連載コラムシネマセラピー
私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション、メンタルヘルス、セクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。
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叱る効果を高めるために、相手の年齢や性格によって、叱るための基本要素のバランスや叱り方のバリエーションをまとめました。ここから、叱るデメリットを最小限にするために、叱る行為へのフォローのポイントを主に3つご紹介しましょう。
①叱る前にフォロー
1つ目は、叱る前のフォローです。叱ることにより、相手の自尊心と自信が損なわれないように、常日頃から相手に共感と承認をして、信頼関係を強めていることです。これは、褒めることでもあります。つまり、褒め叱りのバランスを常に意識して、褒めが勝っているように保つことがポイントです。例えるなら、褒めるという「貯金」をコツコツして、叱るという「高い買い物」をするということです。
また、無用な恐怖を抱かせないように、叱る前は雑談をあえてして、アイスブレイクを図ることです。相手から打ち明けてくる可能性もあるため、相手の出方をうかがうことも重要です。反抗期の子どもに「最近のゲームって面白すぎてやめられないんだって」「部活の顧問の先生ってけっこう大変なんだってねえ」などと、ゲームのやり過ぎや部活の是非についての話題をあえてポジティブに人ごとのように話すことです。これは、一ひねりしており、「間接叱り」といえます。
さらに、相手に叱られる心の準備をしてもらうために、叱る前の言い回しがあります(クッションフレーズ)。例えば、基本は「はっきり言っちゃうけど」「気を悪くしないで聞いてもらいたいんだけど」です。自分が謙遜するなら「私の勘違いかもだけど」「心配性だから確認するけど」です。相手を持ち上げるなら「期待してるあなただから言うんだけど」「鋭いあなたならもう気付いてるかもだけど」「今さらと思うかもだけど」「頭の良いあなただから分かってくれると思うけど」です。
②叱った後にフォロー
2つ目は、叱った後のフォローです。例えば、叱った後に、「これからも頼りにしてる」「今回の一件であなたにもっと成長してほしい」「1年後のあなたは尊敬する○○先輩みたいになっていそう」と添えて、信頼感や期待感をほのめかすことです。これは、「価値付け叱り」と言えます。さらに、叱る前のフォローと合わせて、最初と最後の褒めで真ん中の叱りを包めば、「サンドイッチ法」と呼ばれます。
また、叱った後、少しでも変化が見られたらすぐに褒めることです。叱った後、反応が乏しいようなら、「あれからどう?」「ところで、あの事案はどうなった?」と何事もなかったように話しかけ、こちらから歩み寄ることも必要です。
③代わりの誰かによるフォロー
3つ目は、代わりの誰かによるフォローです。これは、フォロー役をつくることです。古典的なイメージとしては、父親が厳しく叱って、母親が優しく慰めるイメージです。例えば、あなたがリーダーなら、サブリーダーが本人に「リーダーはあなたのことを嫌いで言ってるわけじゃないよ」「あなたのこと真剣に思ってるからこそ」「いっしょにがんばろうよ」と味方になることです。あらかじめ打ち合わせて連携するのも良いでしょう。
金八先生をモデルに、叱る学習効果とデメリットを明らかにして、叱るための3つの基本要素、叱る相手の場合分け、叱る行為へのフォローを通して、叱るスキルをご紹介しました。ここから分かることは、叱って変わるかどうかは、単に相手の問題だけでなく、こちら側の叱るスキルの問題でもあることです。そして、どう叱ったら最も相手に響くか見抜く必要や責任は、こちら側にあることです。
このことに気付いた時、金八先生の熱血さの本当の意味をよく理解することができるのではないでしょうか?
・【褒めるスキル】2019年5月号 映画「ダンボ」
・【褒め叱りの学習効果】2014年1月号 ドラマ「Mother」
・【マインドフルネス】2019年8月号 絵本「ZOOM」「RE-ZOOM」
・【アサーション】2016年12月号 ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」
1)「3年B組金八先生」25周年メモリアル:吉沢保、角川書店、2004
2)子どもを叱り続ける人が知らない「5つの原則」:石田勝紀、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2017
3)叱り方のルール:斎藤直美、アスカ、2011