連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【2ページ目】2023年11月号 NHKラジオ「小学生の基礎英語」「和製英語教育」から抜け出せる? 日本人がバイリンガルになった未来とは?-言語政策

日本の英語教育の改善点は?

日本の英語教育の問題点は、小学校において、学習時間数が少なすぎる、学習開始年齢と進度が同じである、学習の動機づけに限界があることであると分かりました。それでは、これらを踏まえて、どうすればいいでしょうか? ここから、英語教育をより効果的にする改善点を3つあげてみましょう。

① 学習時間数を増やす

1つ目は、小学校での英語の学習時間数を単純に増やすことです。例えば、授業時間数を小学3、4年生で週3時間(年間105時間)、5、6年生で週5時間(年間175時間)とすると、トータル4年間で560時間を確保できます。あとは、「小学生の基礎英語」をはじめとする語学教材や宿題などの家庭での学習時間数(週3~5で15分~30分を4年間)を組み合わせれば、トータルで800時間に達します。

なお、当然ながら、これだけ英語の授業時間数を増やすということは、他の科目の授業数を減らす必要があります。国語と算数は主要科目であるためなかなか減らせませんが、理科や社会など他の科目なら減らすことができます。なぜなら、これらの科目は、知識の要素が大きく、英語、国語、算数と違って敏感期を気にする必要がないからです。中学校以降で本格的に学ぶことが十分に可能です。

逆に、中学校以降の英語教育は、すでに小学校で先取りして上達しているわけなので、その分を減らすことができます。また、上達していないとしたら、もともとの言語能力(言語理解IQ)に限界があったことが判明したわけですから、効率性の観点からも英語に多くの時間を割かない方が合理的です。そもそも敏感期を過ぎて「手遅れ」である点からも授業時間数を減らす方が合理的です。

②授業開始学年と進度をその生徒に合わせる

2つ目は、英語の授業開始学年と進度をその生徒の言語能力に合わせることです。逆に言えば、開始学年を一律3年生で一律同じ進度にしないことです。

例えば、基準は3年生としつつも、国語の成績が下位15%(言語理解IQが85以下)は、4年生以降に英語の開始を遅らせて、その分を国語(日本語)の授業時間にして専念できるようにします。

逆に、国語の成績が上位15%(言語理解IQが115以上)は、8歳になるまでにすでに余力があるので、2年生から開始を早めて、その分国語の授業時間を減らすようにすることもできます。前々回(2023年9月号)でも触れましたが、発音の敏感期が遅れて終わる子どもはその分その後の語彙の学習が遅れるのと同じように、逆に語彙の学習が早い子どもはその分語彙の敏感期も早くに終わる可能性も考えられます。この点で、このような子どもは、英語の学習を開始する時期をむしろ早める必要があります。

また、開始学年を一律にしないことで年齢に縛られなくなるので、英語のクラスをレベル分けすることができます。よくよく考えると、授業時間数が増えるということはそれだけ、レベルアップに個人差が出てきます。また、幼児期からすでに英語教育を受けてきた子どもや帰国子女とはレベルの差が最初からあります。年齢はあくまで基準としてその生徒のレベルに見合った授業を受けることができるようにするのは合理的ですし、そもそもそれが世界標準です。

なお、言語理解IQは、医療機関で知能検査(WPPSI-IIIやWISC-V)によって測ることができます。また、今後は(すでに?)、AIによってオンラインで手軽に測ることができるようになるでしょう。

③授業開始年齢と授業時間数を生徒と親に選ばせる

3つ目は、英語の授業開始年齢と授業時間数を生徒と親に選ばせることです。これは、国語の成績(言語理解IQ)によって英語の開始学年を早めるか遅らせるか、授業時間数をどれくらいにするかは、あくまで学校側の推奨にとどめて、最終的にはその生徒と親に選ばせることです。なぜなら、国語の成績がどうであっても、あえて英語を開始するか国語に専念するかの選択肢をあえて提示されることで、責任が発生するからです。これは、自分の行動に責任感を持たせ、英語の学習に対する動機づけを高めます。もともと決められたこととしてやらなければならないという心理(外発的動機づけ)から、自分で決めてやりたいという心理(内発的動機づけ)に変わるからです。