連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【3ページ目】2024年6月号 女性誌「STORY」【その2】そもそもなんで溺愛は気持ち悪いの?どうすればいいの?-家族療法

それでもなんで溺愛しちゃうの?

溺愛(近親相姦)を回避するために発達した家族システムとして、母系家族、父系家族、核家族の3つを挙げました。現在の家族システムは主に核家族であり、本来は溺愛しないはずです。にもかかわらず、現在、特に日本では、なぜ溺愛してしまうのでしょうか?

その原因を、社会構造の変化として、主に3つ挙げてみましょう。

①子どもがすぐに就職しなくなった―進学率の上昇

戦前までは、中学校以上の進学率は低く、子どもは思春期(12歳くらい)になると、農家などで一家の働き手として大人扱いされていました。しかし、現代は、15歳まで義務教育が課され、児童労働は禁止されています。ほとんどが高校まで進学し、さらに半数以上が大学まで進学し、卒業するのは22歳です。つまり、独り立ちする時期が10年延びています。

1つ目は、子どもがすぐに就職しなくなったからです。これは、親に経済的にも心理的にも依存する時期が必然的に10年延びていることを意味します。親の側からして見れば、その分、心理的な距離が縮まり過保護になる、つまり溺愛してしまうというわけです。

なお、進学率の上昇は、学歴偏重の心理に置き換えることができます。その原因の詳細については、以下の記事をご覧ください。


>>【学歴偏重の原因】

②子どもがなかなか結婚しなくなった―晩婚化

戦前まで、子どもは成人すると、25歳前後で結婚していました。そして、伝統的には長男以外の子どもは家を出ました。しかし、現代は、平均初婚年齢は30歳前後まで延びて晩婚化しています。つまり、結婚する時期が5年延びています。ちなみに、未婚で実家暮らし(親との同居率)は70%台で、生涯未婚率(非婚)も増え続けています。

2つ目は、子どもがなかなか結婚しなくなったからです。これは、親と同居する時期が必然的に5年延びていることを意味します。親の側からして見れば、その分、物理的な距離が縮まり過干渉になる、つまり溺愛してしまうというわけです。

なお、晩婚化とつながる非婚の原因の詳細については、以下の記事をご覧ください。


>>【非婚の原因】

③子どもをあまり産まなくなった―少子化

戦後しばらくは、合計特殊出生率が4後半であり、家庭に子どもが4、5人いるのが当たり前でした。しかし、現代(2023年)は、1.26と過去最低を更新し続けており、家にいる子どもは1人か2人です。つまり、子育てへの労力が3分の1以下に減っています。また、さらにその子どもが産む孫の数も少なくなり、先ほど触れた孫育ての心理(祖母効果)を発揮する状況も減っています。

3つ目は、子どもをあまり産まなくなったからです。これは、逆算すれば1人の子どもに注ぐ子育てのエネルギー(コスト)を3倍まで増やせることを意味します。その分、経済的にも時間的にも心理的にも子どもを大事にしてしまう、つまり溺愛してしまうというわけです。

この点で、特に専業主婦(主夫)や休業中の人など仕事をしていない人は、さらに時間とエネルギーが有り余っているため、リスクが高まります。

なお、少子化の原因の詳細については、以下の記事をご覧ください。


>>【少子化の原因】