連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【3ページ目】2020年1月号 ドラマ「マザーゲーム」【後編】-女性同士の人間関係、どうすればいいの?【「女心」へのコミュニケーションスキル】

「女心」に集団としてどうすればいいの?

舞台となる幼稚園では、当初の運営方針として、保護者をセレブな専業主婦に限定して、入園するママたちを均質化させていました。そして、園の活動を頻繁にさせて、人間関係を固定化させていました。さらに、「プレゼント禁止」などのコミュニケーションのルールを厳格化していました。そうやって同調性を高めていた方が、お受験という1つのゴールに向かってまとまります。そして、お受験の成果が上がれば上がるほど、ますます園の人気が出て、利益も上がるでしょう。さらに、ママ同士のトラブルはあっても、園に対してのクレームやトラブルを抑えられて都合が良いでしょう。

しかし、園長先生は、お受験ママたちとは異質の希子親子をあえて入園させました。その理由は、ママたちや園のためではなく、園児たちのためだったのでした。実際に、園ママたちは最初に動揺しますが、希子と分かり合うことで、影響を受けて、生き生きとしていきます。すると、大人しかった園児たちも、生き生きとするようになったのでした。

それでは、幼稚園という集団として、「女心」にどうすれば良いでしょうか? 対策を主に3つあげてみましょう。

1つ目は、多様なメンバーを受け入れることです。これは、集団のメンバーの多様化です。逆に言えば、均質化させないことです。実際に、園長先生は、希子を見て、ワーキングママを今後にもっと増やそうと考えます。シングルファーザーも良いでしょう。

2つ目は、関係者をどんどん出入りさせることです。これは、集団のメンバーの流動化です。逆に言えば、固定化させないことです。希子は、仕事で幼稚園の活動に参加できない時、おじいちゃんに代わりをお願いします。ママ以外に、パパ、祖父母、ベビーシッターなど様々な人が良いでしょう。さらに、そもそも園での保護者の活動時間を短くして、いっしょにいる時間や労力を減らすことです。

3つ目は、メンバーの様々な考え方をルールで縛らないことです。言い換えれば、それぞれの考え方を尊重することです。これは、集団のルールの緩和化です。逆に言えば、厳格化させないことです。「プレゼント禁止」などの「共感の押し付け」のルールをなくすことです。そして、園長先生が「子どもが人質になることはない」という運営方針をオープンに伝えていくことです。

★表1 「女心」(女性性)の特徴

「マザーゲーム」とは?

「マザーゲーム」というタイトルは、ママ友付き合いを皮肉っぽく名付けています。この「ゲーム」のゴールは、ママたちにとってはもちろんお受験合格という手柄でした。そして、幼稚園にとっては、その実績でした。

このドラマを通して、相手の「女心」に気付くことで、自分自身の「女心」に気付くことができます。そうすると、女性同士のコミュニケーションのパターンを「ゲーム」として俯瞰するという意味合いも見いだせます。また、園長先生の運営方針の転換を通して、その「ルール」を変えることができるという視点で見ることもできるでしょう。

その時、女性だけでなく男性も含めて、私たちは、同調、比較、排除する人間関係の危うさを知ることができるのではないでしょうか? そして、そうならないように、流動化、透明化、目的化する人間関係のあり方の大切さを見つめ直すことができるのではないでしょうか?

参考記事

【いじめの心理】2013年1月号 映画「告白」
【ハラスメントの心理】2013年9月号 ドラマ「泣かないと決めた日」
【「男心」の心理】2017年2月号 アニメ「カイジ」「アカギ」

参考図書

1)格付けしあう女たち:白河桃子、ポプラ新書、2013
2)窒息する母親たち―春奈ちゃん事件の心理ファイル:八幡洋、毎日新聞社、2000
3)女子の人間関係:水島ひろ子、サンクチュアリ出版、2014