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・ピラミッド型
・ファミリー型
・フラット型
・家族モデル
・進化心理学
・パターナリズム
・シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)

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みなさんは、人間関係を築こうとする時、「この人と合わないかも」と思うことはありませんか? 例えば、みなさんが職場で部下として、同僚として、そして上司としては? または、医療従事者としては? さらには、プライベートで友達として、恋人としては? 何が原因なのでしょうか? どうしたらうまく合わせることができるのでしょうか?

今回は、このコミュニケーションのタイプとその相性をテーマに、ドラマ「下町ロケット」を取り上げます。このドラマは、主人公の佃が、社長として下町の町工場・佃製作所を経営する奮闘を描いています。ドラマの中で、佃は、ロケットの部品供給を巡って、帝国重工の宇宙航空部部長の財前と粘り強い交渉をします。

さらに、コミュニケーションのタイプの違いの起源、コミュニケーションのタイプのギアチェンジの仕方、これからの時代に求められる医療のコミュニケーションモデルについて探っていきます。

3つのコミュニケーションのタイプ-表1

ここから、佃と財前をそれぞれモデルとして、大きく3つのコミュニケーションのタイプに分けて、みなさんといっしょに考えていきたいと思います。


①力関係でつながる―ピラミッド型
まずは、分かりやすいので、帝国重工の部長の財前と彼の上司・部下とのコミュニケーションを見てみましょう。財前が三千人の部下の前でロケット開発の勇ましい演説をして、部下たちを奮起させるシーン。その部下たちの目の前で、財前は社長から「頼むぞ」と励まされます。しかし、その直後、直属の上司である本部長から「(社長の思い通りにロケットを飛ばすことが)できなかったら君も私も・・・(降格させられるぞ)」と脅されます。財前は静かに「分かっております」と返事をするのです。

大企業の帝国重工は、社長をトップとして、その下に本部長、部長、主任、そして一般社員を従える完全な階級構造です。これは、ピラミッド型と言えます。その特徴は、組織のさらなる発展という目的のために、成果主義など制度がしっかりしていること、そして序列主義など上下関係がはっきりしていて、命令に背けば命がないくらいの強さや恐怖(ノルアドレナリン)があります。つまり、力関係でつながっています。このタイプになりやすいのは、比較的に大人数で、男性が多く、マニュアル行動を行う集団であると言えます。例えば、大企業のほかに、自衛隊、消防隊、官僚などの公的組織やスポーツチームなどです。

プラス面としては、大人数で協力してより大きなことを成し遂げる、つまり成果を確実に上げることができます。また、大きくて強い組織に所属しているというブランド力や経済的な安定感があります。ドラマの中で、帝国重工の社員が「それが帝国重工マンとしてのプライドだ」と誇らしげに言うシーンがありました。

一方、マイナス面としては、組織の歯車として管理されることで決められたことしかできずに裁量の自由がなくなってしまうことです。また、「ぴりぴり」の関係なので、順応さや従順さを求められることで、部下が上司にイエスマンとなり、組織の現状の批判や新しいアイデアで組織をより良くしていこうという創造性が抑えられます。そして、組織の不正(チームエラー)を指摘することを憚ってしまい、隠ぺい体質を生み出すリスクもあります。例えば、2016年に某自動車会社の燃費不正が長年に渡って行われていたという不祥事が挙げられます。
 財前が佃に肩入れする行動を、本部長(財前の直属の上司)が見かねて、主任(財前の直属の部下)を取り込みます。するとやがて、その主任は財前を出し抜こうとするようになるのです。このように、ピラミッド型は、組織(制度)への忠誠心はありますが、力関係でつながっている仲なので、実は上司と部下の信頼関係は希薄であることが分かります。実際に、かつての部下が今の上司という状況になった時、より葛藤が起きやすくなります。
 また、夫が妻の上に立つピラミッド型の夫婦関係においても、夫がリストラや定年退職になり経済的な成果を上げられなくなった時や、子どもが巣立って経済的な負担が減った時に関係が破綻しやすくなります。それが、熟年離婚です。

②信頼関係でつながる-ファミリー型
次に、佃製作所の社長の佃と彼の部下とのコミュニケーションのスタイルを見てみましょう。財前が佃製作所を訪ねてきた時に、佃が職員を紹介するシーン。ある職員が「社長、昨日はごちそうさまでした」「(娘がお土産を)おいしいおいしいとむしゃぶり食ってました」とお礼を言い、職員の皆が佃と親しく接しています。

中小企業の佃製作所は、社長と一般社員との心理的距離が近く、まるで家族のような人間関係を築いていて、優しさや安心感(セロトニン)があります。これは、ファミリー型と言えます。その特徴は、ピラミッド型とは対照的に、社員の一人一人が大事にされ、信頼関係でつながっています。このタイプになりやすいのは、比較的に少人数で、女性が多く、長期間の集団であると言えます。例えば、中小企業のほかに、集団登山、護送船団、サークル活動などです。

プラス面としては、とにかく居心地が良いことです。一方、マイナス面としては、プラス面の裏返しで、序列が緩やかで「なあなあ」の関係なので、ピラミッド型のように成果がそれほど求められないことです。また、現状を批判しにくく、気を遣ってミスや怠けをかばい合い、うやむやにしてしまいます。それほど必死になって仕事に貢献しなくなることで、会社としての競争力を落とすリスクが高まります。さらには、疑似家族ならではの心理的距離の近さや人間関係の固定化により、長期的には古株のメンバーが既得権を振りかざしたり、不仲な社員同士が足を引っ張り合うなど、逆に人間関係が煮詰まるリスクもあります。

③協力関係でつながる-フラット型
最後に、佃と技術開発部門の山崎、佃と経理部長の殿村、そして佃と財前のコミュニケーションのスタイルをそれぞれ見てみましょう。かつて佃が山崎を他社から引き抜こうとした時に、彼は「君には夢があるか?おれにはある」「いつか自分の作ったエンジンでさ」「ロケットを大空に飛ばしたいんだ」と語ります。その思いに山崎は突き動かされたのでした。また、経理部長の殿村は、佃に渋い進言をし続け、「おれがみんなに嫌われていることは分かってる」「おれはこの会社が好きだ」「能力や技術力があるのに日の目を見ない企業を助けたかった」「(もともと)銀行員として物作り日本の手助けをしたかった」「それがおれの夢でした」と語っています。さらに、財前は、佃製作所の技術力の高さと佃のひたむきさに打たれ、同じ技術者として佃との友情が芽生え、ロケット打ち上げの成功という同じ目標を共有して、部品供給を受け入れます。

佃とこの3人との人間関係は、力関係でもなく、信頼関係だけでもない平ら(平等)な関係によって、同じ夢に向かう楽しさや好奇心(ドパミン)があります。これは、フラット型と言えます。その特徴は、お互いが同じ目標に向かうために協力関係でつながっています。このタイプになりやすいのは、10人くらいまでの少人数で、集団の目的とそれぞれのメンバーの役割がはっきりしており、目的が達成されれば解散するという比較的短期間の集団であると言えます。例えば、職場のプロジェクトチーム、航空機のコクピットクルー、手術チーム、当直メンバー、チームスポーツ、裁判員(陪審員)などです。

プラス面としては、お互いに率直な意見を言い合えて、オープンであることです。「ぴりぴり」のピラミッド型や「なあなあ」のファミリー型とは違って、「はきはき」の関係なので、相手のミスへの指摘に遠慮はしません。そして、創造的でより強いチームワークを発揮します。なぜなら、お互いの目標を達成するために関係を築いているからです。

一方、マイナス面としては、お互いの目標にずれが起きた場合、その折り合いを付ける粘り強さが必要です。そして、折り合いがつかない場合は、関係の解消という選択肢もありえるということです。このドラマでは、特許を早々と高く売るか、使用契約にして将来への投資とするか大もめになっていました。
私たちの職場の人間関係においても、例えば、病院(組織)の利益優先か患者(顧客)の満足度優先か、効率か後輩教育か、家族優先か仕事優先かなど様々にあります。家庭の人間関係においては、貯金優先か余暇優先か、のびのびとした子育てかしつけの行き届いた子育てかなど様々です。

3つのコミュニケーションのタイプの違いはなぜ「ある」の?

これまで、3つのコミュニケーションのタイプを見てきました。そして、なぜこのようなタイプの違いになるのかも分かってきました。それでは、そもそもなぜこのようなタイプの違いが「ある」のでしょうか?


その答えは、これらの3つのコミュニケーションのタイプは、私たちの子ども時代のコミュニケーションのパターンを繰り返しているからです。例えば、ピラミッド型は父親をはじめとする男性年長者とのコミュニケーション、ファミリー型は母親をはじめとする女性年長者とのコミュニケーション、フラット型は年齢の近い兄弟姉妹や友達とのコミュニケーションであると言えます。つまり、コミュニケーションのパターンは、家族モデルが基盤になっているということです。

この家族モデルの心理は、進化心理学的に言えば、私たちがヒトとなり体と心(脳)を適応させていった原始の時代の700万年前から進化したと考えられます。当時から、男性(父親)は食糧を確保し、女性(母親)は子育てをして、性別で分業をして家族をつくりました。そして、この基本となる家族が血縁によっていくつも集まって100人から150人の大家族の生活共同体(村)をつくりました。この当、遠出して食料を確保したい父親(男性)たちは、ピラミッド型のコミュニケーションによって成果を確実に上げました。一方、村にとどまっていっしょに子育てをしたい母親(女性)たちは、ファミリー型のコミュニケーションによって居心地を良くしました。そして、早く一人前になりたい子どもたちは、遊びを初めとするフラット型のコミュニケーションによっていっしょに何かを成し遂げ成長しました。そして、よりそうした種が生き残ったのです。その子孫が、現在の私たちであるというわけです。

コミュニケーションのタイプはリーダーシップ理論にも重なる-グラフ1

なお、このコミュニケーションのタイプは、社会心理学のリーダーシップにおけるPM理論にも重なります。この理論は、まずグラフ1のように、縦軸を目標達成度(Performance)、横軸を集団維持度(Maintenance)とします。すると、3つのコミュニケーションのタイプはグラフのような位置取りになります。ピラミッド型は、成果主義により目標達成度は高いです。しかし、人間関係の信頼感がない分、集団維持度は低いです。一方、ファミリー型は、居心地が良い分、集団維持度は高いです。しかし、成果があまり求められなくなるため、目標達成度は低くなります。そして、フラット型は、同じ目標を目指すという原動力がある限りにおいては目標達成度も集団維持度も高くなります。
 つまり、コミュニケーションは、二者関係におけるリーダーシップとも言えます。

コミュニケーションのタイプがずれていたら?

それでは、これらのコミュニケーションのタイプがずれていたらどうなるでしょうか? タイプの違う組み合わせによる3つのずれのパターンを、それぞれの登場人物たちのコミュニケーションから考えてみましょう。


①ピラミッド型VSファミリー型
佃と先代から長年ひいきの白水銀行とのやりとりのシーン。佃は窮地の状況で「お互い信頼関係あっての取引だったはずです」と言い、融資を申し出ます。しかし、「融資ってのは」「ビジネスです」とあっさり突っぱねられてしまいます。そのわけは、佃が銀行の意向に背いて研究費への投資の大幅な削減を渋ったからでした。ファミリー型で接していた佃は、本来ピラミッド型である銀行マンの心理を読み違えていたのでした。その心理は、力関係を見せ付け、成果がなければ切り捨てるというコミュニケーションです。

今度は逆に、佃が窮地を脱して多額の利益を得たシーン。その銀行マンが平謝りで、すり寄ってきます。しかし、佃は「おれはあんたたちにされた仕打ちは絶対に忘れない」「同じ人間としておれはあんたらを全く信頼できない」と一喝します。ピラミッド型の銀行マンは、下手(したて)に出れば、関係が修復できると踏んでおり、佃の心理を読み違えていたのでした。その心理は、どんなに成果が得られても、信頼できない相手とは関係を持たないというコミュニケーションです。

ピラミッド型かファミリー型かというコミュニケーションのタイプの違いは、私たちの職場においても起こります。例えば、会社と直属上司の板挟みになる部下です。まさに、このドラマの主任(財前の直属部下)の心理です。この主任のように迷うことなくピラミッド型のコミュニケーションをとることもできます。しかし、直属上司のとの信頼関係が厚い場合は、直属上司に着いていくというファミリー型のコミュニケーションをとることもできます。この場合、大事なことは、自分はどうしたいのかということです。これは、ちょうど2016年の国民的人気アイドルグループの解散騒動に重なります。長年いっしょにいたマネージャー(直属上司)の独立に伴い、多くのメンバーたちがそのマネージャーの独立に着いていくとファミリー型のコミュニケーションをとりました。ところが、1人のメンバーだけがもともとの会社に残るというピラミッド型のコミュニケーションをとったのでした。この騒動に正解はありません。会社と直属上司の板挟みになる局面において、メンバーのコミュニケーションのタイプの違いが浮き彫りになってしまったということです。

また、恋人関係や夫婦関係などのパートナーシップにおいて、ピラミッド型のコミュニケーションをファミリー型の相手にしていたらどうなるでしょうか? よく言えばオラオラ系、亭主関白、かかあ天下になります。しかし、それは、悪く言えばDVやモラルハラスメントでもあります。なぜなら、ファミリー型の相手は被害を受けても関係性を重視して、別れようとはしないからです。

さらには、親子関係において、親がファミリー型のコミュニケーションをピラミッド型のコミュニケーションをする成人した子どもにし続けたらどうなるでしょうか? うまく行けば一見とても仲の良い家族になります。それは、面倒見の良い親が、わがままな子どもの言いなりになるからです。しかし、うまく行かなければ、子どもが実家の居心地の良さに安住して自立しなくなったり、ひきこもりになってしまいます。

②フラット型VSピラミッド型
財前は、ロケットの部品全てを自社製品で揃えるという社長のこだわりに背きます。佃製作所から部品供給を受ける方向で動き、最終的には、幹部会議の中で、帝国重工社長に進言するのです。そして、会議は緊迫します。財前がピラミッド型の社長にあえてフラット型の進言をしています。財前もその行動のリスクは重々承知しています。結果的に、社長は財前の粘り強い説得に納得し、「賭けてみるか、どん底から這い上がった男に」と言います。そのわけは、社長がもともと技術者出身で、佃のロケットを飛ばすという熱意と技術に共感すると財前は踏んでいたからでした。財前は、社長の心の中になるフラットな心理を引き出したのでした。

また、佃が高校生の娘にかかわるシーンを見てみましょう。佃は、娘が部活をサボったことに腹を立て、ノックもせずに部屋に押し入ります。そして、「お前、何やってんだ!」「親に向かって何だ!その口の聞き方は!?」と一方的に叱り付けています。そして、娘の反抗心をますます煽っていました。もともと娘に対する佃のピラミッド型のコミュニケーションが抜け入れていないことが分かります。娘は反抗期であり、ピラミッド型のコミュニケーションによる子ども扱いのままでは逆効果です。その後に、佃は娘に「好きだったら納得のいくまで」「だめなら他にまだいくらでも夢中になれるものは見つかるよ」「焦らずにゆっくり探せばいい」と娘の思いを認めることで、娘は「私も自分の夢を絶対に見つけるから」と言い、分かり合えます。このように、同じ大人の仲間としてフラットに大人扱いすることが本思春期の子どもの心を動かすのです。

私たちの職場においても、部下は、上司が自分から考えて動くことを望むフラット型なのか、それとも命令通りに動くことを望むピラミッド型なのかを察知することが重要であるということです。逆に、上司は、部下がとにかく良い仕事をしたいという純粋な自己実現を望むフラット型なのか、それとも職場内の評価やより高い役職を望むピラミッド型なのかを見極めることが重要です。それは、実務職(プレーヤー)を望むフラット型か、管理職(マネージャー)を望むピラミッド型なのかという違いでもあります。

また、上司からの押し付けと部下からの突き上げの板挟みになる中間管理職が当てはまります。これは、上司がピラミッド型のコミュニケーションであるにもかかわらず、部下たちが言いたいことを言うフラット型のコミュニケーションをしているということになります。この場合、大事なことは、自分はどうしたいのかということです。自分も上司と同じくピラミッド型になるのか、逆に部下たちの言い分を飲むファミリー型になるのか、それともさらに自分のビジョンを打ち出すフラット型になるのかはっきりさせることが重要です。


③ファミリー型VSフラット型
佃製作所の社員たちが特許を早々と高く売るか、使用契約にして将来への投資とするかについて大もめになるシーン。ある社員が「うちにとって目の前の問題は資金繰りじゃないですか」「今この会社は生きるか死ぬかの瀬戸際なんですよ」と必死に訴えます。一方、幹部の山崎たちは「あの技術は絶対に手放したくありません」「汎用性の高い斬新なものなんです」「売ればその可能性を捨てることになる」と頑として言い返します。これは、佃(会社)に対して、一般の社員たちが会社(関係性)を残すことを優先するファミリー型のコミュニケーションを取っているのに対して、山崎などの幹部は目標(企業理念)を残すことを優先するフラット型のコミュニケーションを取っているからであると言えます。

このタイプの違いから、実際に専業ママのママ友グループにワーキングママは溶け込みにくいことが分かります。そのわけは、専業ママたちは、多少の情報交換はしていますが、お互いをねぎらったり励ましたりするなどを通して関係性を重視しており、集まることに意義があるファミリー型だからです。一方、ワーキングママは、職業的な視点が働きつい目的志向になってしまい、言いたいことをずばずば言ってしまうフラット型だからです。すると、専業ママにとっては、ワーキングママはきつい存在となります。一方、ワーキングママにとっては、専業ママたちは退屈な存在になってしまうというわけです。

また、私たちが相談事を受ける時も注意が必要になることが分かります。それは、相談相手が、どのコミュニケーションのタイプの答えを求めているかということです。とりあえず「つらかったね」「大変だね」と受け止めることだけを求めるファミリー型なのか、解決のための手厳しい答えを求めるフラット型なのかという見極めが必要になります。

それぞれのコミュニケーションのタイプをどうやって変える?

それでは、それぞれのコミュニケーションのタイプをどうやって変えることができるでしょうか? コミュニケーションのタイプが相手、状況(集団)、時代によって変化することを踏まえて、いっしょに考えていきましょう。


①ピラミッド型
まず、ピラミッド型に変えるにはどうしたら良いでしょうか? 自分が上司の場合と部下の場合に分けて整理しましょう。
自分が上司の場合、より上手(うわて)に出ることがポイントです。これは、相手との力関係を意識させるかかわり、つまり見張ることです。わがままになるのとはまた別です。その1つが、「報・連・相」の強化です。報告、連絡、相談をより多くするよう指示して、そうしなかったら、ダメ出しをすることです。また、褒め叱りの徹底も同様に効果的です。

逆に、自分が部下の場合、基本的に下手(したて)に出ることがポイントです。これは、相手との力関係を受け入れる態度を表向きに見せる、つまり見張られることを受け入れることです。完全に言いなりになるのとはまた別です。こちらから、「報・連・相」を徹底することです。そのほかに使えるワザとして、「褒め殺し」が有名です。「すごいでねえ」「さすがですね」とのワードを連発して相手を気持ち良くさせることです。そして、それ以上の要求を逆に言わせないやり方です。さらにその発展形が「詫び殺し」です。例えば、トラブルが起きた時、こちらが悪くなくても「すみません」「申し訳ない」とのワードをひたすら繰り返し、「何とかしてしたい気持ちでいっぱいなんです」「これが私の精一杯なんです」と添えます。特に、医療機関で待ち時間が長いなどのクレームにおいて、こちらが上から目線で突っぱねるピラミッド型は不適切です。かと言って、フラット型のコミュニケーションで正論を言っても、特にプライドの高い高齢者は理解力の限界も相まってなかなか納得をしてもらえない可能性があります。そんな時、相手にそれ以上の文句を言わせないかかわりとして効果的であると言えます。

②ファミリー型
次に、ファミリー型に変えるにはどうしたら良いでしょうか? それは、グッドリスナーになることがポイントです。これは、相手との信頼関係を高めるために、話をよく聞くことを通して、あなたの味方であるというメッセージを伝えること、つまり見守ることです。合いの手としては、「大変だね」(共感)、「その気持ち分かるよ」(受容)、「大丈夫だよ」(保証)などのワードが使えます。そして、観察力を鋭くして、褒めることを増やし、目をかけることです。また、いっしょに食事をすることです。

注意したいのは、逆に助言、激励、結論などの自分の意見は不要です。これは、相手を丸ごと受け止めていないと思われてしまったり、相手をつい良いか悪いか審判してしまうリスクがあるからです。

また、相手との共通点を見つけるのも良いでしょう。これは、相手との共通点が多ければ多い方が、より親近感を抱くという理論に基づいています(社会的交換理論)。


③フラット型
最後に、フラット型に変えるにはどうしたら良いでしょうか? それは、自分の目標(ビジョン)をはっきりさせること、そして相手の目標(ビジョン)とすり合わせることです。これは、相手との協力関係を高めるために、お互いの目標を見合うことでもあります。例えば、自分が目標に向かって生き生きとがんばっている背中(モデル)を見せることです。さらには、どこにどう向かっているのか分かりやすく見せるプレゼン力も重要でしょう。

子育てにおいて言えば、母親が「勉強しろ」とガミガミと言い続けるピラミッド型のコミュニケーションには限界があります。その母親が専業主婦として優雅な生活をしていたらなおさらです。子どもに一生懸命さを求めるのであれば、まず親が何かに打ち込んで一生懸命になっている背中を見せるフラット型のコミュニケーションが効果的です。

また、相手に役割意識を見いだすことも重要です。例えば、「あなただからこそやってもらいたい」「あなたならできる」という働きかけによって、相手の自信や責任感を引き出すことができます。

これからの医療のコミュニケーションモデルとは?―パターナリズムからSDMへ

昨今の医療においては、患者だけでなく、医療関係者の価値観や治療選択も多様化してきています。そして、時代はより医療に説明を求めてきています。そんな時代に求められる医療のコミュニケーションモデルとは何でしょうか?

かつて医療のコミュニケーションモデルは「お任せ」でした。医師が「この薬を飲んでください」や「手術が必要です」と説明抜きで一方的に言っていました。いわゆるパターナリズム(父権主義)です。これはピラミッド型が当てはまります。確かに、知的障害や認知症、自傷他害のおそれのある精神障害、そして伝染性の強い感染症については、このような強制的な対応が必要な場合があります。しかし、それはごく一部になってしまいました。


また、特に心療内科や精神科の分野のコミュニケーションモデルは、「受け止める」です。これは、医療関係者が「つらいですね」と共感的に接することが主となっています。いわゆる傾聴を基本とする支持的精神療法です。これはファミリー型が当てはまります。しかし、このやり方は、問題への根本的な介入とはならないため、患者の問題は解決しないという課題が残ります。

そして、最新の医療のコミュニケーションモデルは、「いっしょに決める」です。これは、治療をしないことも含めた治療の選択肢を医師が提案し、それを患者が医師といっしょに考えることです。インフォームドコンセント(IC)からさらに進んだやり方で、シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)と呼ばれています。これは、フラット型が当てはまります。ただし、この取り組みには、医師に膨大な労力がかかります。今後の課題としては、医師が患者への説明に追われて疲弊しない枠組みが求められます。

これからの時代に求められるコミュニケーションとは?

これからの時代に求められるコミュニケーションとは何でしょうか? 昨今の世の中のコミュニケーション環境は、医療に限らず多様化してきています。コミュニケーションのタイプの違いを知った今、そしてずれによる危うさを知った今、その答えとは、相手や状況によって、コミュニケーションのタイプのバランスをとったりギアチェンジをすることではないでしょうか?

参考文献

1)糸井戸潤:下町ロケット、小学館文庫、2013
2)小野善生:リーダーシップ理論、日本実業出版社、2013
3)山岸俊男監修:社会心理学、新星出版社、2011