連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【1ページ目】2019年12月号 ドラマ「3年B組金八先生」【続編】-令和の金八先生になるには? わがままにさせない!【同調させるスキル】

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・リーダーシップ
・熱血教師
・観察力
・発信力
・調整力
・同調圧力
・ロボット
・生臭い人間
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みなさんは、リーダーとして現場を引っ張っていこうとする時、「なかなか思うように人が動いてくれない」とお悩みではないですか? こんな時、リーダーシップを発揮するため、周りからどう思われたらよいでしょうか? 叱って「恐い人だ」と恐れられる方が良いでしょうか? それとも、褒めて「優しい人だ」と慕われる方が良いでしょうか? それとも!?

この答えを探るために、今回も前回に引き続いて、学園ドラマの金字塔「3年B組金八先生」を取り上げます。金八先生の「熱血」ぶりは、私たちが人を動かす上で最も必要なものを教えてくれます。彼をモデルに、子どもにも大人にも使えて、相手をわがままにさせない、同調させるスキルをご紹介します。そして、私たちが令和の時代にバージョンアップした金八先生になるにはどうしたら良いかいっしょに考えてみましょう。

令和の金八先生なら集団心理をどう生かす?-同調させる3つのスキル

以前の「褒めるスキル」の記事(2019年5月号)や「叱るスキル」の記事(2019年11月号)で、すでに5つの性格タイプ(パーソナリティ特性)をご紹介しました。それは、優等生タイプ、お調子者タイプ、普通タイプ、ヤンキータイプ、劣等生タイプです。この中で、ひねくれ(反抗)の強いヤンキータイプや甘え(不安)の強い劣等生タイプを動かそうにも、もともとの不適応な傾向が強いと、褒めたり叱ったりする個人的な働きかけではやはり限界があります。

そこで、個人的な働きかけだけで相手が動かないなら、あえて集団的な働きかけもして、揺さ振るのです。これが、同調させるスキルです。ここから、このスキルを3つの体の部位になぞらえて、令和の金八先生なら集団心理をどう生かすかを具体的に考えてみましょう。

「目」-観察力

金八先生は、生徒たち全員の性格や家族背景を知り尽くしています。

1つ目の部位は、「目」です。これは、観察力です。これは、リーダーがメンバーのことをよく見ているということです。この真逆は、リーダーが対外的に忙しいなどの事情で現場にほとんどいなくて、メンバーのことをよく見ていない状況です。そうなると、現場の把握が困難になりますし、トラブルが発生した時の対応も遅れます。リーダーの存在感が薄まり、リーダーシップは危うくなります。かと言って、リーダーがただいれば良いかというと、それだけでもうまく行かないです。大事なのは、見られていることをメンバーに感じ取らせることです。それは、「振り向けば私がいるわよ」「全てお見通しよ」「あなたのことよく分かってるわよ」という力強いメッセージです。

それでは、普段から観察力を研ぎ澄ませるための具体的なスキルを3つご紹介しましょう。

①目を増やす―情報収集
1つ目は、目(見張り)を増やすことです。これは、特に不適応なメンバーについての情報収集を徹底することです。ただし、リーダー個人の目だけでは限界があります。よって、まず、信頼できる側近(サブリーダー)に、自分のいない時の目をなってもらいます。また、プラスαとして、優等生タイプの目も借ります。そして、不適応なメンバーの言動を細かく把握して、問題点や急所をはっきりさせ、うやむやにさせないことです。さらには、集団に直属しない他の集団のメンバーと信頼関係をつくり、「スパイ」の目になってもらうこともありでしょう。

②目をかける―褒める

2つ目は、目をかけることです。これは、特に不適応なメンバーに個人的に興味津々になり、細かく褒めることです。この時、集めた情報も密かに利用できます。ここで誤解がないようにしたいのは、褒めると言っても、単にこちらが褒めたいから褒めるということはやらないことです。逆に、褒めることがないと思っても、褒めることを必死で探す必要もあるでしょう。なぜなら、ここでは、褒めることは目的ではなく手段だからです。

褒めるという戦略(手段)によって得られる成果(目的)が3つあります。まず、リーダーの観察力が鋭いことを印象付けることができます。次に、褒められたメンバーが自分の良さを決め付けられることによって、その良さを本人自身が生かすことに意識を向けやすくなります(ピグマリオン効果)。最後に、メンバーはたびたび褒められることによって、リーダーに好意的になり、言われることを聞きやすくなります(魅力の互恵性)。

例えば、メンバーが「私、気にしすぎるんです」と相談を持ちかえてきたら、何を気にしすぎるかを掘り下げて、最後は「だからこそ、この仕事(または勉強)に向いている。だって、観察力が鋭いってことだから」と断定します。この「だからこそ」はものごとのプラス面とマイナス面を逆転させるつなぎの言葉としての力を持っています。

③目を光らせる―霊感
3つ目は、目を光らせることです。これは、特に不適応なメンバーに本人の考えていることを言い当てて、勘が良いアピールをすることです。例えば、収集した事前の情報から推測して、「今日は顔色が珍しく冴えないね。何かあったでしょ?」と悩んでいることを言い当てる演出をします。そして、「私、分かるのよね」と自信満々でつぶやき、スピリチュアルな雰囲気をやや醸し出すことです。

時に、「あなたってこうだよね」と本人も気付いていない癖を見抜いて、「なんで分かっちゃってるの?」と思わせ、「奇跡」を見せるという大技もあります。ただし、手口は基本的に霊感商法と同じであり、やりすぎるとうさん臭く思われるので、ほどほどが肝心でしょう。