【1ページ目】2025年7月号 NHKドラマ「心の傷を癒すということ」【その2】地震ごっこは人類進化の産物だったの!? だから楽しむのがいいんだ!-プレイセラピー
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・ポストトラウマティック・プレイ
・ミラーリング
・象徴機能
・心の理論(社会脳)
・心理的ディブリーフィング
・PTG(心的外傷後成長)
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前回(その1)、子どもの演じる心理の発達から、地震ごっこをするのは、子どもたちが地震に対して助け合うためのコミュニケーションの練習をしようとしているからであることが分かりました。
それでは、なぜトラウマ体験のごっこ遊び(ポストトラウマティック・プレイ)は子どもに普遍的に見られる現象なのでしょうか? 言い換えれば、なぜ地震ごっこは「ある」のでしょうか? そして、どう接したらいいのでしょうか?
この謎の答えを解くために、今回は、引き続き、NHKドラマ「心の傷を癒すということ」を取り上げ、人類の演じる心理の進化を明らかにして、トラウマ体験のごっこ遊びの起源を掘り下げます。そこから、子どものPTSD(心的外傷後ストレス症)への真の対応のヒントを導きます。さらに、子どもへの心理療法の1つであるプレイセラピーをご紹介します。
なんで地震ごっこは「ある」の?-人類の演じる心理の進化
子どもの演じる心理の発達は、まず目の前の人の動きをそのまま演じる(まね遊び)、次に目の前にいない人の動きを演じる(ふり遊び)、最後に周りの人とのかけ合いによって演じる(ごっこ遊び)であることが分かりました。
ここで、進化心理学の視点から、「個体発生は系統発生を繰り返す」という考え方を、体だけでなく心(脳)にも応用して、心の発達(個体発生)の順番から心の進化(系統発生)の順番を推測します。さらに、人類が演じる心理をどう進化させたのかを明らかにして、トラウマ体験のごっこ遊びの起源を掘り下げてみましょう。大きく3つの段階に分けられます。
①目の前の相手の動きを演じる―ミラーリング
約700万年前に人類が誕生し、約300万年前には男性は女性といっしょに生活して子育てに参加するようになりました。当然ながら、当時はまだ言葉を話せません。そのため、男女がお互いの唸り声や動きをまねすることで、いっしょにいたい気持ちを伝え合っていたでしょう。同時に、このようにまねをすることで、相手への親近感(共感性)が高まるように進化したでしょう。
1つ目は、ミラーリングです。これは、目の前の相手の動きをそのまま演じる能力と言い換えられます。これは、子どもの心理発達のまね遊びに重なります。
なお、ミラーリングの起源の詳細については、以下の記事の後半をご覧ください。
②目の前にいない人の様子を演じる―象徴機能
約300万年前に、人類はさらに部族集団をつくるようになりました。まだ言葉を話せないないなか、メンバーの誰かがけがをして助けが必要であることや猛獣が近くに来ていてみんなで追い払う必要があることなどを何とか身振り手振りや表情などの非言語的コミュニケーション(サイン言語)で伝えたでしょう。
2つ目は、象徴機能です。これは、目の前にいない人やものの様子を体全体で演じる能力と言い換えられます。これは、子どもの心理発達のふり遊びに重なります。
なお、象徴機能の起源の詳細については、以下の記事をご覧ください。