【1ページ目】2025年7月号 NHKドラマ「心の傷を癒すということ」【その1】だから「地震ごっこ」をするんだ!-子どものPTSD
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・再演遊び(ポストトラウマティック・プレイ)
・身体感覚のフラッシュバック
・退行(解離)
・まね遊び
・ふり遊び
・ごっこ遊び
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子どもが、地震や交通事故に遭ったり、テレビで見たりした時、その出来事を遊びにしてしまうことがあります。それが、「地震ごっこ」「飛行機事故ごっこ」「心臓マッサージごっこ」です。なぜそんなことをしてしまうのでしょうか?
今回は、子どものPTSD(心的外傷後ストレス症)をテーマに、NHKドラマ「心の傷を癒すということ」を取り上げます。そのなかの被災した子どものエピソードを通して、トラウマ体験のごっこ遊びについて解説します。そして、子どもの演じる心理の発達に注目し、トラウマ体験のごっこ遊びをする心理メカニズムをいっしょに考えてみましょう。
なお、このドラマは、以下のNHKオンデマンドで配信されています。
子どものPTSDの特徴とは?
時は、阪神淡路大震災の直後。精神科医の安(あん)先生は、避難所になっている小学校で診療を続けます。そのシーンを通して、子どものPTSDの特徴を大きく3つ挙げてみましょう。
①トラウマ体験をごっこ遊びで再現する―再演遊び
安先生は、避難所のまとめ役でもある校長先生から「安先生、ちょっと頼みますわ」と呼ばれます。行ってみると、避難所生活を続けている男の子2人が、段ボールで作った机の上に、ペットボトルや入れ物などを並べ、「震度3・・・、震度5・・・震度7・・・」と言いながら、その段ボールを揺らします。すると、建物が崩れるように、ペットボトルや入れ物が大きな音を立てて倒れるのです。
1つ目の特徴は、トラウマ体験をごっこ遊びで再現する、再演遊び(ポストトラウマティック・プレイ)です。これが、いわゆる「地震ごっこ」です。この現象は、大人ではみられず、子どもに特徴的です。
②トラウマ体験を体の感覚で思い出す-フラッシュバック
安先生は、地震ごっこをした男の子を気にかけます。いっしょに荷物を運んでいる時、その子は「今、揺れとぅ?」「なんかな、ずっと揺れとぅ気がすんねん」と漏らします。
2つ目の特徴は、トラウマ体験を体の感覚で思い出す、身体感覚のフラッシュバックです。その出来事がまた起こっているように生々しく感じてしまいます。この症状は、大人でも見られますが、子どもに多いです。大人の場合は、例えば、ある女性患者が安先生に「今でもその声が聞こえてるんです。助けて、誰か助けてって」と訴えたように、聴覚のフラッシュバックが多いです。
③トラウマ体験で赤ちゃん返りをする―解離
このドラマでは描かれていませんでしたが、特に幼児は幼ければ幼いほど、例えば、指しゃぶりをしたり、幼い話し方をするなど、赤ちゃんのように振る舞うことがあります。
3つ目の特徴は、トラウマ体験で赤ちゃん返りをする、退行(解離)です。この現象は、まれに大人でも見られますが、子どもに多いです。また、トラウマレベルではなく、例えば弟や妹が生まれた時に自分が構ってもらえないようなストレスでも見られます。
なお、大人のPTSDの詳細については、以下の記事をご覧ください。