぱいいっぱいですよ」と嘆きます。一方、今井は休職中に傷病手当で海外旅行に行っています。これは、明らかに不公平です。このドラマでは、幸運なことに、オフ会でのやり取りのおかげで、今井は考え直し、早めに復職することができました。しかし、実際は、休職中の手厚い保障に安住することで、なかなか復職できないケースが多いです。
2つ目のアプローチのポイントは、休職中の過保護の脱却と公平性のために、休職中の傷病手当を生活費と医療費を加味した最低限の設定に引き下げることです。つまり、保障の線引きを見極めるということです(限界設定)。これには、日本の労働法制が変わらなければならないです。そうすることで、本人に早期の復職が動機付けられます。そもそも、「傷病」の期間は、休養の期間であり、海外旅行などの交遊費にお金がかかることはないはずです。交遊費にお金をかけるくらい活動性が高いなら、早期に復職するタイミングであると言えます。また、自宅では元気で職場でうつになるという状態なら、それは本人にその職場が合っていないわけで、退職や転職のタイミングであると言えます。
ただ、ここで誤解がないようにしたいのは、先ほど紹介したアメリカのような完全な契約社会が望ましいというわけではないです。それは、全くセーフティネットがないことはホームレスや犯罪などの別の社会問題を引き起こすリスクが高まるからです。かと言って、先ほど紹介したかつてのソビエト連邦や現在のギリシアのような生活が過剰に保障された社会もまた望ましくないです。それは、働かない人たち(フリーライダー)が増えすぎてしまい、国の財政(資源)を食い潰して、国家(集団)が破綻するリスクが高まるからです。
現在の日本は、正規労働が昔ながらの労働法制で過剰に保障されています。その過剰になった保障の費用を抑えようとして、会社は全く保障のない非正規労働を増やし続けています。格差がますます開き、アンバランスになっています。望ましいのは、非正規労働を減らし正規労働を増やすことはもちろんですが、同時に正規労働の過剰な保障を是正することです。大事なことは、「切り捨て」の社会も「抱え込み」の社会も同じくらいの危うさがあり、私たちは、そのバランスをとる必要があるということです。
表4 「新型うつ病」へのアプローチのポイント
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アプローチ |
ポイント |
職員 (個人) |
自己本位の是正 休職中の依存の脱却 |
周りの視点に立たせて周りに目を向けさせる(認知行動療法) 過去・現在・未来の時間軸の視点に立たせて将来に目を向けさせる |
集団で復職訓練を行う(リワーク) |
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職場 (社会) |
会社本位の是正 |
職員(個人)を育て見守る取り組みを行う |
休職中の過保護の脱却 |
休職中の傷病手当を最低限の設定に引き下げる(限界設定) |
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「新型うつ病」は、現在の日本の文化が作り出した要素が大きいことが分かります。それは、もともとの集団主義的な文化から新しい個人主義の文化に変わりゆく時代の流れの中で起きています。つまり、「新型うつ病」は、「助けて脳」と「怠け脳」という社会脳の進化の代償であるだけでなく、現在の日本の一貫しないウェットな個人主義という「文化の代償」とも言えます。
今ここで、「新型うつ病」の正体が見えてきました。そして、どうすれば良いのかも分かってきました。これから社員(個人)も会社(社会)も私たち全員が、「新型うつ病」をより良く理解していけば、そして、バランスのとれた新たな労働の文化を生み出していけば、「新型うつ病」という現象はなくなっていく可能性があるのではないでしょうか?
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1)吉野聡:「現代型うつ」はサボりなのか、平凡社新書、2013
2)NHK取材班:職場を襲う「新型うつ」、文藝春秋、2013
3)アンソニー・スティーブンズほか:進化精神医学、世論時報社、2011
4)大平英樹:感情心理学・入門、有斐閣アルマ、2010
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