連載コラムシネマセラピー

私達の身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション(心理学)メンタルヘルス(精神医学)婚活(恋愛心理学)を見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【3ページ目】2020年2月号 CM「苦情殺到!桃太郎」【前編】-なんでバッシングするの? どうすれば?―「正義中毒」

なぜバッシングは「ある」の?

これまで、なぜバッシングをするのかという疑問にお答えしました。それでは、そもそも、なぜバッシングは「ある」のでしょうか? ここから、バッシングの心理の起源を、3つの段階に分けて、進化心理学的に探ってみましょう。

①序列をつくる―社会性
約2000万年前には類人猿が誕生し、群れをつくりました。この時、力関係によって群れを維持する行動が進化しました。1つ目の段階は、この序列をつくる社会性です。そして、他のメンバーよりも上位にいることに心地良さを感じるように進化しました。これが、優越感の起源です。

②仲間をつくる―社会脳
約700万年前に人類が誕生し、300~400万年前に、家族同士が血縁関係で助け合うことで村をつくりました。この時、周り人たちとうまくやっていこうとする心理が進化しました。2つ目の段階は、仲間をつくる社会脳です。そして、食糧などの限られた資源を平等に分け合うようになりました。これが、連帯感の起源です。一方で、周りと比べてその分け前(境遇)で損をしていると、不満を感じるように進化しました(相対的剥奪)。これは、妬みの起源です。逆に言えば、それが少しでも解消される時には快感が得られるわけです。これが、「相対的獲得感」の起源です。相対的剥奪と「相対的獲得感」は真逆の心理というわけです。

また、村の中で、協力しなかったり、協力していても、得た資源をその後に独り占めして出し抜く種(フリーライダー)が現れます。なぜなら進化の本来の姿は競争だからです。そうなると、残りの人たちは飢え死にしてしまいます。そうなった時、またはそうなりかけた時、フリーライダーに仕返しをする心理も進化しました。これは、恨みの起源です。

③秩序をつくる―概念化
約20万年前に現生人類(ホモ・サピエンス)が誕生し、喉(のど)の進化によって、複雑な発声ができるようになりました。言葉によって、自分の血縁集団以外の人たち同士が集まって物々交換をするようになりました。顔見知りではない相手に対しては、暴力、盗難、強盗などをするフリーライダーが現れるリスクが高まります。そうならないように、フリーライダーが目の前にいなくても、言葉によってその存在を意識できるようになりました。そして、フリーライダーからの被害をあらかじめ避けるために、その情報を欲するようになりました。これが、噂好きの起源です。また、直接自分に被害がなくても秩序を守ることは大事だと抽象的にものごとを考えるようになりました。3つ目の段階は、秩序をつくる概念化です。そして、秩序が保たれるように、フリーライダーを懲らしめる心理が進化しました。これが、正義感の起源です。

さらに、集団の秩序を守るために、集団の「治安隊」が獲物を仕留める飛び道具を人に向けることによって、威嚇するようになりました。武器による他人のコントロールです。これが、万能感の起源です。

なぜバッシングは増えているの?

これまで、なぜバッシングは「ある」のかという疑問にお答えしました。それにしても、なぜバッシングは増えているのでしょうか? それは、2000年代にSNSという新たな「武器」(装置)が発明されてしまったからです。ここから、その特徴を3つあげてみましょう。

①噂を無制限に知らせる
1つ目は、噂を無制限に知らせることです。それまで、知ることができる噂の絶対量は、直接、人から聞く他には、テレビ、新聞、雑誌などのメディアからの情報に限られていました。しかも、メディアは、裏取りをするため、基本的に不確かな情報は発信しません。ところが、SNSによって、個人が噂を発信するようになり、噂はいくらでも手に入れることができるようになりました。すると、たとえその噂が不確かであっても、それだけ世の中が乱れているという情報に曝されます。

こうして、バッシングする人は、ますます許せないという不安感が煽られていくわけです。

②気軽に発信できる
2つ目は、気軽に発信できることです。それまでは、個人が噂などの情報を伝える方法は、直接、人に話す他は、メディアに投書するだけに限られていました。しかも、必ずしも自分が選ばれるわけではありません。ところが、SNSによって、個人が情報をいくらでも公表できるようになりました。

こうして、バッシングする人は、ますます正義感を発揮するようになるわけです。

③責任がない
3つ目は、噂に責任がないことです。それまでは、噂を人に伝える時は、正体が明らかであるため、責任が伴います。不確かな噂をすれば、被害者からの仕返しのリスクがあります。ところが、SNSは匿名が可能で、正体が基本的にバレないです。発信者情報開示請求という法的手段はありますが、時間と労力がかかるため、実際には野放しになっています。

こうして、バッシングする人は、ますます言いたい放題になって快感を得ようとするわけです。

★グラフ1 バッシングの起源

後編に続く »