連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【4ページ目】2021年12月号 映画「そして父になる」【続編・その3】どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?【育てるスキル】

素行の悪さと嗜好品へのハマりやすさをどう抑える?-悪い「能力」を抑える取り組み

2つ目の家庭環境の機能とは、素行の悪さ(反社会的行動)と嗜好品へのハマりやすさ(物質依存)を抑えることでした。その2では、この機能を、現代社会に望ましくないながらも癖になりやすい(嗜癖性が強い)「能力」を抑制する文化的な「アンタゴニスト」(遮断薬)であるとご説明しました。それでは、この悪い「能力」をどう抑えましょうか? ここから、大きく3つの取り組みをあげてみましょう。

①ルール作り

良多は、琉晴が野々宮家で暮らし始める初日に、流晴に野々宮家のルールのリストを紙にして渡します。そして、琉晴に「ストローは噛まない。英語の練習を毎日する。トイレは座ってする。お風呂は一人で静かに入る。テレビゲームは1日30分。パパとママと呼ぶこと」と読ませるのです。

1つ目の取り組みは、ルール作りです(オペラント条件づけ)。これは、家庭内での決まりごとをはっきりさせて、やって良いことと悪いことを意識させる親の取り組みです。ここで大事なのはルールのペナルティです。ペナルティが厳しすぎると、厳格な家庭環境になります。逆に、ルールもペナルティもはっきりしていなくて、斉木家のゆかりのようにそのつど気分に任せて怒鳴ったり叩いてしまったら、放任的な家庭環境になります。そうではなくて、適度に(ほどほどに)ペナルティを設けるのです。

例えば、素行についてです。叩く、押す・蹴る・物を投げるなどの危険行為や、大声を上げる・地団太を踏むなどの迷惑行為が見られたときは、どうしましょうか? ここで注意点は、体罰はどんな状況でも不適切です。そのわけは、いくら子どもが悪いからと言って、親が体罰をしてしまったら、相手が悪い時は暴力(体罰)をして良いという悪いお手本を子どもが模倣学習してしまうからです。だからこそ、体罰禁止法ができたのです。しかし、親も人間です。つい叱った勢いで手が出てしまったら、後で謝れば良いのです。これが、良いお手本になります。

素行の悪さに対して効果的なのは、まずタイムアウト(行動制限)です。自宅にいる時は、自分の部屋など決まった場所に入ることです。時間は5分程度、または落ち着いたら出てきて良いとすることです。程度が重くない場合は、イエローカード(2回目の警告でタイムアウト)、スリーノックアウト(3回目の警告でタイムアウト)の方式を取り入れ、警告することで落ち着くことを促すこともできるでしょう。

なお、外にいる時は、タイムアウトが使えません。代わりに、3つの対処法があります。1つ目は、なるべく周りに人が少ない場所に移動して、いっしょに遠くを見ることです。2つ目は、ゆっくりいっしょに10まで数えます。3つ目は、飲み物を一杯ゆっくり飲ませることです。これは、アンガーマネジメントの取り組みです。

「人育て」(人材育成)においても、全く同じことが言えます。職場のストレスの多くは、上司のパワ-ハラスメント、部下の怠慢、同僚のいじめなどの人間関係です。これらの問題点を具体的に示し、そのペナルティを設けることが効果的でしょう。