【1ページ目】2025年4月号 海外番組「セサミストリート」【続編・その1】実はこだわりは能力だったの!?だから男の子に多いんだ!―自閉症の機能
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・社会的コミュニケーションの障害
・共感性
・反復性
・システム化
・パターン・シーカー
・胎児期アンドロゲン仮説
・指比
・超男性脳
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自閉症は、子どもの時からコミュニケーションがうまくできないと同時に、こだわりが強すぎるという特徴があります。それでは、なぜそうなってしまうのでしょうか? なぜ男の子に多いのでしょうか?
今回は、海外番組「セサミストリート」のキャラクターの1人であるジュリアを取り上げます。このキャラクターを通して、まず自閉症の症状をまとめ、こだわりを機能としてとらえ直します。そして、有力な原因仮説をご紹介し、男の子(男性)にとても多いわけを解き明かしてみましょう。
なお、現在の自閉症の正式名称は、自閉スペクトラム症(ASD、Autism Spectrum Disorder)です。この記事では分かりやすさや呼びやすさを優先して、あえて自閉症という従来名称を用います。また、このキャラクターの動画は、以下の公式チャンネルから見ることもできます。
ちなみに今回は、海外番組「セサミストリート」を扱った記事の続編になります。本編については、以下の記事をご覧ください。
自閉症とはどんなものなの?
ジュリアは、オレンジの髪の毛でグリーンの目。エルモの幼なじみです。ただ、エルモのような普通の子どもとはちょっと様子が違い、彼女は自閉症であると説明されます。それでは、自閉症とはどんなものなのでしょうか? まず、ジュリアの特徴を大きく2つ挙げて、自閉症の主な症状をまとめてみましょう。
①コミュニケーションがうまくできない
ジュリアは、みんなで絵を描いている時、ビッグバードから何度も話しかけられますが、まるで無視しているかのように絵を描き続けます。ビッグバードが「ジュリアは僕のことをあまり好きじゃないみたい」と悲しそうに言うと、大人のアランが「ジュリアはねえ、何か聞かれてもすぐには答えられないことがあるんだよ」「ジュリアはあんまりしゃべらないんだ」とフォローします。
しかし、しばらくすると、ジュリアは「あそぼ、あそぼ」と急に言い出し、笑い出します。気を利かせたアランが「鬼ごっこしたいみたいだね」とフォローします。一方で、アビーから「いっしょに遊んでもいい?」と話しかけられた時は、ジュリアはアビーの方を見ないで、「いっしょに遊んでもいい?」とオウム返しをしていました。
このように、話しかけられても聞こえていなかったり、聞こえていても視線をあまり合わせず、意味が分からないためにうまく返事をしなかったり、逆に急にテンションが上がって独り笑いをしたり、一方的に話し続けたりする特徴は、自閉症の1つの特性、社会的コミュニケーションの障害です。簡単に言うと、コミュニケーションのやり取りがうまくできないことです。
脳機能としてみると、これは生後から共感性がうまく発達しないことがあげられます。共感とは、まさに共に感じて、相手と同じ気持ちになる心理です。これがないと、必然的に人への興味が出てこなくなります。すると、コミュニケーションをしようとせず、身振りも言葉もなかなか発達しなくなるのです。この詳細については、以下の記事をご覧ください。
②こだわりが強すぎる
ジュリアはいつもテンションが上がると、「ぼよん、ぼよん、ぼよん」と独り言を言いながら、両手をぶらぶら(ひらひら)させて動き回る癖があります。一方、いつもの読み聞かせの時間が、アランの急な用事で中止になった時、エルモたちは「しょうがないよね」とあきらめますが、ジュリアだけは「おはなし!おはなし!」と聞き分けなく騒ぎ続け、パニックになります。
また、消防車のサイレンの音が聞こえてきた時は、耳をふさぎ、具体が悪くなります。そして、体全体のハグが苦手なため、「指先だけハグ」をします。
このように、同じ言葉や動きへの執着(常同)、習慣への固執(パターン行動)、そして特定の音や接触への敏感さ(感覚過敏)などの特徴は、自閉症のもう1つの特性、反復性です。簡単に言うと、こだわりが強すぎることです。
脳機能としてみると、これは生後からシステム化の能力が発達しすぎていることがあげられます。システム化とは、原因と結果のつながりのパターン(システム)を見つけ出そうとする心理です。そのために、五感が研ぎ澄まされてもいます。例えば、「ネコ、ネコ、イヌ、ネコ、ネコ、イヌ、次は何が来るかな?」と言われて、クッキーモンスターが「ブタ!?」と当てずっぽうで答える一方、ジュリアは「ネコ」と即答し、「ジュリアはパターンを見つけるのがうまいね」とほめられます。つまり、こだわりは、パターンを見つけ出す能力でもあります。そんな彼らは、パターン・シーカーと呼ばれています(*1)。
つまり、システム化は、パターンを見つけ出すと同時に、パターンにとらわれる(こだわりが強くなる)という二面性があるわけです。このシステム化と先ほどの共感性の詳細については、以下の記事をご覧ください。
