連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【1ページ目】2022年8月号 ドラマ「ドラゴン桜」【前編】なんでそんなに東大に入りたいの? 学歴ブランド化の不都合な真実とは?【教育ビジネス】

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・東大ブランド
・知能の高さ
・性格の望ましさ
・シープスキン効果
・学歴ブランド化
・学歴階級社会
・学歴インフレ
・教育ビジネス
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みなさんは、学歴にこだわりますか? 自分の子どもをなるべく高学歴にさせたいと思いますか? ただ大卒であるだけでなく、有名大卒にさせたいですか?

その象徴として、東大があります。それでは、あえて考えてみましょう。なぜ東大に入りたい(入れたい)のでしょうか? 学歴へのこだわりは、個人の自由かもしれませんが、社会としてはどうでしょうか?

これらの答えを探るために、今回は、ドラマ「ドラゴン桜」を取り上げます。このドラマに登場する桜木先生の発言を通して、学歴ブランド化の問題点を明らかにして、その不都合な真実に迫ります。

なんで東大に入りたいの?

舞台は、いわゆる教育困難校。主人公の桜木は、元暴走族上がりの弁護士で、一風変わった受験コンサルタントです。このドラマは、彼の方法論によって、もともと勉強が好きではなかった生徒たちが次々と東大に合格していくというサクセスストーリーです。

ある学校の職員会議で、教頭先生が言い出します。「この経営難を脱却するには・・・東大合格者の輩出です」「日本最高学府のトップである東大合格者を複数人出せば、わが学園の名は全国的に広まることでしょう」「東大ブランドにあやかり生徒数を増やす。これしか生き残るすべはありません」と。そして、桜木先生が招かれていくという展開です。

まず、東大に入りたい(入れさせたい)一番の理由は、東大ブランドが手に入るからであることが分かります。このブランドによって、出身高校は有名になるというアドバンテージを得ることができるわけです。そして、何より、本人がその後により良い仕事、より良い収入という人生のアドバンテージを得ることができると考えられているからです。

もちろん、東大に入りたい他の理由として、「東大に入ってあの先生の講義を受けたい」「この研究をしたい」などがあります。これらは、東大での教育そのものを理由にしていますが、けっして多数派ではありません。その理由として、東大生の多くが、入学後にはなるべくスムーズに単位を取って卒業するかに重きを置いているからです。

東大ブランドが証明するものは?

それでは、東大ブランドによって、なぜより良い仕事、より良い収入が得られるのでしょうか? ここから、東大ブランドが証明するものを、主に2つあげてみましょう。

①知能の高さ

ドラマでは、たびたび偏差値というワードが飛び交います。そして、東大は、学力偏差値が最も高い大学であることから、最も優秀な人が集まるところとされています。

1つは、知能の高さ(認知能力)です。ちなみに、東大に合格するために必要な知能指数(IQ)は120以上と言われています。

②性格の望ましさ

もう1つは、性格の望ましさ(社会適応能力)です。その望ましさとは、主に真面目さと協調性です。よって、真面目さの資質を測るために、受験科目は多ければ多いほど良いです。そして、協調性の資質を測るために、大学の授業はむしろ難解で癖があればあるほど好都合です。なぜなら、それでも適応できる性格であることを証明できるからです。逆に、受験科目を減らしたり、分かりやすい授業をするなどの革新的なことをやりすぎてしまったら、真面目さや協調性が測れなくなってしまう点で、そのブランドの価値を下げてしまうでしょう。だからこそ、伝統と実績が強調されるのです。

この点で、東大を中退する人は、東大に見切りをつけて自分で起業するくらいとんでもなく仕事能力の高い人か、逆に東大の教育環境についていけないくらい実は仕事能力の低い人という両極端の評価をされてしまいます。この点で、東大ブランドは、知能テストだけでは代用できないことが分かります。