連載コラムシネマセラピー

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【2ページ目】2019年5月号 映画「ダンボ」-なぜ飛ぶの? 私たちが「飛ぶ」には?【褒めるスキル】

どう褒める? ―褒めるスキル

それでは、私たちが「飛ぶ」ために、具体的にどう褒めれば良いでしょうか?
ここから、褒めるスキルを、3つのポイントに分けてご紹介しましょう。

①何を褒める? ―褒めるポイントの観察
ミリーはダンボが、耳を使って飛べることを発見しました。彼女の観察力は鋭く、将来の夢は、サーカスの団員ではなく、科学者です。
1つ目は、「何を褒める?」、つまり褒めるポイントを観察することです。大きく3つに分けてみましょう。

a. 会った瞬間の見た目
1つ目は、会った瞬間の見た目です。手始めであり基本中の基本です。挨拶のように褒めましょう。そのために、まずその日の最初に会った瞬間、表情、服装、声、動きなどに細かく着目します。例えば、「元気な笑顔。こっちも元気になる」「良い色のシャツ。部屋が明るくなる」「今日もテキバキしてるね」などです。たとえ望んでいない言動でも「そう来るか~」「なるほど」と受け止めて、褒めている雰囲気を出すこともできます。褒めること自体が目的なので、「いいよ、いいよ~」「さすがだわ」と独り言のようにつぶやきながら相手の後ろを素通りします。これは「つぶやき褒め」「感心褒め」と言えます。

b. これまでの成果
2つ目、これまでの成果です。これは、相手へのねぎらいや感謝などの褒める点をあらかじめ会う前から頭の中にスタンバイさせておき、会った瞬間のたびに出していくことです。「褒めの引き出し」と言えます。例えば、「昨日はありがとね。○○してくれて」などの通常の内容から、「エレベータのドアを閉めずに待っていてくれたのね」などの些細な内容までです。また、「あなたは○○だ」という直接的で断定的な言い回し(あなたメッセージ)ではなく、「あなたが○○で私はうれしい」という間接的で情緒的な言い回し(私メッセージ)をして、最後は「ありがとう」で締めます。これは「感謝褒め」と言えます。

c. これからの期待
3つ目は、これからの期待です。これは、信頼や結束の確認です。これも「褒めの引き出し」に用意できます。特に、これまでの成果として伝えられることがない場合は、これからの期待に重点を置くことができます。例えば、「あなたがいてくれると盛り上がりそう」「あなたがいると助かる」「頼りにしている」などです。これは「期待褒め」と言えます。

このように、ポイントは無条件に褒めることです。ところで、そもそも相手に褒めることがないと困っている人はいますでしょうか? そんなことはないです。ものごとには、表と裏の両面があります。一見褒められないと思っていたことも、裏を返せば、褒められることに変えることができます。発想の転換です(リフレーミング)。例えば、相手が「私、気にしすぎるんです」と相談しに来た場合です。よくある相談事です。その時は、何を気にしすぎるかを掘り下げて、最後は「だからこそ、今の仕事に向いている」「だって、観察力が鋭いってことだから」と断定します。この「だからこそ」はものごとのプラス面とマイナス面を逆転させるつなぎの言葉の力を持っています。その他の例は、表1をご参照ください。

★表1 発想の転換

なぜ褒める?

②誰を褒める? ―相手のタイプの分析
ヴァンデヴァーは、団長にサーカスの巡業が落ち目であることを指摘します。そして、団長にドリームランドの共同所有者になることで、未来が明るくなると説きます。ヴァンデヴァーは、いぶかしがる団長に、具体的なビジョンを示して、理性的に褒めています。結果的に、ヴァンデヴァーは団員も含めてサーカス団を丸ごと買収し、ダンボを手に入れます。

ホルトは、片腕であることで卑屈になり、サーカスを見に来た子どもたちが怖がるのではないかと思い悩んでいました。そんなホルトの思いを汲んで、ヴァンデヴァーは、「片腕になった戦争の英雄の馬乗り」を描いた垂れ幕をつくり、ドリームランドで馬乗りショーをする提案をします。もともと馬乗りであるホルトのくすぶっていたプライドをくすぐります。片腕は怖いネガティブものではなく、「英雄」の証というポジティブな意味付けをしたのです。これは、ホルトには思い付かなかった発想の転換です。それをわざわざ垂れ幕まで作って、一ひねりして褒めています。結果的に、ヴァンデヴァーは、ダンボの飛ばし方を聞き出します。彼は、相手がどんな人物かよく分析し、相手に合わせた褒め方をしています。

2つ目は、「誰を褒める?」、つまり相手のタイプを分析することです。相手によっては、褒めていてもあまり効果がなかったり、逆効果になっていることがあります。その原因は、相手のタイプを見抜いておらず、他の人と同じように褒めるからです。相手のタイプを分析して、こちらが褒め方を変えることが必要です。ここから、相手のタイプを4つに分けてみましょう。

a. 過剰適応タイプ
1つ目は、過剰適応タイプです。このタイプは協力的です。よって、それをこちらも率直に受け止め、感情的にそのまま褒めることが効果的です。例えば、「何か好きだわ」「理由はないけど心を許せちゃう」などです。褒めるのが簡単な相手とも言えます。

b. 不適応タイプ
2つは、不適応タイプです。このタイプは、その集団の中での役割意識や所属意識(集団アイデンティティ)が不確かなため(アイデンティティ拡散)、手強いです。「騙されないぞ」とひねくれている場合もあります。よって、感情的にそのまま褒めても素直に受け止めてくれない可能性があります。よって、理性的に理由付けをして褒めることが効果的です。例えば、「いやだってね。前にクライエントさんに○○って言ってるのをたまたま聞いて感心したんだから」とのエピソードを紹介します。また、「前回より○○の点が良くなったから」と過去との比較をすることです。

また、集団の役割意識をこちらがお膳立てして、ヒーローに仕立て上げるのも効果的です。例えば、「あなただからできる」「あなたにしかできない」「あなたにぴったりの仕事」「○○の仕事と言えばあなたね」などです。さらには、「あなたは○○をがんばっている」「できないわけがない」と決め付けるワザもあります。これは、「レッテル褒め」(ピグマリオン効果)と言えます。そして、最終的には「あなたが必要」という結論に持って行けます。

c. 受け身タイプ
3つ目は、受け身タイプです。このタイプは、何をして良いかよく分かっていないことが多いです。よって、具体的にピンポイントで褒めることが効果的です。例えば、「あなたの○○はすごい」と限定することです。すると、その点をもっと続けようと動機付けされます。逆に、「あなたはすごい」と全肯定して伝えてしまうと、受け身のやり方自体が肯定されたと思い込み、積極的にやろうとする努力を怠るため、注意が必要です。

d. 積極的タイプ
4つ目は、積極的タイプです。このタイプは、すでに本人なりに考えて行動しています。よって、その考えを汲み取った上で、あえて一ひねりして間接的に褒めることが効果的です。例えば、「どうやって思い付いたの?」「うまく行く秘訣を教えて?」と質問をすることです。これは、「質問褒め」(暗示的インタビュー法)と言えます。

また、「○○さん(上司)がしっかりしてるって感心してたよ」「○○さん(取引先)から気遣いが行き届いてるって話してたの小耳に挟んだよ」とその人が尊敬している人や権威的な人に登場してもらい、その人の言葉を借りて褒めることです。これは、「権威褒め」と言えます。
さらに、「あなたのやり方を後輩が学びたいと言っている」「○○さん流を新人に広めてくれるといいな」「あなたの言うことは新人に響く」などのように、次世代への影響力をほのめかすことです。これらは、より多くの人に評価されていることが伝わり、こちらが単独で褒めるよりも一層の社会的報酬の効果が高まります。

「あなたの後輩はしっかりしてるわ。あなたは教えるのがうまいのね」「息子さん礼儀正しいわね」などのように、相手の所属や家族を褒めることも、所属意識(集団アイデンティティ)や子ども自慢(トロフィーキッズ現象)の視点から効果があります。

「あなたが本気になったら、患者さんの人気は独り占めね」「あなたはトップまで上り詰める勢いあるわ」というもしも話(仮定法)も、さきほどの決め付けワザ(ピグマリオン効果)に通じて、効果があります。これは、「仮定褒め」と言えます。

以上のタイプをグラフ1にまとめてみましょう。グラフの横軸は、周りに合わせすぎる過剰適応タイプか、周りに合わせにくい不適応タイプかを示しています。縦軸は、自分なりの考えを持つ積極的タイプか、自分なりの考えを持たない受け身タイプかを示しています。真ん中は、癖がない平均的な普通タイプになります。

すると、右上は過剰適応で積極的な優等生タイプ(ヒーロータイプ)、左上は不適応で積極的なヤンキータイプ(スケープゴートタイプ)、右下は過剰適応で受け身なお調子者タイプ(ピエロタイプ)、左下は不適応で受け身なひきこもりタイプ(ロストチャイルドタイプ)にそれぞれ分けられます。
ここで誤解がないようにしたいのは、お調子者タイプは、積極的に思われがちですが、あくまでそれは笑いや周りへのウケに対してです。逆に、周りが見ていなければサボり癖が出てきます。つまり、仕事に対しては受け身であると言えます。

★グラフ1 相手のタイプによる褒め方の違い

③あえて褒めない? ―褒めない状況の調整
サーカス団の団長は、大人数の団員たちをとりまとめるため、調子の良いことを言いつつ、時に彼らに厳しく接し、バランスを取っています。

3つ目は、「あえて褒めない?」、つまり褒めない状況を調整することです。あえて褒めない状況をつくることによって褒めることを最大限に高めるという高度なスキルになります。ただし、団長と団員たちのように、信頼関係がもともとあることが大前提です。ここから、褒めない状況を3つに分けてみましょう。

a. 褒める前後の状況
1つ目は、褒める前後の状況であえて褒めないことです。例えば、褒める前に不愛想になったり不機嫌になったりして、あえて冷たい態度をとり、相手を不安にさせることです。そして、その直後に褒めることです。また、「あなたの時間にルーズなのは困るけど、仕事はきっちりするのよね」「覚えるのに時間はかかるけど、いったん覚えると絶対に忘れないよね」と良い点と悪い点のコントラストを付けることです(両面提示)。そうすることで、その褒めの部分のインパクトを大きくします。逆に、褒めた後に「褒めすぎたよ。今のは忘れて」とあえてつっけんどんにすることです。人間は、忘れようと思うと逆に忘れられなくなるという心理(禁断的思考)を利用します。これは、「ツンデレ褒め」と言えます。

b. 気まぐれの状況
2つ目は、何回かに1回の気まぐれの状況であえて褒めないことです。大きく2つの理由があります。1つは、褒められる時に褒められないことがあると褒められたいという気持ちがより高まるからです(変率強化)。この起源は、原始の時代、狩猟をしている私たちは獲物を惜しくも逃した場合にもうちょっとがんばってみようという気持ちを高めたことです。そして、そういう遺伝子を持つ種が、獲物を仕留めて、より生き残りました(ギャンブル脳)。それが、現在の私たちです。もう1つは、正確に褒めないことで見くびられなくなるからです。逆に言えば、正確に褒めてしまうと、残念ながら見くびられやすくなります。分かりやすく言えば、それはロボットだからです。

もちろん、相手とのつながりによって、見くびられるということがないようにするのが一番良いです。しかし、相手も人間です。つながりはありつつも、見くびる人はいます。時々、虫の居所の悪いフリをしてでも、「精巧なロボット」ではなく「生身の人間」であると印象付けるのも効果的であるということです。これは、「気まぐれ褒め」「ギャンブル褒め」と言えます。


c. 誰かが代わりに褒める状況
3つ目は、誰かが代わりに褒める状況であえて褒めないことです。例えば、同僚や友人などの信頼できる人に、「○○さん(自分)が褒めてた」と言わせます。すると、褒められたことが集団に広まっていることをほのめかすことができて、本人の社会的報酬がより満たされるからです(ウィンザー効果)。これは「三角褒め」と言えます。恋愛における三角関係の「三角」が語源です。

★表2 褒めるスキル

褒めるとは?

「何を?」「誰を?」「あえて褒めない?」というポイントを通して、褒めるスキルをご紹介しました。ここから分かることは、うまく褒めることができるかどうかは、相手の問題ではなく、自分の問題であることに気付きます。つまり、褒めるとは、相手に褒めることがあり、なおかつこっちが褒めたい時に褒めるのではないです。たとえ相手に褒めることがないと最初に思ったとしても、相手の存在をそのまま認めることで、褒めることを見いだしていくことです。その必要や責任は自分にあると自覚することです。

このように、褒めることの意味をよく理解したとき、ダンボとは、まさに人間性の本質のシンボルであることに私たちは気付かされます。ダンボのように、私たちも、誰かとのつながりという「心の燃料」をまず燃やし続けることで、不完全であるという弱みを強みに向き変える「心の操縦桿」を働かせ、心の囚われから解放されて、より自由に「飛ぶ」ことができるのではないでしょうか?

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参考文献

1)ディズニーシネストーリー「ダンボ」:カリ・サザーランド、講談社、2019
2) ネガポ辞典:ネガポ辞典制作委員会、主婦の友社、2012
3)すごい!ホメ方:内藤誼人、廣済堂文庫、2007
4)上司のちょっとした言い回し:吉田幸弘、ダイヤモンド社、2013