連載コラムシネマセラピー

私達の身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション(心理学)メンタルヘルス(精神医学)婚活(恋愛心理学)を見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【2ページ目】2020年2月号 CM「苦情殺到!桃太郎」【後編】-なんでバッシングするの? どうすれば?―「正義中毒」

なぜ日本人的なバッシングのユニークさは「ある」の?

これまで、日本人によるバッシングがユニークな原因は、不安を感じやすい気質(セロトニン不足)と受け身になりやすい気質(ドパミン不足)によるものであることが分かりました。もちろん、不安を感じやすいからこそ、受け身になりやすいとも言えます。逆に、受け身であり続けるからこそ、受け身ではいられない状況に対して不安を感じやすいとも言えます。この2つの気質は、相互作用している面もあります。

それでは、そもそもなぜ日本的なバッシングのユニークさは「ある」のでしょうか? ここから、それぞれの気質の起源を進化心理学的に掘り下げてみましょう。

①不安を感じやすい気質の起源
不安を感じやすい気質の起源には、2つの説が考えられます。

a.「グレートジャーニー促進説」
約6万年前に現生人類(ホモ・サピエンス)である私たちの祖先は、生まれたアフリカの大地を出て、大陸大移動(グレートジャーニー)を経て、世界に広がっていきました。定住せずに移住し続けるには、生活共同体(集団)の絆をより強める種(遺伝子)が生き残ったでしょう。それを下支えしていた心理は、つながりが失われることへの不安感であったことが考えられます。つまり、グレートジャーニーが、セロトニン不足を促進していったと考えられます。これが、1つ目の「グレートジャーニー促進説」です。

実際に、セロトニン不足(セロトニントランスポーターの密度が低いタイプの割合)の国際比較を高い順に並べると、日本(約80%)、韓国(約80%)、台湾(約75%)、シンガポール(約70%)、中国(約70%)、インド(約60%)、トルコ(約55%)、イスラエル(50%)、イタリア(約50%)、スペイン(約50%)、ロシア(45%)、イギリス(約45%)、フランス(約45%)、ドイツ(約45%)、南アフリカ(約30%)となります。まさに、グレートジャーニーを逆方向に辿っています。

また、アメリカ(約45%)、オーストラリア(45%)というデータが出ていますが、これらの国は、もともとヨーロッパからの移民が大多数を占めるので、遺伝的にはヨーロッパ人と同じと解釈します。むしろ、リスクをとってでも移民先に向かった点では、%が低めになるでしょう。

なお、この移民とグレートジャーニーは、移住という点では同じです。しかし、移民が一世代の短期的な移住に対して、グレートジャーニーは数万年をかけた超長期的な移住である点で、生存のための心理的な適応戦略が全く違います。

ちなみに、アメリカ先住民やアボリジニ(オーストラリア先住民)は、日本人よりもさらに遠くに行っており、日本人よりも%が高い可能性がありますが、データはありません。

b.「自然災害促進説」
約3万8千年前に、私たち日本人の祖先はアジア大陸から南方系で日本列島に渡り、定住しました。ところが、日本は、世界でも類を見ない災害大国です。地震、津波、台風、火山などの自然災害という脅威を乗り越えるためには、グレートジャーニーの時と同じく、生活共同体(集団)の絆をますます強める種(遺伝子)が生き残ったでしょう。つまり、自然災害がセロトニン不足をさらに促進していったと考えられます。これが、2つ目の「自然災害促進説」です。

②受け身になりやすい気質の起源
受け身になりやすい気質の起源には、2つの説が考えられます。

a.「均質民族促進説」
日本の国土が島国で、大陸から一定の距離があるため、他民族からの侵略や混血はほとんどありませんでした。これは、江戸時代の鎖国が後押ししました。民族的に極めて均質性が高くなり、同じ見た目で同じ考え方をするので、意見の違いの妥協点を見いだすために自己主張(意思決定)をする必要はあまりなく、むしろ自己主張しない人が生き残ったでしょう。逆に、自己主張する人は、和を乱すと思われ、村八分(社会的排除)という形でバッシングのターゲットになります。そうなることを怖れて、受け身になったのです。つまり、日本人が、世界的に見て、極めて均質的な民族であり続けたことが、ドパミン不足を促進していったと考えられます。これが、1つ目の「均質民族促進説」です。なお、もちろんアイヌ民族や沖縄民族も一定数います。よって、「単一民族」という表現は、誤解を招くため、避けています。

実際に、ドパミン不足(ドパミン分解酵素の活性が高いタイプの割合)の国際比較において、日本は73%です。一方、東アジアで約70%、ヨーロッパは40%強です。ヨーロッパでは、他民族からの侵略が繰り返された歴史があります。そのため、対抗したり妥協するなど積極的に意思決定をする人が生き残ったでしょう。

なお、侵略という人災と地震などの天災は災害という点では同じです。しかし、人災は同じ人間であるため自己主張(意思決定)する余地があるのに対して、天災はその余地がほとんどなかった点で(現代は科学の進歩によってありますが)、生存のための心理的な適応戦略が全く違います。

b.「米作促進説」
約3千年前に、米作が大陸から伝わり、日本人は米を主食とするようになりました。米作は、麦作と違って、協力するプロセスが多いのが特徴です。米作において、受け身になって集団の意思を尊重する人が生き残ったでしょう。これが、2つ目の「米作促進説」です。

実際に、中国の米作地域と麦作地域の比較調査研究によると、同じ中国人であっても、米作地域の方は集団の意思を尊重し、麦作地域の方は合理的な決断をする傾向にあることが分かっています。なお、激動の幕末の日本において活躍したのが、米作に適していない火山地帯の薩摩(鹿児島県)や、米作よりも海運が盛んな長州(山口県西部)の人たちであったことを考え合わせると、とても興味深いです。

★グラフ2 日本的なバッシングの起源