連載コラムシネマセラピー
私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション、メンタルヘルス、セクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。
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宗教体験と幻覚妄想は、知覚や思考の異常という精神医学的な視点では区別できないことが分かりました。そして、幻覚妄想を主症状とする精神障害は統合失調症ですが、実際の研究でも、宗教体験とこの統合失調症は、同じ脳領域が過活動になっていることが分かっています(*1)。それでは、なぜ宗教体験は統合失調症と見なされないのでしょうか?
その理由は、宗教体験は、宗教という文化として世界中で古くから受け入れられてきたからです。つまり、正常か異常か、健康か病気かは、社会で受け入れられるかどうか、常に多数決で決まっていることが分かります。
なお、この健康の概念の詳細については、以下の記事をご覧ください。
以上より、同じ知覚や思考の異常でも、社会的に受け入れられている場合は宗教体験、受け入れられていない場合は統合失調症になるわけです。この点で、たとえ宗教体験であっても、それでトラブルを起こし、社会的に受け入れられなくなれば、宗教妄想を呈した統合失調症と診断します。逆に言えば、宗教体験は、統合失調症と同じ心理現象(幻覚妄想)のプラス面を見ているだけと言い換えられます。これが、統合失調症の二面性です。
つまり、統合失調症は、宗教に関連した何らかの存在理由があることが想定できます。それは一体、何なんでしょうか?
>>【後編・その2】なんで統合失調症は「ある」の?―統合失調症の機能
*1 「宗教の起源」p.246:ロビン・ダンバー、白揚社、2023