連載コラムシネマセラピー
私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション、メンタルヘルス、セクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。
私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション、メンタルヘルス、セクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。
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・嗜癖(アディクション)
・物質の嗜癖症
・行動の嗜癖症
・人間関係の嗜癖症
・「嗜癖症スペクトラム」
・子育て(家庭環境)の違い
・テーマパーク
・お祭り
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みなさんはテーマパークが好きですか? 特に子どもは大好きですよね。おいしいお菓子やすてきなグッズが至るところに並べられ、乗り物は選びたい放題。そして歌とダンスのパレードにキャストからのおもてなし。まさに夢の国。子どもも大人も楽しめる、ザ・エンターテイメントです。そんなところにはずっといたい! でも、もし本当にずっといたら、どうなるでしょうか?
今回は、 嗜癖(しへき)をテーマに、映画「チャーリーとチョコレート工場」を取り上げます。この映画を通して、精神医学の視点から、嗜癖症について掘り下げます。そして、何ごともハマりすぎることは特に子どもに有害である理由を解説します。そこから、この映画の教訓をいっしょに導いてみましょう。
チョコレート職人ウォンカが作ったチョコレートは世界中で大人気。しかし、彼のチョコレート工場の中は完全非公開であり、謎に満ちていました。そんなある日、彼は以下の告知を出します。
「工場見学に5人の子どもをご招待します。金色の招待チケットが、世界中で売られているどれかのチョコレートの包み紙の中にそれぞれ1枚ずつ、全部で5枚入っています。さらにそのうちの1人は想像を絶する特別な賞品がもらえます。」
世界中がチケット争奪で大騒ぎとなる中、運良く引き当てた5人の子どもが工場見学に揃ってやってきます。まず、そのうちの4人がすでにハマっていることを通して、嗜癖を大きく3つに分けてみましょう。
なお 、嗜癖(しへき)(アディクション)とは、嗜好の癖、つまり嗜んで好きになり癖(習慣)になる状態で、依存のより広い概念として現在心療内科・精神科で使われるようになっています。日常会話では「ハマる」「病みつき」「〇〇中毒」と言い換えられます。
①チョコレートにハマる―物質の嗜癖
1人目のオーガスタスは、大のチョコレート好きの食いしん坊。小学生にして、すでに体格は大人並みの肥満体形です。
1つ目の嗜癖は、何かを体に摂取することにハマる、つまり物質の嗜癖です。これは、チョコレートなどの食べ物のほかに、アルコール、コーヒー、タバコ、ドラッグ(薬物)などがあげられます。
②買い物またはゲームにハマる―行動の嗜癖
2人目のベルーカは、お金持ちで何でも自分のものにしたがる欲しがり屋さん。経営者である父親の財力によって、小学生にして手に入れられないものはありません。招待チケットも、父親のチョコレートの買い占めによって手に入れました。また、3人目のマイクは、激しい戦闘ゲームにハマる中学生のゲーマー。大勢のテレビリポーターの前でもゲームをやめずに「死ね!ぶっ殺す!」と叫び、知ったかぶりで反抗的でした。
2つ目の嗜癖は、何かをすることにハマる、つまり行動の嗜癖です。これは、買い物(浪費癖)やゲームのほかに、ギャンブル、コレクション(収集癖)、抜毛癖、美容形成(醜形恐怖)、自傷行為(情緒不安定)、万引き(窃盗癖)、性癖、ポルノ(セックス)などがあげられます。
③ちやほやされることにハマる―人間関係の嗜癖
4人目のバイオレットは、ガム噛みの世界ジュニアチャンピオン。部屋中にいくつものトロフィーが飾られています。テレビレポーターたちの前でも、世界記録挑戦中のためにガムを噛み続け、「私が一番」「私が特賞をもらう」と勝つことにこだわります。
3つ目の嗜癖は、人と何かでかかわることにハマる、つまり人間関係の嗜癖です。これは、ちやほやされること(承認)のほかに、バッシング、虚言癖、世話好き(共依存)、甘え癖(依存)、支配すること(モラルハラスメント・DV)などがあげられます。