連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【2ページ目】2024年2月号 映画「かがみの孤城」【その2】実は好きなことをさせるだけじゃだめだったの!?-不登校へのペアレントトレーニング

じゃあ親はどうしたらいいの?

好きなことをさせるだけでは望ましくない理由は、「社会的な自我」(アイデンティティ)が育まれなくなるからであることが分かりました。これを踏まえて、それでは、親はどうしたらいいのでしょうか? こころと母親のやり取りから、不登校を解決するために必要な親の対応を、ペアレントトレーニングとして、順番に大きく3つあげてみましょう。

なお、ペアレントトレーニングとは、もともとADHD(注意欠如多動症)などの発達障害の子どもへの親の対応スキルを練習することですが、不登校にも広げることができます。

①味方になる―自尊心

こころの母親は、フリースクールの先生の助言もあって、こころにあまり口出しをせず、根気強く見守るようになります。普段から他愛のない雑談を心がけるようになります。こころがいじめを打ち明けた時は、「本当に気づいてあげられなくてごめん」と言い、やさしく抱きしめます。

1つ目は、味方になることです。ここで、その方法を具体的に3つあげてみましょう。

a.雑談

1つ目は、雑談です。これは、ただ親が「宿題やった?」「どこ行ってたの?」などと見張るようセリフはNGです。雑談の内容は、親がただ知りたいことではなく、あくまで子どもが話したいことに寄せるのがコツです。例えば、いっしょにテレビを見ながら「このお笑い芸人おもしろいね」「この俳優、私の最近の推しメンだわ」などと楽しく話すことです。

雑談の目的は、情報ではなく情動、つまりまず信頼関係を築くことです。

b.良いところ探し

2つ目は、良いところ探しです。これは、まさに子どもの良さや強みをどんどん指摘していくことです。ここで、良いところが見つからないと困っている人はいますでしょうか? そんなことはありません。たとえどんなネガティブなことでもポジティブに返すことができます。心理学では、リフレーミング(認知再構築)と呼ばれています。具体例は表1をご覧ください。

良いところ探しの目的は、良さが本当にあるかどうかではなく、良さがあると思ってくれる味方がいることを子どもに伝えることです。

★表1 ポジティブ返しの例

なお、これは、褒めるスキルにも通じます。詳細については以下の記事をご覧ください。


>>【褒めるスキル】

c.寄り添いワード

最後にして一番大事なのは、3つ目の寄り添いワードです。これは、欧米圏のようにことあるごとに「アイラブユー」と言い添えることです。ただし、日本人はストレートな表現に馴れていないです。いきなり言ってしまうと気持ち悪がられるおそれがありますので、言い換える必要があります。例えば、普段から会話の中で「きみは大事だよ」「いっしょにいて幸せだよ」と言うことです。

また、いじめを打ち明けた時などは、子どもの気持ちを受け止めることです。説教したり審判するのは逆効果です。助言については、「アドバイスほしい?」と確認するくらい慎重になる必要があります。具体例は、表2をご覧ください。

★表2 寄り添いワードの例

なお、これは、うつ病など弱っている人へのかかわり方にも共通しています。この詳細については以下の記事をご覧ください。


>>【うつ病の人へのかかわり方】

このようにして味方になることで、「自分は大丈夫」(OK)という安心感を育み、自尊心(自己肯定感)を高めることができます。これが、土台としてまず必要になります。