連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【2ページ目】2024年12月号 映画「ミスト」 ドラマ「ザ・ミスト」【後編・その3】こんなにユニークなのに・・・だから発症するのは昔から世界中で100人に1人の若者だったの!? ―統合失調症の疫学

なんで青年期に発症するの?

統合失調症は、男女を問わず、その多くが20歳代で発症し、結婚には当然不利になり、子孫(遺伝子)を残しにくいのにです。実際に、統合失調症の繁殖成功率は、男性20%、女性50%です(*3)。それにもかかわらず、遺伝素因は全人口の約30%と推定され(*5)、遺伝の影響度(遺伝率)が約80%と算定されており(*6)、遺伝子を残し続けていることになります。

2つ目の謎は、好発年齢です。この答えは、リーダーに適した年齢だからです。厳密には、発症平均年齢は、男性27歳、女性30歳です。ピーク年齢については、男性が20歳代であるのに対して、女性は二峰性であり、1つ目のピークは男性と同じく20歳代で比較的に大きく、2つ目のピークは30歳代後半で比較的に小さいです(*7)。

★グラフ1 統合失調症の発症年齢

女性のピークが二峰性である原因も、リーダーに適した状態かどうかで説明することができます。それは、妊娠出産のタイミングです。当然ながら、妊娠出産の一定期間は、リーダーシップを発揮することが難しいです。よって、本来、発症するはずの年齢で、先に妊娠してしまったら、いったん発症が抑制され待機状態になるメカニズムが進化した可能性が考えられます。

その根拠として、実際に、すでに発症した後に妊娠した場合、妊娠中の精神状態は比較的安定していることが多いからです。一方、出産後は、産褥期精神病(産後発症の統合失調症)という言葉があるように、発症リスクが上がるからです。また、2つ目の小さなピークである30歳代後半は、妊娠率が下がり始める時期に一致しているからです。

男性よりも女性の方が、発症平均年齢がやや高いことも、妊娠出産で発症が一時的に抑制されるメカニズムが働いていることから説明できます。これ以外で、納得できる説明は見当たりません。

逆に言えば、リーダーシップを発揮する年齢は、当時の平均寿命を考慮すれば、児童期以前(12歳以下)では早すぎて、中年期以降(40歳以上)では遅すぎることから、説明することができます。

なお、妊娠出産(妊娠率)と関係して発症する精神障害として、実は摂食障害が挙げられます。この詳細については、以下の記事をご覧ください。


>>【摂食障害の起源】