【1ページ目】2012年11月号 ドラマ「モンスターペアレント」クレームにどう対応する?-孫子の兵法
「院長を呼べ!」
皆さんが医療の現場で仕事をしている時、「院長を呼べ!」「あの看護師、辞めさせろ!」「あの研修医を担当から外して!」などとハラハラするようなことを言う患者に遭遇したことはありませんか?そして、彼らの言い分は、「看護師としてなっていない」「研修医のくせに偉そうだ」「患者をバカにしている」「ひどい人間だ」などと様々ですが、多くはとても感情的です。そして、その要求や言い分があまりにも理不尽で、接遇などの組織の取り組みでも太刀打ちできない人たちが世の中にはいます。このような人たちは、度を超えているので、「モンスターペイシェント(怪物患者)」と呼ばれることがあります。そして、そんな彼らに、私たちがある一定の確率で遭遇するのも現実です。そんな時、どうすれば良いのでしょうか?
今回は、2008年のテレビドラマ「モンスターペアレント」を取り上げます。モンスターペアレントとは、怪物のような親という意味で、ドラマでは、「問題児ならぬ問題親」と紹介されています。ドラマに登場するモンスターペアレントたちは、モンスターペイシェントたちとかなり似た行動パターンをしています。このドラマのエピソードを追いながら、モンスターペイシェントの行動パターンを整理して、最悪のシナリオと最善の対応を、みなさんといっしょに見極めていきたいと思います。
叩きのめすのではなく、手懐(てなず)ける
主人公の高村樹季(いつき)は、企業の合併買収を専門とするスゴ腕の弁護士です。美貌と才能を兼ね備え、大企業のクライエントをいくつも抱え、忙しく優雅に駆け回る人生の勝ち組と言えます。そんな彼女は言い放ちます。「勝たなきゃ生きていく意味ないでしょ」「それ(お金)以外に働く意味ってある?」と。勝ち負けの世界で、相手を叩きのめして生き抜く勝ち組のドライな発想です。
そんな樹季に、新しい仕事が舞い込んできます。それは、教育委員会の顧問です。そして、訪れた現場の学校で、次々とモンスターペアレントに出会うのです。法務の会議と違い、教育現場は論理やルールが通じにくく、彼女はくじけそうになります。しかし、教育委員会のメンバーといっしょになって、日々、モンスターたちを叩きのめすのではなく手懐けることで、揉まれながらも彼女は自己成長していくのでした。
学校や病院にモンスターが多い理由―公的な組織の弱み
企業法務での樹季の活躍を描く会議のシーンと、訪問した先の学校での保護者との話し合いのシーンが対照的です。企業組織では、ルールに従って、白黒はっきりさせることができます。話が通じない場合は、相手にしないこともできます。例えば、飲食店などのサービス業であっても、害をもたらす者を「出入り禁止」にできるということです。
一方、学校や病院などの公的な組織はどうでしょうか?実は、この公的な組織にこそモンスターが生まれてしまう理由が大きく3つあります。
まず1つ目は、そこはみんなのために開かれた場所であるということです(公共性)。裏を返せば、理不尽な要求をする人を相手にしないことができず、「出入り禁止」にもしにくいという縛りがあります。つまり相手を選べないということです。医師には、診療拒否の禁止の原則(医師法第19条1項)という法律的な縛りもあります。
2つ目は、同じような対応をすることが求められているということです(公平性)。ここに、少しでも「自分に不利になった」と不満を噴出させる人の強みがあり、公的な組織としての弱みがあります。例えば、ある親が給食費を滞納していることで、別の親たちが「不公平」だから自分も払いたくないと言い張るという現状です。
3つ目は、教育関係者や医療関係者の職業倫理です。「子どもは悪くない」「病気は治したい」という聖職者としての心理も働いており、「他へ行ってください」とは言いづらいのです。





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