連載コラムシネマセラピー

私達の身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション(心理学)メンタルヘルス(精神医学)婚活(恋愛心理学)を見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【1ページ目】2019年5月号 映画「ダンボ」-なぜ飛ぶの? 私たちが「飛ぶ」には?【褒めるスキル】

********
・信頼関係
・主流秩序
・リフレーミング
・自己成長
・「褒めの引き出し」
・ピグマリオン効果
・両面提示
・ウィンザー効果
********

みなさんは、相手をどう褒めて良いか分からなくて困ったことはありませんか? その相手は、職場の部下、同僚、上司でしょうか? さらには、家族、友人、そしてパートナーでしょうか? そもそもなぜ褒めるのでしょうか? そして、どう褒めるのが良いでしょうか?

これらの答えを探るために、今回は、ディズニーの名作映画「ダンボ」の2019年実写版を取り上げます。ダンボと言えば、遊園地のアトラクションの1つである「空飛ぶゾウさん」を思い浮かべていただければ分かりやすいでしょう。ダンボはなぜ飛ぶのでしょうか? そして、私たちが「飛ぶ」にはどうすれば良いでしょうか?

この空飛ぶゾウの「ダンボ」の映画には、3つのテーマがあります。そのテーマを通して、褒める心理を掘り下げ、褒めるスキルをいっしょに考えてみましょう。

ダンボのテーマとは?

ストーリーの舞台は、1900年代前半のアメリカ。巡業中のサーカスファミリーは、新たに赤ちゃんゾウを迎え、ダンボと名付けます。ダンボは、その大きくて奇妙な耳で、観客たちからはブーイングを浴びてしまいます。ところが、団員の子どもたちは、その耳を使ってダンボが飛べることを発見します。そして、ダンボはサーカスの人気者になっていきます。その後、それを聞きつけた遊園地・ドリームランドの社長はダンボをビジネスに利用するため、母ゾウが処分しようとします。それをサーカスファミリーの団員たちが阻止し、最後は、ダンボは母ゾウとともに故郷インドに帰るというハッピーエンドです。

ストーリーの設定も展開も、とてもシンプルで分かりやすいです。まずは、この映画のテーマを大きく3つあげてみましょう。

①相手の幸せを願うつながり ―信頼関係
団員の子どもであるミリーとジョーは、ダンボのお世話を熱心にします。母ゾウから引き離されてしまったダンボの悲しさをよく分かっているのでした。なぜなら、2人とも母をインフルエンザで亡くしていたからでした。自分たちと同じ思いをさせたくないと思い、「いつもそばにいるよ」とダンボに伝え、勇気付けています。また、2人は、ダンボの幸せが母ゾウといっしょにいることであるのを分かっているだけに、「飛んで稼げば、ジャンボ(母ゾウ)を買い戻せて会えるよ」「もう1回飛んで、ジャンボ(母ゾウ)に会いに行こう」と声をかけています。

ミリーとジョーの父親であるホルトは、戦地で片腕を失い帰ってきていますが、彼自身も、片腕だけでなく、妻も失っていました。母ゾウが処分されると聞いたミリーとジョーが悲しんでいる時、ホルトは、2人の子どもにどうやって接したら良いか分からず、何もしていませんでした。彼は、ダンボに乗る空中曲芸師のコレットに「アニー(母親)ならどう言えばいいか分かっただろに。おれは口下手だから」とぼやきます。すると、コレットは「2人とも完璧な父親を必要としているわけじゃないのよ。ただ、自分たちを信じてほしいだけ」と諭します。彼は「そんな簡単なことか!?」と腑に落ちます。彼は、子どもたちに「自分が好きなものを好きになれ」「自分みたいに考えろ」という自分のやり方を押し付けていたことに気付くのです。そして、もっと純粋に子どもたちの言葉に耳を傾け、必要な時にそばにいてあげたいと思うようになります。

1つ目のテーマは、相手の幸せを願うつながりです(信頼関係)。それは、ホルトとミリーとジョーの親子愛、ホルトとコレットの友情、さらにはミリーとジョーがダンボをサーカスファミリーの一員として大切にする家族愛として描かれています。

一方、ドリームランドの社長であるヴァンデヴァーは、ミリーから「ダンボに幸せになってほしくないの?」と聞かれて、「私が幸せにしたいのは観客だ」と答えています。彼は、「ダンボは母ゾウといっしょにいる限り、母ゾウの言う通りにするだろう。動物の調教では、調教師の言うことだけを聞くように。親から放すのが第一原則だ」「動物は私の言うことだけを聞いてもらいたい」という理由で、母ゾウを処分しようとします。また、彼の恋人でもあるコレットがいざダンボに乗って飛ぼうとした時、彼は、ショーを魅力的にするとの理由で、安全ネットを撤去させてしまいます。さらに、一度雇い入れたサーカスファミリーの団員たちを、邪魔に感じるとすぐに解雇し、使い捨てにしてしまいます。彼は、損得勘定という結果を重視するあまりに、相手とのつながりというプロセスを軽視する悪役として描かれています。

②不完全さという違いにこそある強み ―リフレーミング
ダンボは、初舞台で巨大な耳が露わになった時、観客から「偽物だ」とブーイングをされてしまいます。ゾウらしくない、本物ではないと思われたのでした。このような不完全さは、戦地で片腕を失ったホルト、インフルエンザで母親を失ったミリーとジョー、もともと低身長の団長、そして何かしらの「普通」ではない他の団員たちも当てはまります。彼らは、社会の多数派が持っている価値観(主流秩序)からすると、「変わり者」「はぐれ者」「よそ者」になってしまうでしょう。しかし、彼らは、孤立せず、ファミリーとしてつながって、その違いを生かしています。ダンボの奇形の耳は、ミリーとジョーのダンボの幸せを願う気持ちによって、空を飛ぶための羽という個性として発揮され、観客を楽しませるようになります。

2つ目のテーマは、不完全さという違いにこそある強みです(リフレーミング)。相手とのつながりによって、不完全であるという弱みを強みに変えられることが描かれています。

一方、ゾウの飼育担当であるルーファスは、ゾウたちを従わせるために、殴ったり暴言を吐いたりして、怯えさせていました。彼は、新しくダンボの飼育担当になった片腕のホルトに「何かが足りないんじゃないか?」と嫌みを言い、優位に立とうとします。ルーファスは、ダンボを見て、団長に「おめでとう。このドアホ!わざわざ怪物の赤ん坊を買ったわけだ」と皮肉を言います。最後は、暴れてしまったダンボの母ゾウをさらに挑発して、倒れたサーカス小屋の下敷きになります。彼は、相手の弱みにつけ込むあまりに、そのしっぺ返しで破滅する悪役として描かれています。

③心の囚われからのひとり立ち ―自己成長
ダンボが母ゾウと離れ離れになった時、ミリーは亡き母親の形見の鍵のネックレスをダンボに見せて、「私の母さんがくれたのよ。いつか鍵のかかったドアに閉じ込められたような気がした時は、ドアを思い浮かべてこれを回すのよって」と言います。彼女は、鍵のネックレスに頼って日々の生活を送っていました。

その後、ドリームランドの火事でミリーたちが火に包まれた時、ミリーはダンボの目の前で鍵のネックレスを炎の中に投げ込みます。そして「どんなドアだって、私は自分の力で開けられる。あんたもできるよ」とダンボに言います。ダンボはもともと鳥の羽根がひらひら舞うのを目の前に見て飛ぶことができました。ダンボも、羽根に頼って、飛んでいました。しかし、その時初めて、羽根がなくても飛べるようになったのです。そして、ラストシーンでは、ダンボは、故郷のインドで、母ゾウと仲間のゾウを前にして、自由に飛び回ります。

3つ目のテーマは、心の囚われからのひとり立ちです。(自己成長)。心の囚われを自覚して、自分自身の強みを信じることで、自分で考えて行動をすることができるという心の自立が描かれています。

一方、ヴァンデヴァーは、「いいか、偉大な男や伝説の男はみな、家族を捨てねばならない」「歴史に名を残す人物になるには、ほかの連中と群れてはいかん。一人で立つんだ」と言い放っています。彼の心の囚われが表現されています。そして、彼は、相手が相手自身で考えて行動すると、自分の思い通りに相手をコントロールできなくなると怖れてもいます。最後は、思い通りに行かない腹立たしさから、自暴自棄になり、ドリームランドを火事で失ってしまいます。彼は、自分の理想や結果に囚われるあまりに、プレッシャーが過剰になり、相手だけでなく、自分自身も追い込んでしまい、破滅する悪役としても描かれています。

なぜ褒める?

ダンボは飛びました。それでは、私たちが「飛ぶ」にはどうすれば良いでしょうか? それが、褒めることです。もともと、褒めるとは、人間関係(集団)において、望ましい言動を指摘することです。そして、褒める理由は、褒められる快感(社会的報酬)により、相手に望ましい言動を促すことです(正の強化因子による行動療法)。

ただし、望ましい言動という結果を最優先にして褒めるとどうなるでしょうか? 相手をコントロールしがちになります。これは、先ほど紹介したヴァンデヴァーのやり方です。そうではありません。

褒めることにおいて最優先にするのは、相手の存在をそのまま認めることです。そして、相手が幸せになるための成長を促すことです。その結果、望ましい言動が着いてきます。これは、先ほど紹介したミリーとジョーのやり方です。つまり、優先順位は、まず「そのまま認める」、最後に「望ましい結果」です。その逆ではありません。

さらに、褒めることで得られる副産物が3つあります。1つ目は、強みを指摘されることで、相手がそれを生かすことに意識を向けて乗り気になることです(ピグマリオン効果)。2つ目は、相手の強みを見つける視点が自分自身にも向き、自分も自分の強みに気付いて前向きになることです(プラス思考)。3つ目は、相手とのつながりが強まることで、お互いに相手が素晴らしいと思えるようになることです(魅力の互恵性)。

どう褒める? ―褒めるスキル

それでは、私たちが「飛ぶ」ために、具体的にどう褒めれば良いでしょうか?

ここから、褒めるスキルを、3つのポイントに分けてご紹介しましょう。