連載コラムシネマセラピー

私達の身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション(心理学)メンタルヘルス(精神医学)婚活(恋愛心理学)を見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【1ページ目】2020年1月号 ドラマ「マザーゲーム」【前編】-ママ友付き合い、なんで息苦しいの?【「女心」の二面性】

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・ママカースト
・マウンティング
・同調性
・比較癖
・排他性
・文化資本
・「大変自慢」
・主流秩序
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みなさんの中で、女性同士の人間関係は息苦しそうと感じたことはありませんか? 特に女性のみなさんは、実際にその人間関係に疲れ果てたことはありませんか? その最たるものは、ママ友付き合いでしょう。ママ友付き合いはなぜ難しいのでしょうか? そして、どうすれば良いでしょうか?これらの答えを探るために、今回は、ドラマ「マザーゲーム」を取り上げます。このドラマを通して、女性特有の心理を進化心理学的に掘り下げます。そして、より良い女性同士の人間関係のスキルをご提案します。さらに、女性同士だけでなく、全ての人間関係に通じる心のあり方をいっしょに探っていきましょう。

ママ友付き合いはなぜ難しいの?

舞台は名門幼稚園。ここに子どもを通わせるのは、セレブな専業ママたちばかり。一方、主人公の希子は、バツイチの一人親。そこで唯一の庶民的なワーキングママでもあります。ひょんなことから、彼女は子どもをこの幼稚園に通わせることになりますが、そこで繰り広げられる専業ママたちとの葛藤にくじけそうになります。

ここから、女性同士の人間関係の特徴を大きく3つに整理して、ママ友付き合いの難しさを考えてみましょう。

①群れる-同調性
幼稚園のママたちは、いつも清楚な服装で控えめです。園での係やお手伝いのために、送り迎え以外の時間で、週3日は園に出入りします。また、定期的に、全員強制参加の「ランチ会」を催します。園の年間の各イベントには、熱心に取り組みます。もはや、園での人間関係自体が、自分たちの仕事であり、居場所になっています。

1つの目の特徴は、群れることです。この根っこには、同調の心理があります。同調とは、相手の気持ちや周りの雰囲気に合わせることです。同じ場所で同じ格好で同じことを長くすればするほど、この心理が高まり、相手や周りから好感を持たれるようになります。これは、合唱やダンスにも通じる連帯感です。

そのため、ママたちは、いっしょにいる時間を長くして、目立たない似たような服装で、表面的には決して相手を否定せず、当たり障りのないことだけを言うのです。もちろん、出遅れないために、習い事やお受験の情報収集は欠かせません。こうして、足並みを揃えるのです。一方で、自分の好きな服を着たり、おもしろいことを言うのは、目立ってしまうので、控えます。

その中で特にタブーなのは、学歴の話題です。学歴は、自分たちの「違い」を浮き彫りにしてしまい、私たちは「同じ」という前提を覆し、気まずくなるからです。ママ友たちは、なるべく自分を出さないようにして、あくまで抜きん出ない、害がない「良い人」に徹します。

逆に言えば、違う場所にいる、違う格好をする、違うことをすればするほど、反感を買うことになります。それが、希子なのでした。彼女は、幼稚園に送り迎えする時、いつもラフな格好です。園のママたちに、思い付いたことをすぐに言ってしまい、目立っています。そのわりに、自営のお店の仕事があるため、時間によっては、園に来ることができません。

②格付けする-比較癖
ママ友たちは、誰かのバッグなどの持ち物がブランドものであれば即座に話題にします。ランチ会では、「先週の『ニュルンベルクのマイスタージンガー』(楽劇)、良かったわ」「私、『ターンホイザー』(オペラ)も好きだわ」「ワーグナー(作曲家)は私には重厚すぎるわ」などとの会話が飛び交います。みな、さも分かっているようにうなずいています。

また、他のママ友の話によく聞き耳を立てています。遠足の時には、それぞれのお弁当の中身を気にしています。毬絵(ボスママ)に気に入られた希子は、他のママから「毬絵さんとあんまり仲良くしない方が良いよ」「目をかけられて、いい気になってるって勘違いされるから」と忠告されます。

一方で、みどり(もともとキャリアのあった別のママ)は、園の遠足のしおりを旅行パンフレット並の完璧なものに仕上げたことで、能力をひけらかしたと周りから目を付けられます。そして、聡子(準ボスママ)に「 (そんなことに時間を使って) 子育てに関して労を惜しむのはどうかしら。これでは、母親の愛情が伝わらないと思うわ。考えれば分かることだと思わない?」と嫌味を言われてしまいます。

2つ目の特徴は、格付けすることです。この根っこには、比較癖の心理があります。比較癖とは、つい自分と周りを比べてしまうことです。この心理には、主に2つの原因があります。1つは、先ほどの同調の心理によって「同じ」を意識することは、かえってお互いの小さな「違い」が気になってしまい、逆説的にも、「違い」を意識することになるからです。もう1つは、そもそも群れを維持するためには、上下関係が必要になるからです(ママカースト)。

しかし、本人同士は「同じ」であることが前提です。そのため、自分そのものではない「違い」で、上下関係を築こうとします。一番は、子育てへの努力です。また、夫の社会的地位や経済力も同じくらい重要です。また、文化資本の高さも重要です。文化資本とは、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」と「ターンホイザー」を作曲したのがワーグナーであることを知っているなどの知識や教養、楽器演奏をする技術、語学力などの無形の個人的な資本です。経済的にも文化的にも、これらの資本は、子育てという投資をする彼女たちに大きく価値付けされます。その他に、ボスママから気に入られることです。

これらが、ママカーストの価値観(主流秩序)になります。このママカーストの格付けが上がるように、ママたちは、主に3つの活動をしています。

1つ目は、夫や子育てのさりげない自慢です。例えば、控えめな振る舞いをしながらも、夫の経済力の証であるブランド品で身を固めます。また、「夫は家事や育児をやってくれなくて困る。だって、大企業の重役でいつも家にいないから」と言います。「うちの子は飲み込みが悪い。だから同じ本を5回も読まされた(私は5回も本を読んであげている)」「習い事を週6やらせてる(それだけ付き添いに時間をかけている)」と言います。名付けて「大変自慢」です。これをあからさまにやってしまうと、「マウンティング」と呼ばれます。

2つ目は、その場にいないママへ陰口です。これは、特に仲良しの小集団になる時です。逆に、カースト上位でなければ、全体集団で本人に直接悪口を言うことはなかなかできないからです。そもそも、彼女たちはいつも顔を合わせるため、話題に飢えています。陰口によって誰かをおとしめることは、相対的に自分の格付けを持ち上げます。よって、ママ友同士で、誰と誰が近づき、誰と誰が遠ざかったかについても目を光らせます。これは、お互いの仲の良さを格付けしていると言えます。

3つ目は、あまり仲の良くないママへのお世辞です。これは、相手の否定の度合いによって、勘違い度や傲慢さをチェックしようとする格付けです。その罠に引っかからないように、時として相手は何もコメントせずにお世辞を言い返すことで「褒め合い合戦」に発展します。相手がお世辞にうっかり喜んでしまえば、後々に「否定しなかった。偉そうだ」と陰口のネタにすることができるからです。

③仲間外れにする-排他性
園のママたちは、途中から入園した希子親子の存在について「受験を控えた大事な時期だから、少し不安だわ」「私も、いろんな方がいて当然だと思うの。でも、子どものことを考えると」「うち(のクラス)は、お受験組も多いのに、係決めの時のあの(希子のはっきり言う)態度、配慮がなさすぎて悲しくなっちゃった」「子どもたちのペースが乱れて、入試に差し支えるようなことがあったら取り返しがつかないわ」と口々に陰口を言います。

その後、希子の息子の絵が園での優秀作品に選ばれたことで、聡子(準ボスママ)は、息子の絵の優秀賞の連覇を阻まれてしまいます。おもしろくないと思った彼女は、「品格が低い」「常識を逸脱し、ひんしゅくを買っている」「学習水準が下がることが予測される」との理由で、他のママたちの署名の入った嘆願書を園長に提出して、希子を退園させようと動きます。そして、聡子は、2人のママ友を取り巻きに従えて、希子に横柄な態度をとり続けます。

3つ目の特徴は、仲間外れにすることです。この根っこには、排他性の心理があります。排他性とは、集団の価値観(主流秩序)に合わない異質な人を追い出すことです。これは、特に希子だからというわけではないです。希子がいなければ、みどり(元キャリア)がターゲットになっていたでしょう。多数派の一体化を強める同調の心理は、裏を返せば、少数派への排他性を強めてしまうからです。逆に言えば、共通の敵をつくって一致団結するとも言えます。

希子が異質な点は、主に3つあります。1つ目は、働いていることです。これは、彼らの価値観からしてみると、その時間やエネルギーを子育てや園のママ活動に注いでいない、つまり、子育てへの努力を怠っているということになります。それを端的に表す彼女たちの決めゼリフが「子どもがかわいそう」です。2つ目は、新入りであることです。にもかかわらず、希子はのびのびと振る舞い、決して大人しくありません。これは、ママ集団の力を認めていないことになります。ママ集団の力とは、数が増えると「怖いものなし」「わがもの顔」になっていく群れの心理です。希子の言動は、それを逆なでしています。3つ目は、子どもが優秀であることです。そして、希子は子どもと楽しそうです。一方、他のママたちは、子どものお受験のために多くの我慢や苦労を自ら強いています。これは、希子の存在自体が自分たちの努力を否定していることになります。