連載コラムシネマセラピー
私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション、メンタルヘルス、セクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。
私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション、メンタルヘルス、セクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。
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・求愛
・癒し
・同調
・ハンディキャップの原理
・サイン言語(非言語的コミュニケーション)
・ミラーリング
・音楽療法
・ダンスセラピー
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みなさんは、歌やダンスが好きですか? あるメロディが耳にこびりついて何度も頭の中を流れていたり、そのリズムが体にしみついて勝手に体が揺れていることはありませんか? なぜ私たちは歌って踊りたくなるのでしょうか? そもそも歌やダンスはいつ生まれたのでしょうか? そして、歌やダンスをもっと世の中に生かせないでしょうか?
今回は、インド映画「RRR」を通して、歌とダンスの機能、起源、そして医学的な効果を考えます。さらに、この記事では「ラブソング・ラブダンス仮説」と称して、歌やダンスが人類の心の進化に大きな役割を担った納得のわけをご説明しましょう。
舞台はイギリス植民地時代のインド。主人公であるビームとラーマは、ひょんなことから出会い、深い友情を育みます。しかし、彼らにはそれぞれ使命があり、やがて対立しなければならなくなります。それでは、まず3つのシーンを通して、歌とダンスの機能を3つあげてみましょう。
①求愛
2人は、イギリス人女性のジェニーと仲良くなり、イギリス公邸に招かれます。そこで、他のイギリス人男性から「ワルツ、サルサ、フラメンコ、どのダンスも知らないの?」と馬鹿にされたことで、ラーマは「ナートゥをご存じか?」と言い出し、ラーマとビームはいきなり歌って踊り始めるのです。その歌とダンスは、イギリス人女性たちを惹きつけ、さらにイギリス人男性たちも焚きつけます。そして、彼らが全員加わった耐久ダンスバトルに発展するのです。最後は、ビームが勝ち残り、彼はジェニーに気に入られます。
1つ目の機能は、求愛(wooing)です。実際に、ミュージシャンやダンサーはモテます。歌やダンスには、性的な魅力を伝える要素があるわけです。
②癒し
ビームがジェニーに近づいたのは、実はイギリス公邸に閉じ込められている幼い村娘のマッリを奪い返すためでした。彼はこっそり彼女を見つけ出しますが、オリがあるため連れ出せません。見張りが迫ってくるなか、彼はまた必ず戻ってくると彼女を説得しますが、必死にしがみつかれてしまいます。そこで、彼は子守唄を歌うのです。すると、彼女は落ち着き、自分から手を離したのでした。
2つ目の機能は、癒やし(healing)です。例えば、子守唄を歌いながら優しいリズムをとって揺することで、赤ちゃんを寝かしつけすることができます。ヒーリングミュージックやヒーリングダンスというジャンルもあります。実際の研究では、歌やダンスによって、ストレスホルモン(コルチゾール)が減少することが分かっています。
つまり、歌やダンスには、リラックスをもたらす効果もあるわけです。
③同調
ビームは最終的にとらえられ、民衆の前で、ラーマによってむち打ちの刑に処せられます。しかし、彼はひざまずくことを拒み、瀕死の状態のなか、部族の歌を歌い続けます。すると、それに心を動かされた民衆たちが処刑場になだれ込み、刑は中断されてしまうのです。そして、実はインドの独立の夢を秘めていたラーマは、独立を促すのは、武器ではなくて民衆の一体感であることに気づくのです。
3つ目の機能は、同調(tuning)です。これは、もともとオーケストラが演奏前にする音合わせという意味です。例えば、私たちは調子を合わせていっしょに歌って踊ると心地良くなります。また、軍隊の行進や決まったかけ声で士気を高めることができます。実際の研究では、歌やダンスによって、快感ホルモン(ドパミン)や「脳内麻薬」(エンドルフィン)が分泌されることが分かっています。
つまり、歌やダンスには、高揚をもたらす効果もあるわけです。