【2ページ目】2026年10月号 映画「かがみの孤城」【その6】不登校への取り組みのラストピースとは?- 扶養の期限設定
不登校を予防するための子育てのあり方とは?
こころの家庭は、同調を誘発し自立を抑える集団主義的な子育てをしていることが分かりました。そして、実はこのような家庭が日本でごく一般的であることを説明しました。一方で、萌ちゃんの家庭は、自立を促す個人主義的な子育てをしているであろうことが分かりました。そして、このような家庭は欧米などのもともと個人主義の国では一般的ですが、日本ではまだ一般的ではありません。
この点から、現在、日本の社会は個人主義化しているのに、日本の多くの家庭内は個人主義化していないことが分かります。そして、この家庭内の個人主義化の遅れこそが、不登校を引き起こしていると説明できます。よって、不登校を予防するためには、子育てのあり方を個人主義化してアップデートする必要があります。それでは、どうアップデートすればいいでしょうか?
先ほどのこころの家庭環境と萌ちゃんの家庭環境の違いが大きなヒントになります。この2つの特徴の違いは、選ぶ自由とその責任がないかあるかです。そして、その具体例は、表6のように家庭のルールづくり、生活の自立、プライバシー、金銭管理、家事手伝い、裁量権、ビジョンの主に8項目が挙げられます。
なお、表6の左側の集団主義的な子育ての具体例の8項目は、その5で説明した多遺伝子スコアに倣って、この記事で「不登校リスクスコア」と名付けます。この点数が8点満点で高ければ高いほど、同調への感受性が高い子どもは同調が誘発されて、不登校になるリスクが高まると設定しています。ちなみに、こころの家庭は少なくとも5点はあります。一方、萌ちゃんの家庭や欧米の一般的な家庭はほぼ0点です。現時点で、このスコアの妥当性についての根拠は不十分です。今後に項目の再編成や重みづけが必要になるかもしれません。
一方で、表6の右側が個人主義的な子育ての具体例になります。例えば、こころには、自分の部屋は自分で掃除するというルールを提案します。また、両親が共稼ぎであることから、決まった家事をして、その報酬を受け取るルール(家事報酬制)を提案します。もちろん、最初から決まった家事手伝い(家事分担制)をしているのなら、そのままにして、お小遣いを決まった額をあげること(お小遣い制)を提案し、逆にそれ以外で親は原則的にお金を出さないルールを提案します。ゲームについては、取り上げるのではなく、ゲーム依存症のリスクを説明し、ゲームの時間のコントロールがどの程度自分でできるかを話し合い、時間制限をする必要があることを説明します。
このような自立を促す個人主義的な子育てを、体の自立が可能になる6歳から少しずつしていき、不登校のリスクが高まり始める小学校高学年までにはこのスコアを0点にすることで、同調の感受性の「スイッチ」が入らずに、不登校を予防することが期待できます。なお、これらの取り組みの詳細については、以下のその記事をご覧ください。
不登校への取り組みのラストピースとは?
母親は、こころに「(復学や転校が)どうしても嫌なら、無理に中学に行く必要もないのよね」「一人じゃないよ。(フリースクールなど)どこがいいかいっしょに考えよう」と言い、こころの手を握ります。こころの顔の緊張も心の緊張もほぐす、とても心温まるシーンです。母親はこころを自由にさせようと心がけるようになったのでした。
実際に、不登校への取り組みとして、「好きなことをさせる」(自由を認める)ことがすでに勧められています。確かに、このかかわり方によって、やがて高校進学のタイミングで復学する子どもは多いです。これで、先ほどの「不登校リスクスコア」も数点下がります。
一方で、そのままひきこもりに移行する人が約20%いることも文科省の調査で判明しています*1。よって、「好きなことをさせる」取り組みは必要ではあるのですが、十分ではないことが分かります。それでは、どうすれば十分なのでしょうか?
それは、表6の右側の個人主義的な子育ての具体例の最後の8項目目である、大人になったら家を出るよう伝えることです。これは必然的に、18歳になったら自立すること、つまり親による扶養の期限設定を意味します。そしてこれこそが、不登校への取り組みのラストピースになります。
まず、「好きなことをさせる」ことモットーに、個人主義的な子育ての7項目までを1か月続けます。そうしてから、この取り組みになります。
例えば、こころの両親が揃ってこころに次のように3つのポイントで伝えます。
このタイミングである理由として、自由な時間を過ごすことで心の回復を得るためには、一定期間必要だからです。そして、1か月の期限は、ちょうど不登校が認定される日数だからです。逆に、不登校になったからといって、いきなり「大人になったら家を出て」とは伝えないことです。これは、ただ子どもを追い詰めるだけになってしまい、親子の信頼関係が損なわれてしまいます。
また、1か月を過ぎて2か月、3か月とそのまま様子を見て一定期間を超えてしまうと、こころがそうであったように、今度は「家族以外誰とも話さない」「ほとんど自分の部屋にこもっている」というひきこもりの生活スタイルに慣れてしまいます。そして、ちょっと外に出るだけでも、そしてクラスメートと一言話すだけでも、相当のストレスを感じるようになってしまい、不登校を脱するのが難しくなるからです。
例えるなら、宇宙飛行士が無重力の宇宙で1か月過ごしてから地球に戻ってくると、立つことすら難しい状態になることです。つまり、重力に抗する筋力と同じように、社会性には日々の社会的なストレスがやはり必要と言えます。
なお、不登校になっていない場合、このメッセージを小学校高学年までに伝えるのですが、子どもが不登校によってストレス状態にあるわけではないので、明らかに伝えやすいでしょう。






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