【1ページ目】2025年4月号 海外番組「セサミストリート」【続編・その3】だから男性はこだわり女性は共感するんだ!だから人差し指の長さが違うんだ!―自閉症と情緒不安定性パーソナリティ障害の起源
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・プレゼント仮説
・性選択(性淘汰)
・象徴機能
・指比
・「良い子」(過剰適応)
・マルトリートメント(不適切なかかわり)
・空虚感
・かんしゃく
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前回(その2)、共感性とシステム化のゼロサム説という仮説によって、以下の3つの謎を解き明かしました。
・自閉症のコミュニケーションの障害とこだわりがセットで出てくる現象
・定型発達の男の子よりも女の子の方が言語や心の理論の発達が早い現象
・自閉症でいったん話していた言葉を途中から話さなくなる現象(折れ線型)
また、超男性脳の病態が自閉症であるのとは対照的に、超女性脳の病態は情緒不安定性パーソナリティ障害であることを突き止めました。
それでは、そもそもなぜ男性はシステム化が高く、女性は共感性が高いのでしょうか? そもそもなぜ共感性とシステム化はトレードオフの関係にあるのでしょうか? また、その1でも触れましたが、なぜ男性ホルモンが多いと人差し指が短くなるのでしょうか? さらに、自閉症は幼児期に発症するのに、なぜ情緒不安定性パーソナリティ障害は同じように幼児期に発症せずに思春期になってようやく発症するというタイムラグがあるのでしょうか?
これらの答えを探るため、今回(その3)は、進化精神医学の視点から、自閉症と情緒不安定性パーソナリティ障害の起源を掘り下げます。そして、なんとこの2つの病態は人類進化の必然の産物であったわけをご説明しましょう。
そもそもなんで男性はシステム化が高く女性は共感性が高いの?
人類は、約700万年前に誕生してから、二足歩行をすることで手が自由になり、手に入れた食料を余分に持ち歩けるようになりました。その余分な食料を男性が女性にプレゼントすることで、女性はそのお礼にセックスをして、その男性との間にできた子どもを育てるようになりました。これは、プレゼント仮説と呼ばれています(*1)。そして、これは人類最初の協力行動です。
それでは、この時、どんな心理が進化するでしょうか? 男性と女性に分けて、それぞれ考えてみましょう。
①男性に進化する心理―システム化
まず、女性に選ばれるのは、プレゼントを毎回確実にくれる男性でしょう。それでは、プレゼント用を含めた食料をより多くより確実に得るために必要な男性の心理とは、どんなものでしょうか?
例えば、以下です。
・この足跡をたどれば獲物がいる(パターン認識)。
・この獲物の糞はかすかに温かいので(触覚過敏)、まだ近くにいる(パターン認識)。
・湿気を感じるので(触覚過敏)、このあとに雨が降るだろう(パターン認識)。
・あの獲物は夕方この辺りによく来るから、夕方はいつもここで待ち伏せしよう(パターン行動)。
・獲物や天敵の鳴き声・足音にすぐに気づける(聴覚過敏)。
これらは、動物の習性や自然の変化へのパターン認識、食料をより確実に取るためのパターン行動です。そして、そのための感覚過敏です。ちなみに、動物の鳴き声や足音への敏感さは、現代では、車のエンジン音や電車の走行音を区別する興味に置き換わっています。ジュリアがパニックになった消防車の警笛音もその1つです。つまり、男性に進化した心理とは、システム化であることが分かります。
逆に言えば、システム化が高くない男性は、プレゼントを用意できないため女性から選ばれることはなく、性淘汰されます。プレゼントを用意できた原始の時代の男性たちの子孫である現代の男性たちは、当然ながら無意識にも女性にプレゼントをあげたがります。逆に、女性は男性ほど異性にプレゼントをあげたがりません。
だからこそ、システム化はもともと男性に備わっている心理であり能力なのです。そして、男性ホルモンが高いと、システム化が高くなるのです。逆に言えば、男性はプレゼントをあげる側なので、女性ほど共感性を高くする必要はなかったのです。