連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【1ページ目】2020年1月号 ドラマ「マザーゲーム」【後編】-女性同士の人間関係、どうすればいいの?【「女心」へのコミュニケーションスキル】

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・オキシトシン
・選ばれる性
・多様性
・人間関係の流動化
・バウンダリー
・「共感の押し付け」
・人間関係の目的化
・集団のルールの緩和化
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「女心」はなぜ「ある」の?-女性性の進化心理

「女心」(女性性)とは、つながりやすさ(共感性)、気付きやすさ(感受性)、受け身になりやすさ(安全性)という3つの心理があることが分かりました。それでは、そもそも「女心」はなぜ「ある」のでしょうか? 「女心」の3つの心理に重ねながら、その起源を進化の歴史から探ってみましょう。

私たちの体が原始の時代から進化してきたのと同じように、実は私たちの脳、つまり心も進化してきました。ここから、「女心」の進化を、3つの段階に分けてみましょう。

①子育てする性-共感性
約2億年前に誕生した哺乳類は、母親が子どもを哺乳する、つまりお乳を与えて育てるというメカニズムを進化させました。もともとお乳を出やすくするオキシトシンというホルモンは、その後に、母親がお乳を欲する子どもの気持ちになる働きもするようになりました。これが、共感性の起源です。

「女心」の進化の1つ目の段階は、子育てする性になったことです。

②選ばれる性-感受性
約700万年前に誕生した人類は、男性が獲った食料を女性にプレゼントして、そのお返しとして、女性がその男性とセックスして、生まれた子どもを育てるように進化したことです(性別役割分業)。オキシトシンは、お乳を欲する子どもの顔色だけでなく、プレゼントをくれる男性たちの顔色や自分の格付けにも敏感になる働きもするようになりました。こうして、ある女性が選ばれるということは、それ以外の女性、つまり自分は選ばれなかったことになり、傷付くわけです。これが、感受性の起源です。

「女心」の進化の2つ目の段階は、選ばれる性になったことです。

③家を守る性-安全性
約300万年前の人類は、男性(父親)と女性(母親)とその子どもたちの家族が血縁によっていくつも集まって、共同生活をするように進化しました(生活共同体)。オキシトシンは、男性(父親)たちが狩りに出かけて家を空けている数日間に、子どもたちを守るために、女性(母親)たちの近所付き合いがスムーズになる働きもするようになりました。そのために、危険になりうる異質なものをできるだけ排除しようとするわけです。これが、安全性の起源です。

「女心」の進化の3つ目の段階は、家を守る性になったことです。

★グラフ1 「女心」(女性性)の起源

「女心」にどうすればいいの?-「女心」へのコミュニケーションスキル

「女心」(女性性)の起源は、子育てする性、選ばれる性、家を守る性という3つの進化の段階があることが分かりました。つまり、「女心」は、そもそも「ある」ものです。ただし、ここで誤解がないようにしたいのは、だからと言って、そのままでいいと言うわけではないです。例えば、私たちが甘いものをつい口にしてしまうのは原始の時代に生存のために進化した嗜好です。だからと言って、飽食の現代に甘いものを食べ過ぎて糖尿病になることを私たちは決して良しとはしないです。むしろ逆に私たちは食生活を意識しています。これと同じです。

原始の時代と違って、豊かで安全で個人の自由が認められた現代の社会構造では、必ずしも、女性が男性に選ばれて、子育てをして、家を守る必要はなくなりました。男性も女性に選ばれて、子育てをして、家を守る選択肢があります。そんな多様性の時代に、「女心」にどうすれば良いでしょうか? どんなコミュニケーションを意識すれば良いでしょうか? 希子がまさにお手本になります。彼女のコミュニケーションスキルを参考にしながら、3つのポイントに分けて、いっしょに考えてみましょう。