【1ページ目】2013年7月号 ドラマ「泣かないと決めた日」フレネミーとは?

「裏切られた!」

みなさんは、友達だと思っていた人に、「裏切られた!」と思ったことはありませんか?そして、残念で悔しくて、怒りがこみ上げてきたことはありませんか?

昔から、そういう偽りの友達はいました。そういう人たちは、最近ではフレネミーと呼ばれています。これは、フレンド(友達)とエナミー(敵)を重ね合わせた英語の造語から来ています。

今回は、このフレネミーをテーマに、2010年のテレビドラマ「泣かないと決めた日」を取り上げます。主人公は、新入社員として夢と希望に胸を膨らませて、憧れの大企業に入社します。ところが、その職場では、理不尽ないじめが彼女を待ち構えていました。さらに追い打ちをかけたのは、最初に助けてくれていた同期の友達の裏切りです。次々と可哀想すぎるシーンが続き、見ている私たちまでも辛くなります。しかし、彼女は最初にくじけそうになりましたが、やがて持ち前の強さで這い上がります。そして、彼女が職場の雰囲気を変えていくのです。

このドラマでは、様々な人の心の動きが描かれています。そして、根本的な疑問が湧いてきます。それは、「なぜ人は信じるのか?」、そして「なぜ人は裏切るのか?」です。

これから、これらの心理を、新しい科学の分野である進化心理学の視点から解き明かします。そして、私たちはフレネミーからどう身を守ればよいのかをいっしょに考えていきましょう。

助ける心理―協力(利他性)

助ける心理―協力(利他性)

主人公の美樹は、入社式から同期の万里香と仲良しになり、信頼します。同じ携帯のストラップを見せ合い、友情を確認し合います。同じ境遇を分かり合い、助け合おうとしています。実際に、その後、美樹が同僚からの嫌がらせで残業を押し付けられた時は、万里香は同情し手伝ってくれていました。

私たちは、このような助け合いの精神を当たり前のことだと思っています。しかし、そもそもこのような助ける心理(利他性)は、なぜ沸いてくるのでしょうか? 1つは、私たちは子どもの頃からそう教えられてきたという文化の要素があげられます(環境因子)。もう1つは、私たちはそういうふうに振る舞うように遺伝子にプログラムされている、つまり心の進化の要素です(個体因子)。

ヒトは、700万年前にチンパンジーと共通の祖先と別れて進化してきました。そして、3、400万年前にアフリカの森から草原へ出て、その後に100人くらいの閉鎖的な集団をそれぞれ作り、長期間、協力して生き延びてきました。つながろうと強く思う種の多い共同体が子孫を残してきたわけです。つまり、ヒトの心の進化の最大の特徴は、つながりの心理(社会性)です。ここから、さらに様々な心理が芽生え、つながるための動機付けが起こりました(表1)。例えば、「好き」という好意や「かわいそうに」という同情は、助ける心理を動機付けます。「ありがとう」という感謝は、その言葉を伝えることや実際のお返しを動機づけます。だからこそ、つながりの心理が、理性的な単なる損得勘定だけではなく、情緒的なつながりの強さをもとにしていると私たちが実感できるのです。

こうして、助け合い、伝え合い、文化や文明を進歩させてもきたのでした。そして、現在まで、この心理は、私たちが普遍的に直感する正しさとしての道徳心(モラル)や倫理観の土台になっています。

★表1 様々な心理とつながりの動機付け