連載コラムシネマセラピー
私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション、メンタルヘルス、セクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。
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・躁うつ病(双極性障害)
・躁状態(躁病エピソード)
・抑うつ状態(抑うつエピソード)
・診断基準
・遺伝率
・リチウム
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みなさんは、どんな時にテンションが上がりますか? 仕事がうまく行った時? 好きな人とデートした時? それとも競馬で大穴を当てた時???・・・などなど様々でしょう。そして、数時間かせいぜい数日でそのテンションは元に戻るでしょう。
しかし、特にきっかけなくテンションが上がり、ずっと続いたらどうでしょうか? 精神医学では、これを躁状態と呼んでいます。そして、躁状態のあとには抑うつ状態になることが多く、この一連の状態を躁うつ病(双極性障害)と呼んでいます。具体的にどんな症状があるでしょうか? なぜ躁うつ病になるのでしょうか?
今回は、躁うつ病をテーマに、映画「心のままに」を取り上げます。躁うつ病の主人公を通して、躁うつ病の症状と原因を解説します。
主人公はジョーンズ。彼はいきなり建築現場に現れ、働かせてくれと現場監督に直談判をするところからストーリーは始まります。ノリノリの話し方で軽いジョークを飛ばし、気を良くした監督は彼にすぐに仕事を任せます。彼はただ気さくでお調子者のように見えます。
しかし、すぐに彼が普通ではないことに気づきます。彼は、鼻歌で「心ウキウキ~♪」と歌い続けます。隣り合った建築作業員の同僚に名前を聞いておきながら、自分の名前を聞かれても、楽しさのあまり返事をしません。これは、注意散漫です。そして、明らかにハイテンションになっていて、高揚気分が当てはまります。そして彼は、その同僚ハワードが金づちを叩く音に合わせて、自分も同じリズムで金づちを叩くのです。仕事中ですので、明らかにふざけすぎています。
さらに彼は、ハワードと軽く世間話をしたあと、なんと「道で拾った100ドル札だ。天の声が聞こえてきてね、ハワードにやれって言ったんだよ」と言い出します。ハワードから「恵みなんか受けないよ」と断られても、「取っとけよ」と無理やりそのお金をハワードのポケットに入れ込むのでした。高揚気分から気前が良すぎます。そして、このように考えが次から次へとポンポンと飛んで行くのは、観念奔逸が当たります。
その後、ジョーンズはまだ骨組みだけの屋根に勝手に上がり、棟木の上を命綱なしで渡り始めます。そして、ハワードに「飛びたいと思ったことはないか? 飛べるよな。飛んでみるか。やってみればきっと飛べるさ」と言い出し、飛ぼうとする真似をします。最後に彼はハワードに何とか捕まえられますが、それでも、楽しそうに笑い続けているのです。このように、「自分は空を飛べる」など自分はすごいという不合理な思い込みは、誇大妄想(誇大性)が当てはまります。
いったん精神科病院に運ばれましたが、病棟のベッド数削減の事情によって、すぐに退院となってしまいます。しかし、女医のボーエン先生にまとわりつき、一方的にまくし立てていました。これは、多弁が当てはまります。そして、一人なっても、抑えられずに一人で踊っていました。これは、多動が当てはまります。
その後、銀行で預金をすべて下ろしますが、その時に対応した銀行員の女性をデートにいきなり誘います。楽器店で高価なグランドピアノをいきなり買い、高級ホテルに泊まり、リムジンでコンサート会場に乗り入れます。これは、熱中が当てはまります。そして、衝動買いや浪費に発展しています。
コンサート会場では、なんと彼は演奏の真っ最中にステージに上がり、指揮者の隣で指揮を執り出すのです。自分の指揮の方がうまいと思ったのでした。これも、誇大妄想です。精神科病院に再び強制入院となり、隔離室で看護師たちにブーツを脱がされている時は、「空飛ぶブーツだぞ。大事にしろ!」と急に怒鳴っていました。これは、些細なことでも怒りっぽくなる易怒性が当てはまります。
以上より、表1の診断基準で、ジョーンズは、⑥は不明ですが、他のすべての項目を満たしていることになります。