連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【2ページ目】2015年5月号 CM「サントリー角」 なんで彼女はモテるの?―対人魅力【女性編】

甘え美人

2つ目は、2代目の菅野美穂さんが登場するCMです。まずは、以下の2つの動画サイトを見てみましょう。画面をクリックしてください。


菅野美穂さんは、あるお客さんのおとぼけに、楽しいリアクションをします。また、一生懸命に料理を作る最中にちょっとドジをしますが、その振る舞いに、お客さんたちは優しく彼女をフォローします。2つ目の魅力は、甘え美人です。この魅力を発揮するために、女性の方は次のクイズに挑戦しましょう。

Q3. 合コンで年齢を聞かれた時、どう答える?

A. 「○歳(実年齢)です」と正直に答える。

B. 「女性に年齢を聞くのは失礼」とはっきり言う。

C. 「何歳でしょうねえ」とほほ笑む。

D. 「逆に何歳だと思います?」と切り返す。

E. 「二十歳です。(間を置いて)気持ちは」と極端に若い年齢をふざけて言う。

AとBは、真面目な対応で、会話がはずみません。Cは、年齢を言いたくないことをほのめかしていることは伝わりますが、楽しくはありません。Dは、質問返しで、会話の広がりが期待できます。ただし、この切り返しは使い古されてきています。Eは、相手を楽しませようとするメッセージは伝わります。ウケないならそれはそれで良いという強いハートで臨むことが大切です。なぜなら笑いは伝わらなかったとしても、笑いを届けたいという思いは確実に伝わっています。相手も興味や好意があるからこそ年齢を聞いているわけで、きっと相手から暖かいツッコミやノリツッコミが返って来ることでしょう。大事なのはいかに会話を楽しめるかということです。

Q4. 出会いの場で「彼氏いる?」と男性に聞かれた時、何と答える?

A. 「いません」とだけ真面目に答える。

B. 「いるけど、うまく行ってないの」と悲しげに答える。

C. 「いない。だけど今日ここで素敵な彼氏ができそう」と楽しげに答える。

D. 「もしいないって言ったら、この後どうする?」と笑顔で答える。

Aは、悪くはないですが、魅力もないです。Bは、一見良さそうにも思えますが、実はかなりリスキーです。なぜなら、こう言えるのは、顔やスタイルなどの他の要素ですでに魅力が十分に伝わっていることが前提だからです。あまり魅力が伝わっていない状況では、男性に面倒臭い女性だと思われてしまい、敬遠されがちです。Cについて、聞かれている時点である程度、男性に好意はあるので、「あなたと楽しく過ごしたい」というポジティブなメッセージをお返しすることができます。

Dは難易度がかなり高いです。すでに十分に魅力が伝わっていると確信しているのでしたら、誘惑的なメッセージとして効果は絶大でしょう。これは、実際に、フリーアナウンサーの小林麻耶さんが使った言葉です。しかし、魅力が充分に伝わっていなければ、自意識の強い女性だと思われてしまい、またまた敬遠されてしまうでしょう。そこで、Dを使うなら、そのリスクを避けるため、保険をかけましょう。Dを使った後、男性が表情を曇らせたら、すかさず「って小林麻耶さんなら言いますね」と笑いに持って行きましょう。

Q5. 合コンでどう振る舞う?

A. 食事の盛り付けや話の相づちを完璧にこなす。

B. 常にニコニコしてうなずくだけに徹する。

C. 盛り付けをこぼして恥ずかしそうにしたり、酔って馴れ馴れしくする。

Aは、全てをそつなくこなして良さそうです。気配り美人としては完璧です。ただ、残念なことに、男性に付け入るスキを与えません。仕事のデキる優秀な女性に多いタイプです。Bは、共感的で一見良さそうですが、話のキャッチボールができず、だんだんと退屈になってきます。Cは、男性に付け入るスキを与えています。男性を助けたくさせます。大事なのは、自分にスキがある(甘えている)といかに男性に思わせるかということです。

結論としては、基本的にAのスタンスで、合間を見てCを入れると効果的です。しっかり者のように見えてちょっとだらしないのがちょうど良いようです。すると、完璧さとスキ(甘え)のギャップによってそれぞれが際立ちます(ギャップ戦略)。

甘え美人が考えることは、「自分が彼に何をしてもらいたいか」ではなく、「彼が自分に何をしてあげたいか」ということです。そのためにはどんなスキをつくれば彼(もっと言えば男性)が喜ぶかを徹底的に知っておく必要があります。

なぜ甘え美人はモテるのか?

そもそも男性は、甘え美人を本能的に選ぶ傾向があります。これも先ほどの心の進化(進化心理学)から考えてみましょう。原始の時代、男性(父親)は女性(母親)とその子どもたちから頼られる存在でした。そこに自分の存在の意味(プライド)を感じる男性がより女性に受け入れられました。その子孫が現在の男性たちです。つまり、男性は、自分を頼りにする女性を魅力的に感じる好み(嗜好性) が進化しているということです(性選択)。そして、その目安(形質)がスキ(甘え)なのです。逆に言えば、一人でも生きていけるオーラを出す女性は、男性に「自分はいらない」と思わせてしまうのです。

その甘えが存分に発揮されたキャラは何でしょうか? それは「ぶりっ子」「かまとと」です。ぶりっ子は、いい子ぶる、かわいい子ぶるなどそれらしい振りをすることです。かまととは、「かまぼこは魚(とと)から作るのか」と尋ねることから、知っているのに知らないふりをして世慣れていないように振る舞うことです。このようなキャラの女性が、同性の女性からはさて置き、男性からはとてもモテるのも納得がいきます。

甘え美人すぎると? ―表2

それでは、甘え美人であればあるほど良いのでしょうか? そうとも言えないです。甘えの心理(能力)は、かわいげがあり、無邪気であり、懐への入りやすさがある反面、度がすぎると、だらしなく、飽きっぽく、怠け癖があり、常に受け身で主体性がなくなってしまいます(依存性パーソナリティ)。例えば、先ほどのクイズQ2のAの「私、分かんない」と無邪気に答えるのは、甘え美人ではありますが、その状況では正解ではないです。また、ノリが良く、ほめ上手で、演出がうまい反面、度がすぎると、表裏が激しく嘘つきになり媚びてばかりで薄っぺらく中身がなくなってしまいます(演技性パーソナリティ)。例えば、行き詰るとすぐに泣く女性です。

また、甘え美人だけであれば良いのでしょうか? そうとも言えないです。甘え美人は、男性への魅惑の強烈さを表していますが、それはあくまで最初のツカミに有効なだけです。無計画でバランスを欠いた甘えは、ワンナイトラブで終わってしまう可能性が高まります。また、ぶりっ子やかまととは、同性の女性に嫌われるリスクが高まります。なぜなら、進化心理学的には、女性にとっては自分の男性を寝取られる脅威を意識的にせよ無意識的にせよ感じてしまうからです。

女性を魅力的にさせ続けるために必要な要素は、気配り美人と甘え美人の他にあと1つあります。

表2 甘え美人の二面性