連載コラムシネマセラピー
私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション、メンタルヘルス、セクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。
私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション、メンタルヘルス、セクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。
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・マインドコントロール
・心的外傷体験
・被暗示性
・カリスマ性
・ダブルバインド
・スケープゴート
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皆さんは、テレビで紹介される「今日の運勢」が気になったりしませんか? 科学的な根拠はないのに、結果によって気分が一喜一憂してしまいませんか? また、職場などで「何でそこまで言い切れるの?」と思いつつ、「そうかなあ」とついその人に引き込まれそうになったことはありませんか? この心理は何なんでしょうか?
それは、私たちには、進化の過程で手に入れた本能の1つとして、信じ込む心理があるからです。それでは、なぜ信じ込む心が沸き起こるのでしょうか?
前回は、2007年の映画「ミスト」を通して、宗教の起源の心理を交えながら、信じ込む心理の魅力やメリットを考えてきました。それは、社会(集団)の安定であり、個人の安らぎでした。今回も引き続き「ミスト」を取り上げ、信じ込む心理の危うさやデメリットを考えます。テーマは、マインドコントロールです。信じ込む心理は、裏を返せば、囚われる心理でもあります。私たちはこの心理とどううまく付き合っていけば良いのかをいっしょに探っていきましょう。
あるのどかな田舎町に突然、立ち込めた濃い霧(ミスト)が、町全体を覆い尽くします。主人公デヴィッドと幼い息子は、たまたま買い物をしていたスーパーマーケットで、その他の大勢の買い物客と共に閉じ込められてしまいます。ガラス越しの外の一寸先は、濃い真っ白な霧の世界です。一歩踏み出すと、得体の知れない何かが彼らを襲ってきます。
その時、スーパーマーケットの中で存在感を発揮し始めるのが、町の信心深い信者であり変わり者でもあるカーモディさんです。彼女は、自らの説く教えによって、人々を次々と信者へと変えていきます。そして、教祖のようになったカーモディさんは、生け贄を捧げようと言い出し、その言葉に人々は熱狂し、従うようになります。一体、何が起こっているのでしょうか?
その答えが、マインドコントロールです。マインドコントロールとは、人の心(マインド)を思い通り(コントロール)にすることです。私たちは、そう簡単に自分の心は他人の思い通りにならないと思うでしょう。しかし、実は、ある状況や原因が重なると、誰にでも起こりうる危うさが潜んでいます。
これから、このマインドコントロールのメカニズムについて、マインドコントロールされる側とする側の両方の視点で見通します。そして、マインドコントロールにかかる心理と、マインドコントロールをかける心理(テクニック)を解き明かしていきたいと思います。
まずは、マインドコントロールにかかる心理の危険因子を、環境因子と個体因子に分けて順番に考えてみましょう。