連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【5ページ目】2021年12月号 映画「そして父になる」【続編・その3】どうほどほどに子育てをすればいいの? そして「人育て」とは?【育てるスキル】

②理由づけ

野々宮家のルールのリストを一方的に読まされた琉晴は、納得が行きません。良多から「なんででも」「そのうち分かるようになる」といくら言われても、「なんで?」と良多に繰り返し聞き続けます。

2つ目の取り組みは、理由づけです(合理性)。これは、ルールとそのペナルティがなぜ必要かを子どもにある程度納得させる親の取り組みです。ここで、野々宮家のようにこのルールが一方的すぎると、厳格な家庭環境になります。逆に、ルールもペナルティもなく、斉木家のようにやってはいけないことを黙認していると、放任的な家庭環境になります。そうではなくて、ある程度(ほどほどに)ルールの理由を納得させるのです。

例えば、先ほどの危険についてです。そうすると相手はどんな気持ちになるかを考えてもらうために、逆にそうされると自分はどういう気持ちになるか考えるよう促すことです。また、迷惑行為について、幼児がよく理解できない場合は、「みんなが守っているルールだから」と伝えることができます。

嗜好品テレビゲームについてはどうでしょうか? これらに対して効果的なのは、理由づけをして制限することです。例えば、嗜好品の栄養バランスの問題、テレビゲームによる悪影響です。そのため、親もある程度勉強してその有害性を具体的な根拠として調べておく必要があります。さらに、制限する時に、代わりのものを用意することが効果的です。そうすることで、子どもの不満を減らすことができます。例えば、嗜好品の代わりに、果物です。テレビゲームの代わりに、親子でトランプ・将棋などの卓上ゲームやスポーツをすることです。つまり、親も制限に対して、ある程度コミットする必要があるということです。

お店で「欲しい欲しい」「買って買って」と急におねだりされた時はどうでしょうか? ただ一方的に駄目と言うのではなく、「今日はこのお菓子(またはおもちゃ)を買いに来たわけではないから」「そのお金はないから」と理由を伝え、その必要性や予算を考えさせることです。親がその時の気分で買ってあげたり買わなかったりするのでなく、「もともと決めていないものは買わない」という家族のルールを親も子どもも守る必要があることを伝えることです。

それでも、子どもが駄々をこねるのであれば、先ほどのアンガーマネジメントの取り組みを行います。一方で、親が買っても良いと判断したとしても、すぐにそのまま買い与えないことです。「そこまで言うなら、じゃあ来週に来た時に買おう」と約束するのです。これを繰り返せば、子どもは駄々をこねてもすぐに買ってもらえないことを学習し、駄々をこねなくなります。これは、セルフコントロールを高め、衝動買いの癖を減らすでしょう。

また、ルールが守れていたら、毎日カレンダーにいっしょにシールを貼り、シールが〇個たまったら、ご褒美をあげるのも効果的です(トークンエコノミー)。そのご褒美は、親が選んだプレゼントでも良いですし、家族で外食をすることでも良いでしょう。さらに、これを発展させた、お小遣いルールも、文字と数字を理解するようになる5歳から効果的です。

★図1 お小遣いルールの例(5歳用)

図1は、完全にルールが守れると、1日15円(月450円になります。もちろん、それぞれの項目やその金額を変更したり、トークン方式(換金方式)から現金方式に変更したり、お小遣いからルールのペナルティとして差し引く罰金制にするなど、年齢やその子の性格に合わせたオリジナルのお小遣いルールをつくることができます。

なお、この注意点は、その項目を、習いごとや勉強などの良い能力を促すことにはあまりしないことです。そのわけは、そうしてしまうと、先ほどご説明したように、やりたい気持ちが削がれる心理(アンダーマイニング現象)が出てくる可能性があるからです。するとしても、挨拶のし忘れや宿題のやり残しなど習慣化できていないものに限定して、やはり内容はなるべく悪い「能力」を抑えることに特化することです。

また、年齢が低い場合、その項目数は2、3つに限定することです。そのわけは、項目が多すぎると、1つ1つの項目への意識が薄まるからです。まずは、その時の最優先の問題を項目とすることです。そして、そのルールが習慣化したら、いったんそれを項目から外して、次の問題を新たに項目に入れれば良いです。

さらに、ルールが自発的に守れているなら、ルール化しないことです。そのわけは、その1でもご説明しましたが、親が子どもの行動をコントロールしすぎると、逆に子どもは自分で自分の行動をコントロールしなくなることが実際の研究で分かっているからです。よって、年齢が上がっていけば、項目を、禁止行為から家の仕事(お手伝い給料制)にシフトしていくことができるでしょう。

「人育て」(人材育成)においても、全く同じことが言えます。先ほどの人間関係の問題の実際のケースを紹介して、そのルールを課す根拠をはっきりさせることが効果的です。そして、問題が起きないのが当たり前とせず、問題が起きなかったことをあえて全員に毎回、見える形にして知らせることです。これは、その後に問題が起きることを事前に抑止する効果があるでしょう。