連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【2ページ目】2019年11月号 ドラマ「3年B組金八先生」【後編】-令和の金八先生になるには? 子どもにも大人にも使える!【叱るスキル】

②どんな人(子)を叱る?
もう1つは、相手の性格です(パーソナリティ特性)。性格を2つの軸で分けてみましょう。グラフ1のように、横軸は、周りに合わせすぎる過剰適応な傾向か、周りに合わせにくい不適応な傾向かを示します。縦軸は、自分なりの考えを持つ積極的な傾向か、自分なりの考えを持たない受け身な傾向かを示します。

すると、右上は過剰適応で積極的な優等生タイプ(ヒーロータイプ)、左上は不適応で積極的なヤンキータイプ(スケープゴートタイプ)、右下は過剰適応で受け身なお調子者タイプ(ピエロタイプ)、左下は不適応で受け身な劣等生タイプ(ロストチャイルドタイプ)にそれぞれ分けられます。真ん中は、癖がない平均的な普通タイプになります。

ここから、4つの傾向に分けて、叱り方のバリエーションを考えてみましょう。

★グラフ1 誰を叱る?

a. 過剰適応
1つ目は、過剰適応です。この傾向は、協力的なので、その瞬間にその場で端的に叱ることが効果的です。優等生タイプにありがちなのが、完璧主義であるために、仕事や勉強のやり方が丁寧すぎて時間切れになることです。そんな時は、「これで十分に合格点」(承認)、「作成前にもっとおきちんと話しておけばよかった。ごめん」(へりくだり)、「期日に間に合わせることがまず大事だから」(優先順位)などと言い、本人のがんばりを認めていることを伝えることが効果的です。

また、過剰適応な傾向の人は、人前であっても叱ることができます。これが、結果的に、不適応な傾向の人に叱られるポイントの判断材料を提供することにもなり、意味があります。

b. 不適応
2つ目は、不適応です。この傾向は、その集団の中での役割意識や所属意識(集団アイデンティティ)が不確かです(アイデンティティ拡散)。「そっちが悪い」とひねくれている場合や、「なんで自分のことを分かってくれないの」と甘えている場合もあります。端的にそのまま叱っても素直に受け止めてくれない可能性があります。よって、時間と場所を改めて丁寧に叱ることが効果的です。時間は、仕事や勉強が終わる時間帯や休日前など、最後に別れる時であることです。相手にいったん離れて考えてもらう時間を確保するためです。また、場所は、人前ではないことです。それは、彼らは周りの評価を人一倍気にするからです。

反発や言い訳があれば、「もし自分にも改善すべき点があるとしたら?」のように、仮定の問いかけで叱ることが効果的です。これは、「仮定叱り」と言えます。

また、事実と違うことを相手が言ったとしても、「うそですね」とは言わず、「そう言いたくて言ったわけじゃないよね」「一生懸命だったんだよね」とまず受容することです。

さらに、小声でぼそっと「ウゼー」と捨てゼリフを吐いたら、どうしましょう? 「今、何て言った!?」と問い詰めるのではなく、「あれっ、何か聞こえたけど」「あなたは聞こえた?」とすっとぼけてみましょう。たいていの子は、「いや、別に」と否定します。するとこちらは続けて、「『ウゼー』って」聞こえたような気がしたんだけど、気のせいだよね」「あなたは言うわけないよね」と笑顔で答えます。

もし「ウゼー」と繰り返した場合は、どうでしょうか? 「もう1回言ってみようか」と穏やかに問いかけます。そして、「そう思ったわけをよく聞かせて」とまず言い分を聞く流れに持っていきます。ここで、大事なことは、怒ったふりはしても、本気では怒らないことです。

彼らは不適応なだけに問題点は多いです。そんな彼らについやってしまいがちなのが、細かいダメ出しをすることです(マイクロ・マネジメント)。すると、ますます彼らはつむじを曲げます。特に、劣等生タイプは打たれ弱いので、ますます萎縮してしまうでしょう。よって、逆を行きましょう。小さな問題点は無視して、まず一番の問題点のみに焦点を絞ることです。これは「限定叱り」でした。一方で、「私服はオシャレだよね」「でもお客さんの中には第一印象で決め付ける人がいる」「現場での服装は注意してほしいの」「あなたの良さを損なっちゃう」「あなたはセンスがあるからこそ」「あなたの成長に期待してるからこそ」と添えて、他の点で褒めることを積み重ねることです。これは、「アメとムチ」ならぬ「アメとムシ(無視)」と呼ばれています。

最後に、「まあね、あなたの年ゴロの私よりはマシなんだけど」「地頭は良いのに」「あなただからこそ」のように、フォローを入れることも重要です。

c. 受け身
3つ目は、受け身です。この傾向は、なぜ叱られたのか、今後はどうすれば良いのかということまで考えが及んでいないことが多いです。よって、理由付けをして具体的に叱ることが効果的です。

また、「良い線行ってるね」「惜しいなあ」「もったいないなあ」「あともう少しなんだけどなあ」などと添えることで、あともう少しで褒められるという状況を演出することも効果的です。

さらに、黙り込んだり泣くという反応が出た場合は、「落ち着いたら声をかけて」「明日にあなたの意見を聞かせて」と一旦場面転換をすることが効果的です。

ここで誤解がないようにしたいのは、お調子者タイプは、積極的に思われがちですが、あくまでそれは笑いや周りへのウケに対してです。逆に、周りが見ていなければサボり癖が出てきます。つまり、仕事や勉強に対しては受け身であると言えます。

d. 積極性
4つ目は、積極性です。この傾向は、すでに本人なりに考えて行動しています。よって、その考えを汲み取った上で、やや抽象的に客観視させて叱ることが効果的です。例えば、「ちょうどあなたの歳頃だった時の私の話なんだけど・・・」と同じ問題エピソードをこちらの過去の話として聞かせることです。

また、最後は、「あなたに任せるわ」という言葉を残し、相手に委ねて信頼しているスタンスを示すことも効果的です。

高度なやり方としては、あなたが本人を叱るのではなく、代わりにあなたが誰かに叱られることです。例えば、あなたの上司にあなたが代わりに叱られている様子を本人に見せることです。または代わりに誰かを叱ることです。例えば、本人の教育係が代わりに叱られている様子を本人に見せることです。こうすることで、問題が広がっていることを本人に分からせて、事の重大さを痛感させることができます。