連載コラムシネマセラピー
私たちの身近にある映画、ドラマ、CMなどの映像作品(シネマ)のご紹介を通して、コミュニケーション、メンタルヘルス、セクシャリティを見つめ直し、心の癒し(セラピー)をご提供します。
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倦怠期への対策として、アサーション、夫婦間のSST、共働きと共子育ての3つの対策をそれぞれご提案しました。最後に、夫婦関係を「屋上のある2階建ての家」になぞらえて考えてみましょう。なお、この家の1階、2階、屋上の3段階は、マズローの欲求5段階説をもとにしています。
①1階-「経済共同体」-共同経営者
土台となる1階は、「経済共同体」であることです。夫婦は、「一心同体」「運命共同体」であるという幻想を抱く前に、現実的にも法律的にも経済を共有する関係であることです。言い換えれば、夫婦関係で一番大事なことは、生活が安定していることです。それは、お金、時間、労力において余裕があることです。
また、夫婦関係は、例えるなら共同経営者であることです。上司と部下ではないです。逆に言えば、不公平になっていたり決定権が偏っている場合、そして先ほどご紹介したアサーションや夫婦間のSSTでも一方が改善するつもりがない場合、先ほどの限界設定が必要になります。
なお、この1階は、マズローの1段目の「生理的欲求」と2段目の「安全欲求」に重なります。
②2階-「苦楽共同体」-親友
1階の土台をもとに発展していく2階は、「苦楽共同体」です。夫婦は、助け合い、励まし合い、慰め合って、苦楽を共にして乗り越えていく関係であることです。言い換えれば、夫婦関係で次に大事なことは、信頼関係を築いていることです。それは、夫婦がお互いのことを最優先に考えることです。つまり、仕事、子ども、自分の親などは二の次になるということです。
この点で、夫婦関係は、親友であることでもあります。逆に言えば、一方が不倫をしている場合、もはや親友ではなく、先ほどの限界設定が必要になります。
なお、この2階は、マズローの3段目の「愛情欲求」と4段目の「承認欲求」に重なります。
③屋上-「価値共同体」-パートナー
最後は、3階ではなく屋上としたのは、多くの夫婦が1階と2階でうまく行いっているからです。つまり、屋上は、必ずしも必要なものではなく、あれば理想といえる位置づけです。それは、「価値共同体」です。夫婦は、いっしょに叶えたいことに向かって突き進んでいく関係であることです。言い換えれば、夫婦関係の究極は、夫婦でいることの社会的な価値を見いだすことです。例えば、旅行、スポーツ、アート、楽器演奏、学問追求などを通して、いっしょに何かを実現していくことです。そして、周り(社会)に貢献していくことです。ただし、ここで注意すべきことは、子育てのみを夫婦の価値にしないことです。なぜなら、子育てには終わりがあるからです。
この境地で、夫婦関係は、唯一無二のパートナーであると言えるでしょう。「私たちはこういう夫婦です」「こんなことしてきました」「これからこんなことしていきます」という夫婦のアイデンティティです。このスキルの詳細については、関連記事10をご参照ください。
なお、この屋上は、マズローの5段目の「自己実現欲求」に重なります。
自分の親といっしょにいるのが平均20年、自分の子どもといっしょにいるのが平均20年です。それに対して、夫婦でいっしょにいるのは平均50年です。実は、夫婦は、人生の中で最もいっしょにいる時間が長い人であることが分かります。
そんな長い期間、「経済共同体」「苦楽共同体」「価値共同体」であり続けることによってはじめて、夫婦は運命共同体になると思えるのではないでしょうか?
3)夫のトリセツ:黒川伊保子、講談社+α新書、2019
4)妻のトリセツ:黒川伊保子、講談社+α新書、2018
5)専業主婦になりたい女たち:白河桃子、ポプラ新書、2014