連載コラムシネマセラピー
私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション、メンタルヘルス、セクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。
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進学率の上昇、晩婚化、少子化という社会構造の変化によって、子どもへの溺愛を招いていることが分かりました。そして、その溺愛によって自立を阻み、さらに進学率の上昇、晩婚化、少子化を招いていることから、完全に悪循環に陥っていることも分かります。もうどうすればいいのでしょうか?
やはり根っこの問題は、家族関係です。そして、この家族関係に介入していくのが家族療法です。最後に、家族療法を通して、溺愛しないための解決策のポイントを2つご紹介しましょう。
①親子関係を線引きする―世代間の境界
STORYの読者アンケートでは、溺愛が自立を阻む合理的な問題や気持ち悪いという感情的な問題の自覚があまりありませんでした。今回の記事を読むことで、その問題点や進化心理学的な背景を理解することができます。そうすれば、必然的にどうすれば良いかが見えてきます。
1つ目は、親子関係の線引きです。これは、家族療法では世代間の境界と呼ばれています。親と子どもは世代としても別々であり、子どもの発達の段階によってその関係性を意識して変えていく必要があるということです。
例えば、幼児期は確かにお世話が必要です。しかし、身体的に自立する小学校以降になると、生活全般を基本的に本人に任せる必要があります。つまり、当たり前ですが、お風呂は一人です。朝起きるのもなるべく自分でできるように促します。そして、中学校以降(思春期)は、基本的に大人扱いして、本人に任せる必要があります。もちろん、困った時はすぐに助けますが、いつもは距離を置いて温かく見守ることです。
その具体策については、ペアレントトレーニングとして、以下の記事をご覧ください。
②夫婦関係をチームにする-夫婦間の同盟
STORYの読者アンケートへの解説ページにおいて、特に「母の息子愛」(2023年5月号)では、奇妙なくらい夫婦関係について触れられていませんでした。女性誌であることから、夫婦関係はアンタッチャブルであることがうかがい知れます。実は、子どもへの溺愛の原因は、親子関係にだけでなく、夫婦関係にもあります。夫婦関係が円満でなければ、それぞれが必然的に親子関係を強めようとします。これは、三角関係化と呼ばれています。つまり、溺愛は、実は親子の問題だけではなく夫婦の問題でもあるわけです。特に日本は、家族システムとして父系家族(封建社会)による親子文化が根強く、核家族(個人主義)による夫婦文化がなかなか根付いていないことからも、親子ではなく夫婦の関係に重きを置く介入が必要です。
2つ目は、夫婦関係をチームにすることです。これは、家族療法では夫婦間の同盟と呼ばれています。簡単に言うと、「親チーム」です。夫婦はパートナーでありチームメイトであり、子どもの発達段階によってもその関係性を大きく変えない必要があるということです。
例えば、子どもが思春期になっても、親はチームとして子どもの支援者であり続けることです。そして、子どもが巣立っても、チームメイトであり続けることです。その具体策については、カップルセラピーとして、以下の記事をご覧ください。
さらに、夫婦関係が深刻で、すでに倦怠期に陥っている場合の具体策については、以下の記事をご覧ください。
今回は、溺愛をテーマに女性誌「STORY」を取り上げました。家族療法の視点に立つと、子どもへの溺愛を自覚することは、親子関係だけでなく、夫婦関係も見直す良いチャンスであると言えます。その時、私たち自身が自分たち夫婦の「STORY」(物語)をつくっていくことができるのではないでしょうか?
*2 「進化と人間行動 第2版」P169-P171:長谷川寿一ほか、東京大学出版会、2022
*3 「進化と人間行動」P91:長谷川眞理子ほか、放送大学、2007
*4 「進化と人間行動」P97、P124、P127:長谷川寿一、東京大学出版会、2000
*5 「女たちの王国 結婚のない母系社会 中国秘境のモソ族と暮らす」P186:曹操恵虹、草思社、2017