【2ページ目】2018年5月号 映画「アメリカン・スナイパー」なぜトラウマは「ある」の? どうすれば良いの?
なぜトラウマは「ある」の?
なぜトラウマになるのでしょうか? それは、クリスのように戦地で死にそうになったり、目の前で人が死ぬなど重度ストレスがあるからです。それでは、そもそもなぜトラウマは「ある」のでしょうか? そのメカニズムを大きく3つに分けて、進化精神医学的に考えてみましょう。
①危険に備える
約5億年前に誕生した魚類は、天敵などの危険に警戒する扁桃体を進化させました。重度ストレスとなる大きな危険を体験した後は、同じように危険な目に遭っても逃げられるように、易刺激性や警戒心など常に交感神経が亢進した過覚醒が出現するようにようになったと考えられます。
つまり、トラウマの症状である過覚醒は、その危険に備えるために必要なメカニズムだから、「ある」と言えるでしょう。
②危険を避ける
約2億年前に誕生した哺乳類は、生まれてからより多くの記憶の学習をする脳を進化させました。重度ストレスとなる大きな危険を体験した後は、同じように危険な目に遭わないように、フラッシュバックや悪夢など繰り返しその時の状況を疑似体験できる侵入症状が出現するようになったと考えられます。
つまり、トラウマの症状である侵入症状は、その危険を避けるために必要なメカニズムだから、「ある」と言えるでしょう。
③危険に染まる
約700万年前に誕生した人類は、その後に森から草原に出て、協力するために集団に合わせる脳を進化させました(社会脳)。重度ストレスとなる大きな危険を体験した後は、同じような危険な目に遭っても、感情麻痺やサバイバーズギルトなどのように、取り乱さずに集団のために役に立とうと順応する陰性症状が出現するようになったと考えられます。ただし、PTSDから二次的に併発したうつ病の症状は、陰性症状とは別に分けて考えます。
つまり、トラウマの症状である陰性症状は、その危険に染まるために必要なメカニズムだから、「ある」と言えるでしょう。
