連載コラムシネマセラピー

私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーションメンタルヘルスセクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。

【4ページ目】2023年3月号 映画「RRR」なんで歌やダンスがうまいとモテるの?【ラブソング・ラブダンス仮説】

歌とダンスの医学的な効果とは?

歌とダンスが人類の進化に大きな役割を担っていることを踏まえて、その医学的な効果は何でしょうか? ここから、音楽療法(*5)(*6)とダンスセラピー(*7)として、以下の表1にまとめてみましょう。

★表1 医学的な効果

音楽療法やダンスセラピーは、実際にやるのではなく、見たり聞いたりするだけでも、「ものまね神経」(ミラーニューロン)によって効果が期待できるでしょう。また、音楽療法やダンスセラピーに集団療法を組み合わせれば、その同調効果から、自閉スペクトラム症の共感性の改善や不登校の予防も期待できるでしょう。

タイトル「RRR」とは?

この映画のタイトル「RRR」には、当時のインドの独立運動にまつわるRise(蜂起)、Roar(咆哮)、Revolt(反乱)が表示されていました。ただ実は、単に主演2人と監督の名前がみんなRから始まるからという軽いノリで最初に名付けられていただけとのことです。劇中でも、「fiRe」(ラームの象徴である火)、「wateR」(ビームの象徴である水)、「stoRRRy」(彼らの物語)などとRを絡めた遊び心が満載でした。

これに便乗すれば、この記事で名付けた「ラブソング・ラブダンス仮説」の3つのポイントに絡めて、「attRacting」(注意を引く)、「miRRoRing」(まねをし合う)、「Rhythm」(リズムを取る)と当てはめることもできます。

それにしても、あのイギリス公邸の庭での彼らの歌とダンスのワンシーンが頭の中を繰り返し流れ続け、忘れられません。このことからも、この映画を見た方ならきっと「ラブソング・ラブダンス仮説」を提唱したくなる気持ちをお分かりいただけるのではないでしょうか?

♪ナ~トゥ,ナトゥ,ナトゥ,ナトゥ,ナトゥ,ナトゥ、ナトゥ、ナ~トゥ♪・・・

参考文献

*1「特集 鳴く動物 話すヒト」P40:日経サイエンス2023年1月号、日経サイエンス社
*2「進化と人間行動」P234、P123:長谷川寿一ほか、東京大学出版会、2022
*3「アナザー人類興亡史」P136:金子隆一、技術評論社、2011
*4「つながりの進化生物学」P111、P245:岡ノ谷一夫、朝日出版社、2013
*5「音楽療法 効果・やり方・エビデンスを知る」P22、P72、P73:高橋多喜子、金芳堂、2021
*6「歌うことは脳卒中後の失語症からの回復に役立つ可能性」:ケアネットHealthDay news、2023
*7「ダンスセラピー」P70、P137、P206:平井タカネ(監)、ジアース教育新社、2012