連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【2ページ目】2012年10月号 アニメ「ちびまる子ちゃん」性格(パーソナリティ)とは?

【女子】

まる子―愛されキャラ―依存性パーソナリティ

主人公のまる子は、面白いことに好奇心があり、楽天的です。みんなに気に入られ、愛される魅力的なキャラクターです。はまじとはお調子者同士でよく似ており、気も合うようですが、まる子は、はまじほど積極的ではありません(受身)。

しかし、要領が良い分、甘え上手、お願い上手で、だらしない面がたくさんあります。例えば、おじいちゃん大好きっ子で、おじいちゃんにはよくおねだりをします。また、お姉ちゃんには「まる子の一生のお願い、これで17回目だよ」と言われたり、お父さんに「お前の一生は何回あるんだ」と突っ込まれるなど、まる子は一生のお願いを連発しています。飽きっぽくて怠け癖があり、よく朝寝坊をして、遅刻ぎりぎりセーフでいつも学校に通っています。すぐにいらないものを買うなどお金の浪費癖も目立っています。

このようなだらしなさは、見通しが甘く(無責任)、人を当てにして(主体性がない)、生きてしまうリスクがあります(依存性パーソナリティ)。まる子の家族(おじいちゃんを除く)は、まる子を気安く助けないようにしていますが、これは、とても良いコミュニケーションのコツと言えます。

★表 まる子の二面性

たまちゃん―しっかり者キャラ―共依存

まる子と大の仲良しなのは、たまちゃんです。彼女は、ピンチになるまる子をいつも全力で助けてくれます。例えば、まる子が言いたいことをついはっきり言ってしまい、みぎわさんや前田さんとやり合った時、ハラハラしながらも仲直りさせようとします。また、まる子ができ心からカンニングをして、その後ろめたさからみんなに打ち明けようとすると、たまちゃんはまる子に「絶対に言っちゃだめ」「言ったら絶交だからね」と言います。そして、心の中で誓います。「私はまるちゃんをかばうよ。どんなことがあってもかばう。絶対にみんなから責められたりしないようにするよ」と。まる子がたまちゃんに頼りがちなだけに、たまちゃんは、いつもまる子を放っておけなくなります。

実は、たまちゃんのようなしっかり者が、そのしっかりしている力を発揮するには、周りにだめな人がいてくれる必要があります。将来的には、だめな人を放っておけない、自分を頼ってくれるだめな人を探し求めてしまうお節介屋さんになる可能性もあります。頼られることに頼る、つまり必要とされることを必要とするようになり、相手も自分もだめにしてしまうリスクがあります(共依存)。

たまちゃんは、なぜこんなにしっかり者なのでしょうか?その答えは、たまちゃんのお父さんの存在にありました。たまちゃんのお父さんは、カメラマニアで、「何でも記念を写真に撮っておきたい」というこだわりが強く、相手の気持ちを汲み取る心(心の理論)が鈍いようです(発達の偏り)。シャッターチャンスを逃すまいとしてしょっちゅう常識外れな行動に走ります。「風邪で苦しんでいる自分の記念だ」と自分で自分の写真を撮るほどのこだわりがあります。ですので、周りに風変わりに思われることが多々あり、たまちゃんに世話を焼かせ、困らせています。

たまちゃんは、将来的には、自分には恥ずかしい父親がいるという引け目から、よりいっそうとしっかり者になって、人の役に立つ仕事(対人援助職)に就くのではないかでしょうか?

★表 たまちゃんの二面性

みぎわさん―思い込みキャラ―妄想性パーソナリティ

みぎわさんは、洋服、持ち物、好きなもの全てが乙女チックで女の子らしく、学級委員を務める優等生です。そして、とにかく花輪クンのことが大好きです。花輪クンのことにはつい敏感になってしまい、彼に優しい言葉をかけられただけで、気に入られていると思い込み、大喜びしてしまいます(被愛妄想)。逆に、クラスの女子が花輪クンと仲良く話していると、「花輪クンを狙っているでしょ!」と詰め寄り、嫉妬心を燃やします (嫉妬妄想)。授業中に、まる子がクラスメートの女子から受け取る手紙を、たまたま花輪クンが回してくれた時、それを見たみぎわさんは花輪クンがまる子に手紙を渡したと思い込み、大激怒します。そして、みぎわさんはまる子に「放課後、話をつけましょう。体育館の裏で待ってるわ」と書いた手紙を渡すのでした。

みぎわさんの思い込みの激しさは二面性があります。疑い深く嫉妬深くて、妄想癖があるために、花輪クン以外のクラスメートには、ヒステリックで高圧的になっていくリスクがあります(妄想性パーソナリティ)。一方、彼女は、思いこんだら一直線のエネルギーを持っているとも言えます。このエネルギーを用心深さ、勘の良さ、対抗心、想像力の豊かさに有効活用することもできます。

みぎわさんの「暴走」に対して、花輪クンは、はっきりしたことを言わず(中立)、心の間合い(心理的距離)をとって、巻き込まれないようにしています。これが、まさにコミュニケーションのコツと言えます。

★表 みぎわさんの二面性

前田さん―怒りんぼ泣き虫キャラ―情緒不安定性パーソナリティ

登場回数は少ないわりに強烈な印象を残すのが、前田さんです。彼女は、掃除係で、掃除にかける思いは熱くて良いのですが、気が強く、掃除を盾に威張り散らすことが多いです。そして、挨拶代わりに文句を言って威圧して、周りに気を使わせます。人に指図することも多く、大晦日に通りすがりのまる子に荷物を持たせたこともありました。

彼女の最大の特徴は、相手に言うことを聞かせるためにすぐに怒り出すことと、逆に反撃され、行き詰り追い込まれるとすぐに泣き出すことです(衝動性)。大激怒して散々まる子たちを困らせたあと、自分が困ったら今度は大号泣するのです。そして、泣くことで、相手から手助けや譲歩を引き出し(操作性)、問題が解決すると、ケロっと泣きやみ、また威張り散らし始めるのです。また、「私に味方はいない」と漏らし、相手は敵か味方かという発想が強いようです(スプリッティング)。

このように、すぐにかっとなったり、すぐに泣き出したりする行動パターンを繰り返していると、感情が揺れやすいことが本人の生き様になり、人間関係で苦労するリスクが高まります(情緒不安定性パーソナリティ)。一方で、この心の様は、感受性の豊かでもあり、このエネルギーを文学や音楽、演技力などの芸術センスに生かすこともできます。コミュニケーションのコツは、本人の感情の揺れに振り回されないように、近付きすぎずにやはり一定の心の間合い(心理的距離)が大切になります。

★表 前田さんの二面性

野口さん―ミステリアスキャラ―統合失調性パーソナリティ

野口さんは、一見、無表情、無口のネクラでひっそりしていて、クラスの中で陰が薄いです。しかし、「クックックッ」という笑い声や、「しーらない」「言えやしないよ」と低いフラットなトーンの口癖は独特です。しかも、実は、かなりのお笑い好きで、「お笑いは、まず身近な所から見つけていこうね」と言い、しょっちゅう何かしでかすまる子の様子を、電柱の陰から密かに伺うなど、神出鬼没な一面もあり、かなり強烈な印象があります。まる子が前田さんにからまれ、何とか切り抜けた後に、野口さんはまる子に「これからも前田さんのことは、温かく見守っていこうね」「あ、またそろそろ泣くぞ」とボソっと告げるなど超越した視点を持っています。

野口さんの特徴は、家族や友達との親密さを求めず、周りと距離を取ろうとする一匹狼キャラであることです。音楽の歌のテストの時には、壇上に出て「歌いたくありません」ときっぱり拒否をするエピソードもあります。ミステリアスで孤高でマイペースな一方、奇妙に思われて孤立して、社会生活が送りづらくなるリスクもあります(統合失調性パーソナリティ)。本人のペースを尊重しつつ、必要な時は社会との橋渡しをしてあげることがコミュニケーションのコツと言えます。

★野口さんの二面性

【まとめ】

個性 ―パーソナリティの偏り

これまで、ちびまる子ちゃんの代表的で個性的なキャラクターたちを見てきました。彼らをより良く知ったことで、さらに彼らが私たちの身近な誰かに重なったり、または自分自身に重なってしまったりはしていないでしょうか?

実は、彼らの特徴は、傾向やリスクとして、メンタルヘルスで扱うパーソナリティの偏りをほぼ全てカバーしているのです(表)。

★表 メンタルヘルスで扱うパーソナリティの偏り

ちびまる子ちゃんの友達関係―社会の縮図

その他のクラスメートとして、リーダーキャラの大野君と杉山くん、お嬢様キャラの城ヶ崎さん、おバカキャラの山田、口癖キャラのブー太郎、胃弱キャラの山根、食いしん坊キャラの小杉などがいます。彼らを加えると、ちびまる子ちゃんたちがコミュニケ―ションを織りなし繰り広げる教室は、まさに私たちの社会の縮図です。

ちびまる子ちゃんのキャラクターたちをヒントとして、実生活での相手のことをよく知り、同時に自分自身のことをよく知り、そして、相手と自分の関係性を見つめ直すことに生かすことができるのではないかということです。コミュニケーションにおいて、相手がどんな人なのかというパーソナリティの傾向を踏まえた上で、その魅力の裏にある危うさ(リスク)を想定して接するのと、そうでないのでは、心の余裕は全く違ってしまいます。

ちびまる子ちゃんの作品を通して、人の個性の魅力と危うさという二面性をより良く知っていくことで、私たちの人生はより豊かになっていくのではないでしょうか?

※参考図書
「ちびまる子ちゃん大図鑑」(扶桑社)
「ICD-10(精神および行動の障害、臨床記述と診断ガイドライン)」(医学書院)
「DSM-IV-TR(精神疾患の分類と診断の手引)」(医学書院)


>>【続編】その教室は社会の縮図? エリート教育の危うさとは?【社会適応能力】