連載コラムシネマセラピー

私達の身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション(心理学)メンタルヘルス(精神医学)婚活(恋愛心理学)を見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【1ページ目】2019年8月号 絵本「ZOOM」「RE-ZOOM」-どうキレキレに冴え渡る?【マインドフルネス】

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・体感
・五感
・俯瞰
・集中力(注意の集中)
・注意力(複雑性注意)
・マインドレス
・デフォルトモード
・「禅病」
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みなさんは、何となくどんよりともやもやしたり、いらいらして、仕事が進まなくて困ったことはありませんか? どうしたらキレキレに冴え渡ることができるでしょうか? なぜ冴えないのでしょうか? そもそも、なぜ冴えは「ある」のでしょうか? 逆に、冴えて困ることはないでしょうか?

これらの答えを探るために、今回は、子どもの絵本「ZOOM」とその続編「RE-ZOOM」をまとめて取り上げます。「シネマセラピー」のスピンオフバージョン、「絵本セラピー」としてお送りします。

この絵本の1ページ目には、いきなりどアップの赤い模様が目に入ってきます。何かと次のページをめくると、ニワトリを見ている子どもたちが目に入ってきます。ここで、赤い模様はニワトリのとさかであることが判明します。さらに次のページをめくると、人形セットで遊ぶ女の子が目に入ります。ここで、さっきの子どもたちは人形セットの一部であることが判明します。こうして、ページをめくるたびにズームアウトしていくという構成です。

「ZOOM」は、子どもの絵本と言えども侮れません。この本からメンタルヘルスの、あるエッセンスを学ぶことができます。それは、マインドフルネスです。マインドフルネスは、今や、メンタルヘルスの分野だけでなく、職場や教育現場にも広く取り入れられている最新のセルフセラピーです。

それでは、「ZOOM」を通して、マインドフルネスの理解を深めましょう。そして、冴えるスキルを手に入れましょう。

どうしたら冴えるの?-マインドフルネス

まず、どうしたら冴えるでしょうか? その答えが、マインドフルネスです。マインドフルネスとは、ざっくり言えば、意識(マインド)が研ぎ澄まされて満たされた状態(フル)にあるという意味です。それでは、そうなるために、具体的にどうすれば良いでしょうか? ここから、「ZOOM」に絡めて、マインドフルネスを、3つのステップに分けてご紹介しましょう。

①体感でズームイン-体感に注意を向ける
「ZOOM」は、ページを後ろから逆にめくっていくと、ズームインしていくことに気付きます。すると、最後に、1ページ目のニワトリのとさかをズームインして間近で見ることになります。

1つ目は、体感でズームイン、つまり体感に注意を向けることです。まず自分の呼吸に注意を向けます。息を吸うとお腹が膨らみ、息を吐くとお腹がへこむ感覚に気付くでしょう。ちなみに、マインドフルネスを行うタイミングは、いつでも良いです。座っている時でも歩いている時でも良いです。もっと言えば、通勤途中、仕事の最中、歯を磨いている時、今この記事を読んでいる時でももちろん良いです。スーパーのレジ待ちの時や、上司から説教されている時はなお良いでしょう。マインドフルネスの良さは、特別な時間と場所が必ずしも必要ではないことです。今この瞬間、この場所で行うことができます。

さらに、足先にも注意を向けます。すると、足がソックスに触れている感覚に気付くでしょう。歩いているなら、足の裏が床や地面に吸い付いていく感覚に気付くでしょう。そして、足先から、足の付け根、さらには手先、肩、体幹、さらには心臓の鼓動へと注意を向ける部位を増やしていきます。

このように、体のそれぞれの部分の体感への注意を繰り返し向けることで、意識を研ぎ澄ましていきます。CTスキャンならぬ「ボディスキャン」です。

②五感でズームアウト-五感に注意を向ける
「ZOOM」は、最後のページまでめくると、暗黒の宇宙にぽつんと小さく浮かぶ地球が目に入ります。子どもの絵本にしては、壮大な結末です。

2つ目は、五感でズームアウト、つまり五感に注意を向けることです。まず、聞こえてくる音や声に耳を澄まします。たとえ目の前の上司の怒鳴り声や金切り声が聞こえていたとしても、同時にそれ以外の音にも注意を向けます。すると、エアコンや換気扇の音に気付くでしょう。遠くの話し声や車の走り去る音にも気付くかもしれないです。なお、まず聴覚に集中するために、いったん目を閉じても良いでしょう。
次に、周りにゆっくり目を向けます。目の前だけでなく、視界いっぱい、天井の四隅を見る感覚です。すると、近くにいる人の表情や天井や壁の模様までも気付くでしょう。外を歩いている時なら、日の光、木の葉のゆれ、風の通りに気付くでしょう。五感の中で、視覚よりも聴覚を先にするのは、視覚刺激の方が強いだけに、その刺激で心乱れるのを避けるためです。

さらに、体を動かして、または体を動かしている時は、その動きに注意を向けます。すると、空気や重力などの身体感覚に気付くでしょう。食べたり飲んだりしている時は、なめるように味わうと、ふだん気付かなかった何気ない味にも気付くでしょう。

このように、聴覚、視覚、触覚、味覚、嗅覚などの五感への複数の注意を繰り返し向けることで、意識を研ぎ澄ましていきます。なお、触覚については、体感との連続性があるため、前章の「体感でズームイン」にも登場させています。

③俯瞰で「リ・ズーム」-俯瞰して視点を増やす
「ZOOM」「RE-ZOOM」は、ページをめくるたびに、前提(フレーム)が変わります。絵本の枠(フレーム)を俯瞰しているはずの私たちの思い込みを裏切り続けます。そうすることで、私たちに気付きを与えてくれます。

3つ目は、俯瞰で「リ・ズーム」、つまり俯瞰して視点を増やすことです。例えば、「こいつ(上司)、むかつく!」とふと思い浮かんだとしても、その後に「と思った」「と考えた」と頭の中で付け加えることです。すると、「むかつく」という感情から少し距離が置かれることに気付くでしょう。さらに、主語を「自分」「私」ではなく、自分の憧れる人の名前を拝借したり、自分で気に入ったキャラクターネームをつくることです。例えば、「ズーム・マスター」と名乗って、「とズーム・マスターは考えた」と付け加えます。すると、当事者ではなく、第三者の視点として俯瞰している感覚に気付くでしょう。

一方、相手の上司は、「こいつ」ではなく、例えば「かぼちゃさん」とニックネームを付けることです。ネーミングのポイントは、野菜やフルーツなど、本人に似ていて、ヘルシーでコミカルな響きやイメージがあることです。逆に言えば、怖かったりネガティブな名前は、感情的になりやすいため、避けた方が良いです。このように、現実を、まるでロールプレイングゲームのキャラクターたちの世界観に仕立て上げることです。その瞬間に、好きなテーマソングを頭の中に流しても良いでしょう。思っている言葉は、ロールプレイングゲームのナレーション風にアレンジしても良いでしょう。すると、その世界をそのまま冷静に受け止めていることに気付くでしょう。

さらに、これまでの取り組みにより、ネガティブな感情が不活性化し、心がニュートラルになっているなら、次のステップに進みます。それは、ネガティブな言葉の後に、「にもかかわらず」「だとしても」「逆に」という接続詞をあえて入れることです。すると、その後には、「がんばれている」「大丈夫」「それだけ勉強になった」などのポジティブな言葉が浮かんでくるでしょう。
最終的には、「幸せでありますように」という思いを唱えます。その対象は、まず自分、それから家族、友人、同僚、そして通りすがりの知らない人、最終的には、憎んでいる人にもです。「許さない」「一生、恨んでやる」などの激しい怨念を抱く相手にさえ、「ありがとうございました」「あなたも幸せでありますように」とあえて丁寧に唱えて、そのまま俯瞰することです。すると、その相手を許す気持ちが出てくればくるほど、寒々とした気持ちが温かい気持ちに変わり、自分の心の平安が得られることに気付きます。この取り組みは、相手のためではなく、自分のために行うものであることに気付きます。

このように、あえてポジティブな複数の視点を繰り返し発想することで、感謝や思いやりの心の脳内シェアを最大化し、意識を満たしていきます。相対的に、悲しみや恐怖、そして怒りの脳内シェアは最小化されていくというわけです。

なお、マインドフルネスは、セラピーの1つである認知行動療法の最新バージョンと呼ばれています。さらに、そのまま受け止める点で、森田療法の「あるがまま」にも通じています。自分に語りかける点で、自律訓練法の自己暗示にも通じます。神経を研ぎ澄ます点で、ヨガにも通じています。そして、感謝や思いやりを扱う点で、仏教の慈悲やキリスト教の隣人愛に通じています。つまり、マインドフルネスは、統合的なセラピーとも言えそうです。