【2ページ目】2025年4月号 海外番組「セサミストリート」【続編・その1】実はこだわりは能力だったの!?だから男の子に多いんだ!―自閉症の機能
なんで自閉症になるの?
自閉症は、コミュニケーションがうまくできない、こだわりが強すぎるという症状があることが分かりました。それでは、なぜそうなるのでしょうか?
その答えは、胎児期に男性ホルモンが多すぎていたからです。これは、胎児期アンドロゲン仮説と呼ばれる有力な原因仮説です(*2)。アンドロゲンとは、男性ホルモンの総称です。その代表が、テストステロンです。もともと胎児のデフォルトは女性です。遺伝的に男性の場合は、胎児期に自らのY染色体の発現によって精巣からこの男性ホルモンを分泌して(ホルモンシャワー)、体と心(脳)を男性化させていきます。その量が多すぎるのが自閉症の原因だと言うことです。
実際の研究では、妊娠6か月時に採取した羊水中の男性ホルモン濃度が高ければ高いほど、4歳時と8歳時のそれぞれの共感性の指数が低くなり、システム化の指数が高くなるという結果が出ています(*1)。これは、自閉症形質の発現を意味します。
また、薬指の長さに対する人差し指の長さの比較(指比)の研究では、一般女性→一般男性→自閉症の人(男女とも)の順に人差し指が短くなっていくことが確かめられています(*3)。これは、胎児期の男性ホルモン濃度が高くなっていく順番と同じです。なお、自閉症は男女とも人差し指が同じくらい短くなることから、自閉症の発症には胎児期の男性ホルモンが相当影響していることが示唆されます。
実際の臨床でも、胎児期に先天的に男性ホルモン(厳密にはテストステロンではなくデヒドロエピアンドロステロン)濃度が高い病態(先天性副腎過形成症)では、男女ともに顕著に人差し指が短くなっていることが確かめられています。そして、システム化の指数が高くなるという結果が出ています(*4)
逆に、胎児期に男性ホルモン(テストステロン)濃度が低い病態(クラインフェルター症候群、アンドロゲン不応症)の男性は、人差し指が長くなっていることも確かめられています。
さらに、自閉症の男性の精通の時期は平均よりも早くなる一方、自閉症の女性の初潮は平均よりも遅くなることも分かっています(*2)。逆に、自閉症の人はオキシトシン濃度(女性ホルモン)が平均を下回っていることも分かっています(*2)。オキシトシンは「絆ホルモン」とも呼ばれ、これが少ないと人とのコミュニケーションへの動機づけ(共感性)が低くなります。
さらに、脳の画像研究においては、一般的に女性よりも男性の方が脳の非対称性が大きいことが分かっていますが、自閉症の人はその非対称性がさらに大きくなっていることも分かっています(*5)。
以上より、自閉症とは、男性的な脳機能が過剰になった状態、つまり超男性脳とも呼ばれています。そして、だからこそ自閉症は男の子(男性)に多いのです。実際に自閉症の80%は男性です。ちなみに、ジュリアは、女の子の設定になっています。この多様性の時代、発症率が低い女の子(女性)をあえて自閉症のキャラクターにしたのでしょう。
定型発達においても、システム化は、明らかに女の子よりも男の子が高いです。例えば、男の子(男性)は、乗り物、仕組み(ルール)、戦い(スポーツ)、勝ち負けなど、ものや結論(結果)への興味が強いです。そして、成長すると、理屈っぽくなる分、女性ほど察しようとしないです。
一方で、共感性は、明らかに男の子よりも女の子が高いです。例えば、女の子(女性)は、ぬいぐるみ集め、人形遊び、料理、おしゃべりなど、人や関係性(プロセス)への興味が強いです。そして、成長すると、情緒的になる分、男性ほど説明しようとしないです。
つまり、システム化とは、特に男性にもともと備わっている能力であると言えます。そして、その能力が高まりすぎた状態を自閉症と呼んでいると言えます。
それでは、システム化が高くなると、なぜ連動して共感性が低くなってしまうのでしょうか? 言い換えれば、なぜ自閉症はコミュニケーションの障害とこだわりはセットなのでしょうか?
>>【続編・その2】じゃあなんでコミュニケーションの障害とこだわりはそもそもセットなの?―共感性とシステム化のゼロサム説
参考記事
参考文献
*1 ザ・パターン・シーカーpp.93-95:サイモン・バロン・コーエン、化学同人、2022
*2 自閉症スペクトラム入門pp.134-135:サイモン・バロン・コーエン、中央法規、2011
*3 指からわかる男の能力と病p.31、pp.100-101:竹内久美子、講談社α新書、2013
*4 共感する女脳、システム化する男脳pp.186-187:サイモン・バロン・コーエン、NHK出版、2005
*5 脳からみた自閉症p.129:大隅典子、講談社、2016