連載コラムシネマセラピー

私達の身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション(心理学)メンタルヘルス(精神医学)婚活(恋愛心理学)を見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【2ページ目】2020年3月号 テレビ番組「M1グランプリ」-実はボケってメンタルの症状!? 逆にネタから症状を知ろう!

(2)個性
2つ目は、個性です(非定型発達)。これは、大きく3つに分けられます。

①天然ボケ―コミュニケーション特性
・オードリーの「ズレ漫才」(2008)
若林:「今日もね、漫才を楽しくやっていきたいなと思いますけれどもね」
春日:「OLか」
若林:「どのへんがOLか分からないんですけれどもね」
春日:「うぃ」
→一方的なコミュニケーション


・フットボールアワー
ファミレスの店員役の岩尾が「お客様はお一人様でよろしかったですか?」とマニュアル的に聞くところを、客の後藤をしげしげと見つめて「お客様は独りぼっちでよろしかったですか?」「ファミリーレストランなのに一人でよろしかったですか?」と執拗に聞く。

・アンタッチャブル
合格発表で合格した山崎が不合格になった柴田を慰めるシーンで「おまえが落ちてなあ、おれが悲しんでねえとでも思ってんのかよ。おまえが落ちてつらいのはなあ・・・お前だけなんだよ」と自明を語っています。
→正直すぎるコミュニケーション

・パンクブーブ(2010)
ボケ:「コンビニで犯罪に巻き込まれましてね」(中略)「おれが、本を立ち読みしてたら、若いにいちゃんが万引きしてんのよ」(中略)「それでね、『おい、何やってんだっ!』て・・・いうタイミングを伺ってたんだ」
ツッコミ:「あっ、言ってはないんだね」
ボケ:「そしたら、にいちゃんが『てめえ、さっきから何じろじろみてんだよ!』って・・・表情を浮かべてきたんだよ」
ツッコミ:「あっ、表情ね。言ってはないんだね」(中略)
「それで、おれどうしようかなと思ったんだけど『ここでおれがやらなきゃ誰がやるんだ』って・・・いう本を棚に戻して」
ツッコミ」「えっ!本!?」
ボケ:「で、にいちゃんをにらみながら、ゆっくりと・・・その本屋を出て、そのにいちゃんがいるコンビニへと入って行ったわけよ」
ツッコミ:「えっ!店、別!?」
→相手の心の中への配慮が乏しいコミュニケーション


・笑い飯(2003)
生徒:「先日の博物館の感想ですが、誰とは言いませんが、A君とB君が触ってはいけない・・・」
先生:「いやらしいな、おまえ」
生徒:「J文式土器を・・・」
先生:「縄文式土器や!そこまでイニシャルトークせんでええねん!」
→間違った配慮のコミュニケーション

・ラーメンズ
フリ:「布団の中(で寝てたん)だよ」
ボケ:「布団の中・・・布団の中?」
ツッコミ:「じゃなくて、敷き布団と掛け布団の間だよ」
→字義通りの言葉の解釈

・かまいたち(2019)
ボケ:(映画の「隣のトトロ」について)「何回も繰り返されてる再放送の網も全部すり抜けて、生まれてから37年間1回も見てない。すごない!」
ツッコミ:「見てないこと自慢ならへん。見てた方がいいですからねえ、みなさん」(中略)
ボケ:「おれの『トトロ見たことない』は、もう今からじゃ(みんなは)どうにもならない。「だって、(みんなは)見ちゃってるのよ」「みんながおれの自慢に追いつける方法はないのよ」(中略)「(おれが)見てないってことは、これから見ることもできるし、見ないこともできる。私にだけ選ぶ権利が与えられている」
ツッコミ:「宗教っぽいな」
→屁理屈(こだわり)

1つ目は、天然ボケです。これらのネタは、コミュニケーションがうまく行かなくなるのが特徴です。自閉スペクトラム症のコミュニケーション特性に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、あえて難解な言葉をしゃべる(衒学的なコミュニケーション)があげられます。

②不注意―ADHD特性
・アンジャッシュの「すれ違いコント」
渡部:メールのやり取りで、「お、企画ほめられた。嬉しいな」と言い、「こんど、かんそうきかしてください」と打ち込む。
児島:「今度、乾燥機貸してください」と誤変換されたメールが届き、困惑。その後、児島は「いいたいことはなんですか?」と打ち込む。
渡部:「良い太鼓とはなんですか?」と誤変換されたメールが行ってしまい、渡部は「はあーっ!」と叫ぶ。
→うっかりミス(不注意)


・江頭2:50
→唐突な話し方。スタジオを動き回る(多動性)。客席にダイブする。衝動的に下半身を露出する(衝動性)
2つ目は、不注意です。これらのネタは、不注意になっていたり、衝動的になっているのが特徴です。多動症(ADHD)の特性に分類されます。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、うっかり忘れ(不注意)、汚部屋(多動性)、すぐに手が出る(衝動性)などが上げられます。

③癖―その他の発達特性
・インパルス
リストラされた元駅員の男性がコンビニのバイトにやってくる。彼は、1万円札を受け取った時は、急に笛を吹いて左右の確認を始める。お弁当を温める時は、「えーこれより先、電子レンジを使いますので、扉に引き込まれないように(ご注意ください)」と余計な注意をする。
→職業病によるこだわり(習癖)

・タカアンドトシ
タカに「欧米かっ!」のツッコミを言わせるために、トシが欧米風(厳密にはアメリカ風)のボケを繰り返す
→似たようなことを繰り返す、いわゆる「天丼」

・パッション屋良:「大きな栗の木の下で♪あーなーたーと・・・ウーン!ウーン!ウーン!」と目をむき、胸を突き出して、握り拳で胸を叩く。
・児島よしお:「でもそんなの関係ねえ!」
・志村けん:「アイーン!」
・こだまひびき:「チッチキチー!」

→ナンセンス。一発芸、一発ギャグ、リズムネタ、裸芸などで、決まったフレーズや動きを繰り返す(常同運動)。なお、ナンセンスとシュールは、意味が分からない点においては同じです。しかし、ナンセンスは文字通り、意味のないことを唐突に言い出すだけで、その意味を考えさせることはないです。これに対して、シュールは、非現実なりに何か意味があると考えさせるという違いがあります。

・ハムの諸見里
居酒屋で「サワーください」と言おうとすると、「シャワーください」と言ってしまう。
→滑舌が悪い「口癖」(語音の特性)

・アメトークの「運動神経悪い芸人」
→「運動音痴」(協調運動の特性)


・ミキの「モテないネタ」(2018)
・トレンディエンジェルの「ハゲネタ」(2015)
・顔芸、福笑い

→容姿ネタ。見た目の「癖」として、ここに分類しました。

3つ目は、です。これらのネタは、ついやってしまうのが特徴です。常同運動症、語音症、協調運動症などの、その他の発達特性にまとめて分類しました。逆に、この分類でまだお笑いネタになっていないと思われるのは、ついハマってしまう(依存症)、意に反してつい言ってしまったりつい動いてしまう(チック症)、うまく話せない(流暢症、吃音症)などが上げられます。

(3)驚き
3つ目は、驚きです(異変)。これは、大きく2つに分けられます。

①緊張
・摩邪
(緑色に染めたモヒカンに女レスラー姿で)「世の中のチャラチャラした女ども!お前らに言いたいことがある。よく聞け! ひとつ! 仲のいい友達に対して『あんな男別れて正解だよ』って言う女! 別れて正解? ハア? お前に恋愛の正解不正解が分かんのか? そもそも正解って何だよ! そんなもんがあったらなあ、あたいも苦労してねえんだよ! コノヤロー!」と攻撃的にマイクを攻撃的に叩き付ける。その後に、両膝を揃え曲げてしおらくしマイクを拾う。
→ずれ下がり(価値下落)

・小梅太夫
「チャンチャカチャンチャン(略)♪」「タクシーを止めようと右手を挙げたら、挙げた右手に雷が落ちました、チクショー!」
→不運ネタ

・鬼越トマホークの「ケンカ芸」
→コンビの2人のケンカの仲裁に入った第三者に対して、「うるせーな!」とケンカの矛先を向け、その第三者に理不尽なツッコミを入れる。

・ナンセンスの連発や強引なダジャレによる「スベリ芸」
スベっていても、「サムい」「スベった」など自らツッコミを入れたり、本人が全力でしつこくやり続けることで笑いをとる。

1つ目は、緊張です(ストレス)。これらのネタは、不幸、危機一髪、スベるなど、場が硬直するのが特徴です。本来、予定調和になるものがそうならない点で、いつもと違うという驚きから笑いになります。

②一致
・アンジャッシュの「取り違え」コント
全く面識のない2人が駅のホームでそれぞれ別の相手と携帯で話している状況。児島は友達に恋愛相談をしている中、隣りの渡部は電話で家庭教師としてことわざのクイズを出す。
児島:「プレゼント攻撃で口説いたんだろ?何あげたの?」
渡部:「馬の耳に?」
児島:「イヤリング?」
渡部:「違うでしょ!念仏でしょ」
→一致しないはずが、偶然に一致してしまい、意味付けが変わる

・ダジャレ
例、「内容がないよ」
→意図的ではなく、たまたまダジャレになってしまった場合は、その驚きやスベったことへの笑いが生まれる。


・そっくりさん、モノマネ、歌マネ、パントマイム
→模倣。意図的に偶然の一致を演出する

2つ目は、一致です。これらのネタは、偶然にも必然にも一致するのが特徴です。本来一致しないものが一致する点で、いつもと違うという驚きから笑いになります。