【2ページ目】2025年11月号 映画「エクソシスト」【その1】どうやって憑依するの?-脳科学から解き明かす憑依トランス症のメカニズム

どうやって憑依するの?-「ニューラルネットワーク分離説」の活性化モデル

憑依の特徴とは、自分をコントロールできない(トランス)、憑依されたものになりきる(憑依アイデンティティ)、宗教儀式に誘導される(暗示)であることが分かりました。このような憑依の状態は、精神医学では、憑依トランス症と診断され、解離症の1つと分類されています。それでは、どうやって憑依するのでしょうか?

脳科学の視点から、憑依のメカニズムは、同じく解離症に分類される記憶喪失や腰抜けのメカニズムを発展させて解き明かすことができます。そこで、まず記憶喪失と腰抜けのメカニズムを理解する必要があります。この詳細については、以下の記事をご覧ください。


>>★【記憶喪失と腰抜けのメカニズム】

記憶喪失と腰抜けのメカニズムは、ローカルスリープという概念を使って、「ニューラルネットワーク分離説」を提唱して、解き明かしました。ただし、この仮説は、意識から特定の精神機能または身体機能だけが分離して不活性化する病態のメカニズムを説明することができますが、意識から精神機能や身体機能が分離して逆に活性化する憑依のメカニズムを説明することはできません。それではさらに、このメカニズムをどう説明すればいいでしょうか?

①トランス

まず、トランスのメカニズムは、ローカルスリープとは真逆の病態を想定することで説明できます。実際に、その病態は、睡眠時驚愕症と睡眠時遊行症として臨床的に存在しています。これらは、睡眠サイクルを含め脳が未発達な子どもにおいて、ノンレム睡眠中に一部のニューラルネットワークだけが活性化します。これを、この記事では「ローカルアウェイクニング(局所覚醒)」と名付けます。ローカルスリープの逆バージョンのモデルです。

すると、トランスは、暗示による心理的ストレスの影響によって、特定の運動神経を司るニューラルネットワークが分離して活性化していると説明できます。つまり、運動神経のニューラルネットワークにおいて、解離性神経学的症状症が不活性化モデルであるのに対して、トランスは活性化モデルであると言える。

実際に、宗教儀式で夜通し同じ聖書の文言やお経(歌)を唱え続けたり、同じ仕草や振り付け(ダンス)を反復し、極度の疲労から意識水準が低下している極限状態や、催眠療法によって催眠状態にさせることは、意識狭窄を引き起こします。これは、特定のニューラルネットワークの「ローカルアウェイクニング」とそれ以外のローカルスリープを誘発していることになり、理に適っています。

ちなみに、特定の感覚神経を司るニューラルネットワークが活性化する病態は、身体苦痛症が当てはまります。また、主に自律神経を司るニューラルネットワークが活性化する病態は、自律神経機能不全(身体苦痛症)とパニック発作(パニック症)が当てはまります。さらに、てんかん発作による自動症なども、同じように特定のニューラルネットワークが結果的に活性化していると説明できます。なお、これらの病態は、解離症には分類されていません。