連載コラムシネマセラピー

私達の身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション(心理学)メンタルヘルス(精神医学)婚活(恋愛心理学)を見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【1ページ目】2020年6月号 テレビ番組「M1グランプリ」-【続編・その1】実はツッコミはセラピー!?

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・教える
・行動療法
・支える
・支持療法
・考えさせる
・認知行動療法
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前回(2020年3月号)は、お笑いのボケについて詳しく分析しました。今回は、ツッコミです。なぜツッコミをするのでしょうか? 前回に、ボケがメンタルヘルスで見られる症状に重なることを指摘しましたが、実は、ツッコミは、メンタルヘルスで行われるセラピーに重なります。今回は、そのスタイルをテレビ番組の「M1グランプリ」でのネタを通して、精神医学的に分類し、ふだん目にしないそれぞれのセラピーをイメージアップしてみましょう。

なお、お笑い芸人の表記は通称として、敬称は省略しています。

なぜツッコミするの?

お笑いのツッコミとは、ボケ(異常)を指摘する(=突っ込む)ことです。そして、ツッコミする理由は、笑いどころを見ている人に分かりやすく伝えるためです。ここから、そのツッコミのスタイルを大きく3つに分けてみましょう。

教える

1つ目は、教えるスタイルです。これは、主に3つあげられます。

①罰して分からせる―行動療法
・カミナリの「どつき漫才」(2017)
ボケ:「この世の中で一番強い生物って何だと思う?」
ツッコミ:「クマだな」(中略)
ボケ:「実はね。(自分は)ホオジロザメだと思うんだ」(中略)「だってクマは水中で息できないから溺れちゃう。そこをホオジロザメが食べちゃう。よって、ホオジロザメが一番強いんです!」
ツッコミ:(ボケの頭を平手で思いっきり叩き)「バトルフィールドが海前提の話だな!」

→ボケを叱る(=どつく)。これは、ツッコミ(罰)が与えられることで、悪い行動(ボケ)が減るというセラピーに当たります(正の罰)。いわゆる「アメとムチ」のムチです。実際のメンタルヘルスでは、抗酒剤がこれに当てはまります。抗酒剤とは、この内服中は、飲酒すると気持ち悪くなる作用があります。よって、アルコール依存症の人は、気持ち悪くなることで、飲酒しなくなります。

・オードリー若林の「すかしツッコミ」(2008)
春日:「みなさん、夢でお会いして以来ですね」
若林:「だいぶ、寝汗かいたと思いますけどね。今日も楽しく漫才をやっていきたいなと思いますけどね」
→あえて取り合わない(=すかす)。ツッコミ(この場合はご褒美)がなくなる(与えられない)ことで、悪い行動(ボケ)が減るというセラピーに当たります(負の罰)。実際のメンタルヘルスでは、行動制限がこれに当てはまります。落ち着かないなら、自由を制限します。よって、発達障害の子どもは、自由がなくなることで、暴れなくなります(タイムアウト)。

1つ目は、罰して分からせることです。これは、セラピーの中で、行動療法に分類されます。行動療法とは、罰や報酬によって行動を変えていくセラピーです(オペラント条件づけ)。なお、体罰、暴力、ハラスメントに敏感な時代の流れから、従来の「どつき漫才」は受け入れられなくなってきています。「どつく」にしても、身体的には叩くふりや腕を引っ張るなどマイルドなスタイルに変わってきています。ちなみに、トム・ブラウン(2018)は、頭を叩いたあとに、ぺたっと手をくっつけて痛そうに見えない工夫をしています。

逆に、この分類でまだツッコミのスタイルとして使われていないのは、褒めることです。例えば、ベタにボケるところで真面目になること(ある意味ボケ)で、びっくりして褒めるというツッコミをすることです。これは、ご褒美がもらえることで、良い行動(真面目)が増えるというオーソドックスなセラピーに当たります(正の強化)。これは、「アメとムチ」のアメです。

また、同じく、ベタにボケるところで真面目になること(ある意味ボケ)で、激しくどつくツッコミ(罰)ができずに肩すかしになる展開です。「すかしボケ」と名付けられそうです。これは、ツッコミ(罰)が与えられないことで、良い行動(真面目)が増えるというセラピーに当たります(負の強化)。分かりやすい例は、拷問です。実際のメンタルヘルスでは、最初から行動制限を行うことです。ルールを守っているなら、少しずつ自由が拡大します。よって、発達障害の子どもは、自由が得られることでルールを守るように学習するようになります。

★表1 行動療法(オペラント条件づけ)

②説明する―心理教育
・ナイツ(2008)
ボケ:「ヤホーってサイトで調べてきたんですけど」
ツッコミ:「ヤフーね。ヤフーって読むんだわ、あれ」
→丁寧に説明

・フットボールアワー後藤の「たとえツッコミ」
一発ギャグがスベった芸人に「おまえ、ようそんなギャグ出せたな。陶芸家やったら割ってるヤツやで」
→分かりやすく説明

2つ目は、説明することです。これは、セラピーの中では、心理教育に分類されます。クライエントに、心理状態についての説明、内服継続が必要な理由、家族の対応の仕方などを説明することです。

逆に、この分類でまだツッコミのスタイルとして使われていないのは、現実を突き付ける(直面化)、矛盾を問い詰める(知性化)、細かく口出しする(過干渉)などがあげられます。やりすぎると、ツッコミがボケになっていくおもしろさもあるでしょう。

③主張する―アサーション
・南海キャンディーズ山ちゃん(2004)
相方のしずちゃんについてのツッコミレパートリー
「だめだ、おれ、こんな状況、生まれて初めてだ・・・」

「ナイスざわざわ」
「やばい、涙で明日が見えない」
「あれ、左から妖気を感じる」
→受け入れやすい言い方

3つ目は、主張することです。これは、セラピーの中では、アサーションに分類されます。これは、ネガティブなことを伝える時に、主語が「あなた」(あなたメッセージ)ではなく、「私」(私メッセージ)であることによって、「あなたが悪いと決め付けているわけではない」というメッセージを伝えることです。