連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【3ページ目】2016年12月号 ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」-契約結婚とは? アサーションとは?

なぜ結婚をするの? なぜ結婚は「ある」の?

なぜ結婚をするのでしょうか? もちろん「お互いに愛しているから」と答えるのが正解でしょう。もっと具体的に言えば、「好きな人といっしょにいたいから」「子どもがほしいから」「一人だと寂しいから」「生活を安定させたいから」「親から言われたから」など様々な理由があるでしょう。

それでは、そもそもなぜ結婚は「ある」のでしょうか? 両家顔合わせのシーンで、みくりと平匡が結婚式は挙げないと言ったことに対して、みくりの兄が「(結婚)式っていうのは、周りの人のためにやるもんなんだよ」と説いたセリフがヒントになります。そこから、進化心理学的に考えてみましょう。
まず、私たちがヒトとなり体と心(脳)を適応させていった数百万年前の原始の時代の狩猟採集社会に目を向けてみましょう。なぜなら、この時代に私たちの心(脳)の原型が形作られたからです。一方、現代の農耕牧畜社会から始まる文明社会は、たかだか1万数千年の歴史しかなく、体や心(脳)が進化するにはあまりにも短いからです。

原始の時代、男性(父親)は日々食糧を確保し、女性(母親)は日々家事と子育てをして、性別で役割を分担し、家族をつくりました。さらに、これらの家族が血縁によっていくつも集まって100人から150人の大家族の生活共同体(村)をつくり、つながって協力しました。そして、そうする種、そうしたいと思う種が生き残りました。その子孫が現在の私たちです。逆に、そうではない種は、子孫を残さないわけですから、理屈の上ではこの世にほぼ存在しないと言えます。

このような進化心理によって、特定の男性と特定の女性が家族という単位で共同生活をするというシステムが、現代までに結婚制度として全世界に普遍的に確立したのでした。つまり、結婚は、もともと本人たちのためではなく、社会の維持のためにしていたのでした。そして、社会の目によって、離婚をとどまらせていたのです。

未来の結婚のあり方とは?

それでは、原始の時代と違う現代の社会構造ではどうでしょうか? 個人主義化が進んだ中、結婚は、社会の問題ではなく、個人の問題になってしまいました。よって、社会の目によって、離婚をとどまらせるというシステムが成り立たなくなったです。

さらに、現代は、個人主義化から価値観の多様化、複雑化が起きています。もはや、昔のように、夫は仕事、妻は家事と子育てという単純な役割分担が成り立たなくなってしまいました。それは、例えば、男性の家事分担や育児分担、女性の仕事の継続、子どもの教育方針、お金の使い方、余暇の過ごし方、親との同居の有無、そして介護など様々になってしまいました。もはや全ての価値観が一致していることはほとんどないでしょう。離婚の最も多い理由が「価値観の違い」と言われています。その現実を踏まえると、今後にますます離婚のリスクが高まります。離婚は、経済的にも時間的にも心理的にもダメージは大きく、男女ともになるべく避けたいです。だからこそ、社会の目の代わりのシステムとなるのが、契約というお互いの「目」なのです。

未来の結婚のあり方とはどんなものでしょうか? 契約結婚を雇用契約に見立てると、それは試用期間です。つまり、まず共同生活をするということです。この共同生活は、同棲との違いが3つあります。1つ目は、期限があるということです。例えば、半年から1年です。2つ目は、その間に夫婦としての共同生活のルール作りをすることです。それを契約書としてどの程度の形に残すかはそれぞれの夫婦の裁量でしょう。そして、3つ目は、期限が来てもお互いに共同生活を続ける意思があれば正式契約、つまり婚姻届を出すということです。